ホワイトボックスパソコン
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ホワイトボックス(英語:White Box)とは、特定のブランドを持たないノーブランドパソコンや、卸売業者や販売店、ソリューションプロバイダーなどが自社のブランドをつけて販売するプライベートブランドパソコンやショップブランドパソコンのことである。広義にはナショナルブランド以外の中小零細企業が組立・販売しているパソコンの総称であり、狭義にはデスクトップパソコン型のホワイトボックスを指す。

なおノートパソコンをホワイトブック[1][2]タブレット型パソコンをホワイトボックスタブレットと呼ぶこともある[3]。またホワイトボックスを組み立てるメーカーのことをホワイトボックスビルダー[4] やシステムビルダー[5] と呼ぶこともある。
概要ATXミドルタワー型ケースを採用した、典型的なホワイトボックスパソコンの例。

「ホワイトボックス」の本来の意味は、仕様が公開されている事である[6]1980年代に発表されたPC/AT互換機は部品の仕様が公開されており、その仕様に従って作られた部品を世界中から安価に調達してパソコンを組み上げることが出来た。ホワイトボックスはこの仕組みを最大限に活用して、問屋などの流通経路(販売チャネル)から汎用部品を調達し[7]、受注生産で組み立てたパソコンである。一方、大手家電メーカーなどのナショナルブランドは部品メーカーと直接交渉(ダイレクトOEM)して専用部品や汎用部品を調達し、見込み生産で組み立てたパソコンである。ホワイトボックスの方が製造のリードタイムや納期、部品調達の柔軟性[8] に優れており、在庫が発生しない。また、ホワイトボックスはパーツ単位まで分解して切り分けるとほぼ全てが汎用部品やベアボーンなどの既製品やパーツメーカーが業務用向けモデルとして設計・製造した汎用パーツで、これをベースとして組み立てられていることも特徴で、大半の製品の構造は同様に汎用部品を使用して組み立てる自作パソコンに似通っている。製品の企画・開発の部門もいわばパソコン組立業のそれに特化したものになっているため、設計や検証などの部門は省略ないし大幅に簡略化しており、専門知識や技術を持つ高度な専門職の雇用も最小限度で済ませ、ナショナルブランドと比べれば人件費やトータルコストを大幅に圧縮している。これがホワイトボックス・メーカーの価格競争力の根源である。

2000年代以降、日本のホワイトボックス・メーカーのトップ企業の生産規模は拡大し、一社で数十万台/年に及ぶものも現れた。これはナショナルブランドの下位グループに続くスケールであり、マイクロソフトや大手パーツメーカーが特定の大口取引者として何らかのプレミアを付与しているメーカーも日本国内に複数存在する[9]。売上高は数百億円規模で上場して資金調達をしたり、企業グループを形成してサプライチェーン・マネジメントで経費を削減しており、かつての牧歌的な家内工業の時代とは別次元の競争になっているが、その反面でパソコン自体の生活家電化が並行して進み、また海外のパーツメーカーのホワイトボックスの日本市場への参入も相次ぎ、国内の既存各社はいずれも販売数量や利益率の向上などに頭を悩ませている一面がある。
生産体制

ホワイトボックスはパソコン専門店が店頭で部品を一から組み上げて自作し、ショップブランドとして販売するイメージがある。確かに1990年代前半・中盤の「DOS/Vショップ」では、そのような形態だったようである。しかし1990年代後半から徐々に産業化が進んだ。例えばマウスコンピューターは1993年に春日部市の自宅店舗「高島屋衣類店」の一角で営業を始めたが[10]、1998年には株式会社化した[11]。製造は工場で行われるようになり、日立製作所豊川工場(愛知県豊川市)[10] などに生産を委託し、ファブレス企業化した。その後は一転してiiyamaを買収し自社工場(長野県飯山市)として整備している[12]。ホワイトボックス各社は自社工場を所有しており、例えばKOUZIROは山口県山口市[13]、パソコン工房(ユニットコム)はICMカスタマーサービスの工場(島根県出雲市)[14] で大量生産している。受注方式にはBTO(受注生産)やCTO(受注仕様生産)などがあり、CTOの方がカスタマイズの範囲が広いようである[15]。工場ではセル生産方式ライン生産方式で生産し[13]、法人向けに大量のカスタマイズの手間を省くコンフィグレーションサービスを提供している会社もある[16]

一般にホワイトボックスでは大手電機メーカーのナショナルブランドが付けられた製品よりも低価格に設定されており、また低価格による競争力を確保しなければ立ち行かない。そのため、製造・物流やこれにまつわる各種人件費などのコストの削減はメーカーにとって重要な要素であり徹底される。メーカー各社は部品の共同購買の仕組みを作ったり[17]、メーカー同士で合併したりしている。2007年にはMCJ(マウスコンピューター)の傘下にユニットコムが入り、両社で日本のホワイトボックス市場のシェアの半数を超えた(自称)[18]。またパソコンの部品は陳腐化が激しく月に平均6%?10%、最悪で30%も価格が下がり損が出るので[19]、受注情報を10分単位で部品商社と共有するITシステムを構築する企業もある[20]

以上のようにして作られたホワイトボックスはメーカー自身による通信販売がなされている他、家電量販店やパソコン専門店に供給されており、店頭で販売されるものの多くは店頭では各社の「ショップブランドパソコン」として販売されている。例えばマウスコンピューターは2003年度に約10社に対して約12万台を納品し約180店舗で販売した[21][22]
歴史
1990年代後半

1997年、アメリカに格安パソコンブームが訪れた。「サブ1000ドルPC」と呼ばれる1000ドル以下のパソコンが、それまでパソコンを使っていなかった低所得者層や企業にヒットしたのである。このパソコンは当時最新のMMX Pentiumではなく、旧世代のPentiumやAMDサイリックスのような互換CPUを使うことでコストを下げていた[23][24]。1997年以前は1500ドル以上が普通だったパソコンはコモディティ化し、「サブ800ドルPC」や「サブ500ドルPC」までもが登場した[25]

低価格化を推し進めたのは、小売業者である。例えばマイクロセンターは「サブ500ドルPC」で名を馳せた。このPCは台湾メーカーに格安のマザーボードを作らせ、国内業者に組み立てさせたホワイトボックスであり、自社ブランドをつけて販売した[26]。小売業者にとって格安パソコンは薄利多売だが、ユーザー層が広がったことで売り方次第では売り上げを伸ばすことが出来る商材になった[25]。ホワイトボックスは米国内で640万ユニットが販売され、最大手のコンパックよりも多く売れた[27]

この状況は従来の見込み生産のビジネスモデルでは想定外であり、周期的に陳腐化する在庫の損失を補填できなくなった[28]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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