ホヤ
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この項目では、海産動物について説明しています。その他の用法については「ホヤ (曖昧さ回避)」をご覧ください。

ホヤ綱
ホヤの一種のマボヤ Halocynthia roretzi
分類

:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:尾索動物亜門 Urochordata
:ホヤ綱 Ascidiacea

学名
Ascidiacea Nielsen, 1995
英名
ascidian,Sea Pineapple,sea squirt



マメボヤ目 Enterogona

マボヤ目 Pleurogona

オタマジャクシ(上)とホヤの幼生(下)の比較

ホヤ(海鞘、老海鼠、保夜)は、尾索動物亜門ホヤ綱に属する海産動物の総称。2000種以上が知られる。「海のパイナップル」とも呼ばれている。
概要

成長過程で変態する動物として知られ、幼生はオタマジャクシ様の形態を示し遊泳する。幼生は眼点平衡器、背側神経筋肉脊索などの組織をもつ。

成体は海底の岩などに固着し、植物の一種とさえ誤認されるような外観を持つ。成体は、脊索動物の特徴である内柱や鰓裂をはじめ、心臓、生殖器官、神経節、消化器官などをもつ。脊椎動物に近縁であり、生物学の研究材料として有用。血液(血球中)にバナジウムを高濃度に含む種類がある(Michibata et. al., 1991など)。現在確認されている中では、体内でセルロースを生成することのできる唯一の動物であり、これは遺伝子の水平伝播を示唆していると考えられている。

生活様式は、群体で生活するものと単体で生活するものがある。単体ホヤは有性生殖を行い、群体ホヤは有性生殖無性生殖の両方を行う。世界中の海に生息し、生息域は潮下帯から深海まで様々。多くのホヤは植物プランクトンデトリタスを餌としている。

漢字による表記では、古くには「老海鼠」、「富也」、「保夜」などの表記も見られる。ホヤの名は、「ランプシェードに当たる火屋(ほや)にかたちが似ている」から、または「ヤドリギ(ほや)にそのかたちが似ている」から。またマボヤはその形状から「海のパイナップル」と呼ばれることもある[1]

なお、俗称でホヤガイ(海鞘貝、ホヤ貝)と呼ばれることがあるが、軟体動物の一群に別けられる類とは全く分類が異なっている[2]
生物的特性
初期発生

ホヤの卵は「モザイク卵」として知られている。つまり、初期発生中の割球を解離したり破壊すると、決まった運命の組織にしか分化しない(Conklin;1905など)。加えて受精後すぐの卵に明確な境界がみられ、それぞれの領域が将来の各組織に受け継がれることから、母性細胞分化決定因子の存在が示唆されてきた。筋肉細胞分化決定因子について、細胞質移植実験などにより、特にその存在が研究され(Deno and Satoh; 1984, Marikawa et. al., 1995)、2001年にNishida and Sawadaによりマボヤからmacho-1が同定された。ただし、筋肉や表皮などは、自立分化能を持つが、脊索は誘導を必要とすることが示されている(Nishida;2005など)。発生中の各割球が将来どの組織に分化するかを示した「細胞系譜」は、マボヤではNishidaらによって詳細に示されている(Nishida;1987など)。
モデル生物として

ホヤの属する脊索動物門には、ヒトを含む脊椎動物亜門が含まれており、遺伝子を操作したホヤを使えば、脊椎動物が進化する過程の再現実験にも利用できる[3]

カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)は組織の構造が単純で成長が早く[3]、養殖が可能で安価に入手できるなど実験動物としての利点が多数あるため、生物学において発生学の発生のモデル生物として用いられる。東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所ではナショナルバイオリソースプロジェクト事業に基づいてカタユウレイボヤの野生型個体を供給している[4]

2002年にはドラフトゲノム配列が決定された(Dehal et. al.,)。動物としては7番目となる。さらに近縁種のユウレイボヤ(C. savignyi)でもゲノムプロジェクトが行われている。
その他の研究

ホヤの幼生には臭いを感知する胚組織が存在し、生殖に関わるホルモンを分泌する細胞との関わりから生殖や嗅覚の遺伝病の治療に関する研究への寄与が指摘されている[3]

上記以外にも、様々な分野においてホヤを用いた研究は世界中で盛んに行われている。

免疫に関する研究(自己?非自己認識に関する研究)De Tomaso et. al., 2005など

ホヤから抽出される薬品;石橋正己、2005などを参照のこと

海産無脊椎動物にはアルツハイマー病等と関連すると考えられている神経保護物質であるプラズマローゲン(PlsEtn)が多く含まれているが、ホヤ類の内臓は特にこの物質の含量が多いとされる[5]

バナジウム濃縮機構に関する研究。バナジウム結合タンパク質など関連する遺伝子が単離されている。

分類

Kott(1992)ら別の分類体系を主張するものもあるが、ここではN.Satoh著Developmental Biology of Ascidians(1994)に紹介されているものを用いる。和名は日本海洋データベース[6]に基づく。
Order Enterogona

Order Enterogona マメボヤ目(ヒメボヤ目、腸性目)

Suborder Aplosobranchiata マンジュウボヤ亜目

Family Polyclinidae マンジュウボヤ科

Family Diemnidae

Family Polycitoridae ヘンゲボヤ科 - ヘンゲボヤ


Suborder Phlebobranchiata マメボヤ亜目

Family Cionidae ユウレイボヤ科 - カタユウレイボヤ

Family Octacnemidae オオグチボヤ科 - オオグチボヤ

Family Perophoridae マメボヤ科

Family Ascidiidae ナツメボヤ科

Family Agnesiidae ヒメボヤ科

Family Corellidae ドロボヤ科


Order Pleurogona

Order Pleurogona マボヤ目

Suborder Stolidobranchiata マボヤ亜目

Family Botryllidae

Family Styelidae シロボヤ科

Family Pyuridae マボヤ科 - マボヤ

Family Molguidae フクロボヤ科


Suborder Aspiculata

Family Hexacrobylidae


ギャラリーホヤの仲間は世界の各海洋に存在しており、代表的なものは以下が存在する。

Ascidia involuta

Botrylloides leachii

Botryllus schlosseri

Ciona intestinalis

Clavelina lepadiformis

Halocynthia papillosa

Halocynthia roretzi

Phallusia mammillata

Pyura spinifera

食材マボヤの刺身

ホヤは日本韓国フランス[7]チリなどで食材として用いられている。海産物らしい香りが強く、ミネラル分が豊富である。マボヤとアカホヤは亜鉛・鉄分・EPA(エイコサペンタエン酸)・カリウム・ビタミンB12・ビタミンE[8]など豊富な栄養素、味覚の基本要素の全てが一度に味わえる食材となっている[9][2]。またマボヤの筋膜体に含まれるグルタミン酸と 5'-GMP の割合がうま味を増強する濃度比であるため、旨味が強い[10]。一部の種はミネラル分が濃く、食べると内臓(特に腎臓)に障害をもたらすため、「毒ホヤ」と通称される。

日本では主にマボヤ科のマボヤ(Halocynthia roretzi)とアカボヤ(H. aurantium)が食用にされている。


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