ペル方程式
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ペル方程式(ペルほうていしき、: Pell's equation)とは、n を平方数ではない自然数として、未知整数 x, y についてx2 − ny2 = 1

の形のディオファントス方程式である。

ペル方程式の一般的な解法は、1150年にインドのバースカラ2世が見つけている。彼はブラーマグプタのチャクラバーラ法(英語版)を改良した解法を使い、同じ技法を応用して不定二次方程式や二次ディオファントス方程式の一般解も見つけた。西洋におけるペル方程式の一般的な解法は、ウィリアム・ブランカーが発見した。しかし、オイラーはこの方程式を研究したのはジョン・ペルであると誤解し「ペル方程式」と命名したため、その名前が広く使われるようになった。
解法

平方数でない正の整数 n に対してペル方程式は必ず自明な解 (x = 1, y = 0) 以外の整数解を持つことが知られている。また1つの解 (x, y) を得たとすれば、 x k + y k n = ( x + y n ) k {\displaystyle x_{k}+y_{k}{\sqrt {n}}=(x+y{\sqrt {n}})^{k}}

は全てペル方程式の解になる。また逆にペル方程式の全ての解は最小解の冪乗になることが知られている。

最小解を得る法としては、連分数展開からの近似分数を利用する方法が良く用いられる。

具体的には、√n の連分数展開を、√n = A = [a0; a1, a2, …, am] と置き、近似分数 .mw-parser-output .sfrac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .sfrac.tion,.mw-parser-output .sfrac .tion{display:inline-block;vertical-align:-0.5em;font-size:85%;text-align:center}.mw-parser-output .sfrac .num,.mw-parser-output .sfrac .den{display:block;line-height:1em;margin:0 0.1em}.mw-parser-output .sfrac .den{border-top:1px solid}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}P/Q を、P/Q = B = [a0; a1, a2, …, am−1]とすると、(x, y) = (P, Q) が解になる。ただし、周期 m が奇数の場合は、右辺 = ?1 の解が得られるので、1 の解を得るには上記の式で二乗する必要がある。ここで、A は a0 を整数部分、a1, a2, …, am を循環節とする無限連分数で、B は循環節を一周期だけ採り、最後の項 am を除いた、有限連分数である。ちなみに、a1, a2, …, am−1 は左右対称となっており、am = 2a0 が常に成立する。

例えば n が 7 ならば、√7 = [2; 1, 1, 1, 4] (周期は 4 で偶数) なので、[2; 1, 1, 1] から近似分数 8/3 が得られ、(x, y) = (8, 3) が最小解となる。n が 61 の場合は、√61 = [7; 1, 4, 3, 1, 2, 2, 1, 3, 4, 1, 14](周期は 11 で奇数)なので近似分数 29718/3805 が得られ、右辺 = ?1 の最小解は ( x 1 , y 1 ) = ( 29718 , 3805 ) {\displaystyle (x_{1},y_{1})=(29718,3805)} となる。右辺 = 1 の最小解は、 x + y 61 = ( x 1 + y 1 61 ) 2 {\displaystyle x+y{\sqrt {61}}=(x_{1}+y_{1}{\sqrt {61}})^{2}} から (x, y) = (1766319049, 226153980) となる。

解の公式から α = x + y n , β = x − y n {\displaystyle \alpha =x+y{\sqrt {n}},\;\beta =x-y{\sqrt {n}}}

とおくと、 x k = α k + β k 2 , y k = α k − β k 2 n {\displaystyle x_{k}={\frac {\alpha ^{k}+\beta ^{k}}{2}},\;y_{k}={\frac {\alpha ^{k}-\beta ^{k}}{2{\sqrt {n}}}}}

が得られる。つまり、ペル方程式の解に対して、yk/y, 2xk はリュカ数列を構成する。
拡張1

冒頭の不定方程式の右辺を 1 のかわりに ?1 としたもの x 2 − n y 2 = − 1 {\displaystyle x^{2}-ny^{2}=-1}

もペル方程式と呼ばれることがあるが、これは n の値によっては解を持たないこともある。

解を持つ n と、解の例をいくつか挙げる:n = 2 のとき (x, y) = (1, 1), n = 5 のとき (x, y) = (2, 1), n = 13 のとき (x, y) = (18, 5)。

どのような n が -1 の解を持つのかは、未解決問題だが、√n を連分数展開したときの循環節の長さ(周期)が奇数のとき、かつその場合に限り解を持つことが、知られている。?1 の解を持つ n の必要条件としては、
4の倍数でない

4k + 3 型の素因数を持たない

k2 + 2k/a (0 < a < 2k, a 。2k) の形でない
[注 1]

が挙げられる。1, 2は、N = x2 + 1 = ny2

と置いたとき、N が2平方和に分解されており、gcd(x, 1) = 1 であることから、2平方和定理からの自明な帰結として得られる。3は、この形の数の平方根が k 2 + 2 k a = [ k ; a , 2 k , a , 2 k , ⋯ ] {\displaystyle {\sqrt {k^{2}+{\frac {2k}{a}}}}=[k;a,2k,a,2k,\cdots ]} と、周期2の連分数に展開されることから、導かれる。例えば、a = k = 12 なら √122+2 = √146 = [12; 12, 24, 12, 24, …] である[注 2]。上記が、必要条件であり、必要十分条件でないことは、34 (= 2 × 17), 205 (= 5 × 41), 221 (= 13 × 17) などの多数の反例で示される。

十分条件の報告例は少ないが、n が 4k + 1 型の素数の場合や 8k + 5 型の素数の2倍の場合も、必ず解を持つことが報告されている[1]。また、n = k2 + 1 の形であれば、(x, y) = (k, 1) が解になることは、明らかであろう[注 3]
拡張2

右辺を1の代わりに4としたものx2 − ny2 = ±4

もペル方程式とよばれることがあるが、これは二次体単数と深く関連している。K を二次体とし、D をその判別式とすると、x2 − Dy2 = ±4

の整数解に対して(x + y√D)/2

全体は K の単数全体と一致する。特に最小解を (x1, y1) とおくと、 α = x 1 + y 1 D 2 , β = x 1 − y 1 D 2 {\displaystyle \alpha ={\frac {x_{1}+y_{1}{\sqrt {D}}}{2}},\beta ={\frac {x_{1}-y_{1}{\sqrt {D}}}{2}}}

は K の基本単数となり、この方程式の解について、通常のペル方程式の場合と類似した公式 x k + y k D 2 = ( x 1 + y 1 D 2 ) k {\displaystyle {\frac {x_{k}+y_{k}{\sqrt {D}}}{2}}=\left({\frac {x_{1}+y_{1}{\sqrt {D}}}{2}}\right)^{k}}

が得られる。
最小解の一覧表

x2 − ny2 = 1 の、115 以下の n についての最小解の一覧表を、以下に示す。

nxynxynxy
2324213279809
3214334825318091
59444199308216318
652451612483829
7834624335358884556
831474878528576930996
10196487186104051122
1110350991487283
1272515078819721
1364918052649908950000153000
141545366249910090192
15415448566911574165
17338558912921151120
181745615293121511260
19170395715120942143295221064
20925819603257495394
215512595306996495
22197426031497628096336377352
23245611766319049226153980989910
24516263899101
265110638110120120
27265651291610210110
28127246665810322752822419
299801182067488425967104515
3011268334105414
311520273697775936106320800513115890
32173702513010796293
332347134804131081351130
343567217210915807067198624915140424455100
3561732281249267000110212
37731274369943011129528
383767526311212712
39254765779966301131204353113296
401937735140114102596
412049320785361151126105

x2 ? ny2 = ?1 の、653 以下の n についての最小解の一覧表を、以下に示す。

nxynxynxy
21119317641321269854091119217969685534176685
521197141421440424456968214182146497463530785
1031202314122142526813
13185218251174337230660684347483377
1741226151442211
265122917101134454662221
2970132332315615174491894713328941705
3761241710110684574225457590899515842764111349
4132525044432814581075
5071257161461243141101132421
5318225265607237348196414043961
589913269825485221
6129718380527414078549368398230805
6581277892048411853597994550939572795017540333
7310681252811063532634455211283772405624309
74435290171530231
829129324821455336118265
853784129840955723725538690512977
89500533131268623687170685541136151631646922745058536158470221581
975604569314443255541742937405
101101317352618198055571185
106400538932518156514752278620633
10988901828515253371015827336553356415692894863832121359005
1137767333823913577241
1221113469355864115086707169992665
12568261349921049359360063224665
1305753537126437936011394683036795325689030769845
1371744149362191610718472909
145121365345818161348167357908861819454612624065
149113582930537032717617410097161650989


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