ホスホマイシン
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ホスホマイシン

IUPAC命名法による物質名
IUPAC名[(2R,3S)-3-methyloxiran-2-yl]phosphonic acid
臨床データ
販売名ホスミシン, Monurol
Drugs.commonograph
MedlinePlusa697008
胎児危険度分類

US: B




法的規制

US: ?-only

処方箋医薬品

投与方法経口、経静脈、外用
薬物動態データ
生物学的利用能30?37% (oral, fosfomycin tromethamine); varies with food intake
血漿タンパク結合2.16%
代謝ほとんど未変化体で尿中へ排泄
半減期5.7 時間
排泄尿中排泄
識別
CAS番号
23155-02-4 78964-85-9
ATCコードJ01XX01 (WHO)
PubChemCID: 446987
DrugBankDB00828 
ChemSpider394204 
UNII2N81MY12TE 
KEGGD04253  
ChEBICHEBI:28915 
ChEMBLCHEMBL1757 
化学的データ
化学式C3H7O4P
分子量138.059 g/mol
SMILES

C[C@H]1[C@H](O1)P(=O)(O)O

InChI

InChI=1S/C3H7O4P/c1-2-3(7-2)8(4,5)6/h2-3H,1H3,(H2,4,5,6)/t2-,3+/m0/s1 

Key:YMDXZJFXQJVXBF-STHAYSLISA-N 

物理的データ
融点94 °C (201 °F)
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ホスホマイシン(Fosfomycyn、Phosphomycin、Phosphonomycin)とは、ストレプトマイセス属の真正細菌が産生する抗菌スペクトルの広い抗生物質(英語版)[1]の一つである。商品名ホスミシン。カルシウム塩が経口剤、ナトリウム塩が注射剤と点耳剤として製造されている。構造は単純で類似構造を持つ抗生物質は未だに確認されていない。
目次

1 禁忌

2 副作用

3 効能・効果

4 作用機序

5 抗菌スペクトルと感性

6 急性毒性

7 耐性

7.1 ホスホマイシン耐性酵素


8 生合成遺伝子群

9 開発の経緯

10 出典

11 外部リンク

禁忌

製剤成分に過敏症の既往を有する患者のほか、低張性脱水症の患者は脱水が増悪する可能性があるので注射剤は禁忌である[2]
副作用

経口剤の添付文書に記載されている重大な副作用は、血便を伴う重篤な大腸炎(偽膜性大腸炎等)である[3]。注射剤にはそれに加えて、ショック、アナフィラキシー様症状、汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少、肝機能障害、黄疸、痙攣が記載されている[2]。点耳剤に重大な副作用は設定されていない[4]
効能・効果

ホスホマイシンが有効な以下の菌株[2][3][4]

グラム陽性菌:ブドウ球菌属☆※*、

グラム陰性菌:大腸菌☆※、セラチア属☆※、プロテウス属☆※*、モルガネラ・モルガニー☆※、プロビデンシア・レットゲリ☆※、緑膿菌☆※*、赤痢菌※、サルモネラ属※、カンピロバクター属

が原因である敗血症☆、急性気管支炎☆、肺炎☆、肺膿瘍☆、膿胸☆、慢性呼吸器病変の二次感染☆、膀胱炎☆※、腎盂腎炎☆※、感染性腸炎※、腹膜炎☆、バルトリン腺炎☆、子宮内感染☆、子宮付属器炎☆、子宮旁結合織炎☆、深在性皮膚感染症※、涙嚢炎※、麦粒腫※、瞼板腺炎※、中耳炎※*、外耳炎*、副鼻腔炎※

☆:注射剤に記載、※:経口剤に記載、*:点耳剤に記載

ホスホマイシンは各種の尿路感染症に短期間大量投与される。単回経口多量投与の報告もある[5]。 トブラマイシン(英語版)との合剤(英語版)が嚢胞性線維症患者の肺感染症治療に応用された[6][7]

ホスホマイシンの忍容性は高く、副作用は少ないとされる[5]が、治療中の耐性の出現率が高く、重症感染症の治療継続ができない場合が多い。小児ならびに75歳以上の高齢者には推奨されない[8]

さらなる使用方法が提案されている[9]。 世界的な耐性菌出現が近年問題視されている[10]

動物用医薬品としては、牛の大腸菌性下痢症及びサルモネラ症に使用され、飼料添加物としても使用されている。また、すずき目魚類の類結節症及びエドワジェラ症に対して飼料添加物として使用される。
作用機序

ホスホマイシンはMurAと呼ばれるUDP-N-アセチルグルコサミンエノールピルビン酸トランスフェラーゼ(英語版)酵素を失活させる事で殺菌的に作用する[11]。MurAはペプチドグリカンの生合成過程の内、ホスホエノールピルビン酸(PEP)をUDP-N-アセチルグルコサミンの3'位の水酸基へ移動させる役割(英語版)を持っており、このピルビン酸基はペプチドグリカンのペプチド部分とグリカン部分を繋ぐ役目を果たす。ホスホマイシンはPEPの代わりにMurAに結合し、その活性部位であるシステイン残基(Escherichia coli の場合は115番)をアルキル化して作用を封じる[12]。この様にホスホマイシンは、細菌細胞壁ペプチドグリカン合成を阻害することにより抗菌力を発揮する。βラクタム系の様に細胞壁のムレイン架橋を阻害するのではなく、ムレイン単体生合成を阻害することが特徴である。ムレイン単体合成阻害薬には他にバンコマイシンがある。

ホスホマイシンはバクテリア体内へグリセロールリン酸輸送体にて取り込まれる[13]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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