ペルシダー・シリーズ
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ペルシダー・シリーズは、エドガー・ライス・バローズによるアメリカSF小説のシリーズ名。全7巻。地底世界シリーズとも表記する。

本項では、最終作"Savage Pellucidar"の版権を有している早川書房版の表記に準ずる。
概要

地球空洞説を採用したSF作品ではあるが、冒険小説としての面が強い。原始人恐竜などの古生物も登場するが、オリジナルのモンスターも登場する。バローズの4大シリーズでは3番目に開始された。



各作品の概略
第1巻
主人公デヴィッド・イネスと老技術者アブナー・ペリーが、
試掘機・鉄モグラ(機械もぐら)の試運転を行うが、事故により地球内部の世界に到達する。そこは翼竜から進化したマハールが、原始人類を支配している世界だった!数々の冒険を経て、デヴィッドは地上に戻ってくるが、地上では10年が過ぎていた。
第2巻
ペルシダーに帰還したデヴィッドが、ガークやダコール、ジャたちの部族をまとめて帝国を造り、マハールを領土から一掃する。本作をもって、ペルシダーシリーズは一度完結している。
第3巻
新たな敵・コルサール人が出現。ついに皇帝デヴィッドも捕らえられる。主役は疾風のタナー(ガークの息子)。
第4巻
ジェイスン・グリドリーはデヴィッド救出隊を組織。ターザンをスカウトし、飛行船O-220号でペルシダーに乗り込む。
第5巻
前巻で消息を絶った、フォン・ホルストの冒険譚。
第6巻
フォン・ホルスト探索に旅立ったデヴィッド・イネスが、帰路で遭遇した冒険。
第7巻
アブナー・ペリーの開発した気球により、デヴィッドとダイアンは新たな冒険に巻き込まれる。主役はデヴィッドと、快速のホドン(ペルシダー帝国所属)。青銅器文明と宗教を持つ、黄色人種が登場する。

第3巻から第5巻は3部作(第6巻を含めると4部作)となっているが、この3部作のプロットは、『時間に忘れられた国』(1918年)の構成とほぼ同じである。

なお、第7巻の第1部~第3部は、第6巻に先駆けて発表されている。
初出、単行本化、邦訳等の一覧

ペルシダー・シリーズは全7巻で構成されている。以下、原題と、2種類の邦題、連載期間、刊行年を示す[1][2]

創元推理文庫版第1巻『地底の世界ペルシダー』の表紙は、当初は武部本一郎が手掛けていたが、『地底王国』(1976年)として映画化されたのを機にカラーイラストに切り替わっている。裏表紙も同作のモノクロ写真(鉄モグラ(ハヤカワ文庫SF版は鉄製もぐら)の姿)となっている(1978年1月20日 第7版)。口絵・挿絵は一貫して武部本一郎の絵である。第2巻以降は表紙、口絵、挿絵すべて、武部画以外存在しない。

ハヤカワ文庫SF版(地底世界シリーズ)では、柳柊二が全てを手がけている。

No.原題連載刊行邦題
(早川版/創元版)日本での刊行
(早川版/創元版)
1At the Earth's Coreオール・ストーリー
・ウィークリー
1914年4月4日号
?25日号(4回)1922年
マクルーグ地底世界ペルシダー
地底の世界ペルシダー1971年1月31日
佐藤高子
1973年5月18日
厚木淳
2Pellucidarオール・ストーリー・キャバリュ
・ウィークリー
1915年5月1日号?29日号1923年
マクルーグ危機のペルシダー
翼竜の世界ペルシダー1971年2月28日
佐藤高子
1974年8月16日
厚木淳
3Tanar of Pellucidarブルー・ブック
1929年3月号?8月号(6回)1930年
メトロポリタン戦乱のペルシダー
海賊の世界ペルシダー1971年4月30日
佐藤高子
1975年5月16日
厚木淳
4Tarzan at the Earth's Coreブルー・ブック 1929年1930年
メトロポリタン地底世界のターザン
ターザンの世界ペルシダー1971年5月31日
佐藤高子
1976年6月25日
厚木淳
5Back to the Stone Ageアーゴシー
1937年[3]1月9日号
?2月13日号(6回)1937年
バローズ
出版社栄光のペルシダー
石器の世界ペルシダー1971年8月31日
関口幸男
1976年10月22日
厚木淳
6Land of Terrorなし(単行本が初出)1944年
バローズ
出版社恐怖のペルシダー
恐怖の世界ペルシダー1971年9月20日
関口幸男
1977年3月18日
厚木淳
7Savage Pellucidar下記参照1963年
カナベラル
・プレスペルシダーに還る
美女の世界ペルシダー1972年1月31日
佐藤高子
1977年4月8日
厚木淳
7-1The Return to Pelluciderアメージング・ストーリーズ
1942年2月号-ペルシダーに還る
ペルシダーに帰る-
-
7-2Men of The Bronze Ageアメージング・ストーリーズ
1942年3月号-青銅器時代の男たち
青銅器時代の人間-
-
7-3Tiger Girlアメージング・ストーリーズ
1942年4月号-虎の女
剣歯虎の女-
-
7-4Savage Pellucidarアメージング・ストーリーズ
1963年11月号(執筆は
1944年)野性のペルシダー
--
-

第7巻

第7巻は、4つの短編(中編)で構成されている。早川書房が版権を独占所有しているため、第4部は創元版ではダイジェストとなっている(282頁の「8 大団円」から289頁まで)。創元版では、原書の表記は、The Return to PelluciderMen of The Bronze AgeTiger Girl

となっており、年表示も1942年となっている(第4部はバローズの死後に発見された)。生前、バローズは第7巻にGirl of Pellucidarのタイトルを準備していたという。創元版の邦題は、バローズの意思を尊重してつけられたものである[4]。ちなみに、本シリーズ以前に邦訳された『金星の魔法使』の「解説」では、"Savage Pellucidarは「野蛮なペルシダー」と訳されている[5]

なお、連作短編(連作中編)方式は、バローズの晩年の特徴であり、火星シリーズの第10巻も同じ4部構成である。「木星の骸骨人間」(火星シリーズ最終作)、「金星の魔法使」(金星シリーズ最終作)も、未完の連作の第1部となっている。
少年少女向け

1960年代から70年代にかけて、第一作のみで完結する形で少年少女向けの邦訳版が刊行されている。主なものを挙げる。『地底恐竜テロドン』 偕成社 SF名作シリーズ7 久米元一訳 1967年

地底世界の支配者が、ランフォリンクスではなくプテラノドンから進化(つまり原作におけるシプダールと同一扱い)した「テロドン」である事、物語の最後にペリーがデビッドと一緒に地上に帰還し、すぐに亡くなってしまう事、原作の「ジャ」に相当する人物の名前が「ブラック=スター」である事など、表面的にはかなりの改変が目立つ。しかし展開自体は第一作に概ね忠実に進められる。


『地底世界ペルシダー』 あかね書房 少年少女世界SF文学全集7 野田昌宏1971年

原作と違い、デビッドの年齢が出発当初から30歳となっている、原作にあったダイアンとの仲違いがない、終盤でフージャが転落死する、ラストはペリーと共に鉄モグラに向かうシーンで終わる、等の違いが見られる。『ペルシダ王国の恐怖』 国土社少年SF・ミステリー文庫8 福島正実1983年

ページ数が少ないため、エピソードは大幅にカットされている。しかし、上述の二作と違い原作同様に、冒頭と締めは、地上に脱出してきたデビッドと出会った第三者の一人称、それ以外はデビッドが件の人物に語る形での一人称で書かれている。

これらは全て上述のように第一作のみの邦訳であり、二作目以降は刊行されていないが、どの訳書でも、全七編のうちの第一作である事は訳者の後書きで一応説明されてはいる。
地底世界の概要

地球空洞説を採用していることと、恐竜などの古代生物が登場するのが特徴である。
地底世界の地理

地球の内部にあるペルシダーには、水平線が無い。水平線を探していると、頭上を見上げることになる(に遮られない場合)。そのため、山はシルエットが浮かび上がらず、目立たない存在となっている。

地球の中心部(の位置)には輝く物体があり、太陽の役割を果たしている。このため、ペルシダーは昼間だけの世界であり、夜は訪れない(「恐ろしい影の国」を除く)。この事は、時間の概念がない(あるいはあやふやな)ことの要因となっている。

に該当する天体も浮かんでいるが、公転周期と地球の自転が一致しているため、常に同じ地表に影を落としている。その場所は「恐ろしい影の国」と呼ばれている。

北極には巨大な穴が開いており、地表との行き来が可能になっている(第3巻、第4巻)。南極にも同様の穴があると(作中では)推測されている。

地底の太陽は、目視による計測では、地上で見る太陽の3倍は大きい。これにより、ペルシダーの平野の気候は暑い。高山や北極近辺では、当然ながら気温は下がる(雪山も存在している)。

陸地が3/4、海が1/4を占めている(地上と凹凸が逆になっており、地上の海が地底の陸、地上の陸が地底の海となっている)、と、当初、アブナー・ペリーは推測していた(根拠は、マハールの図書館にあった地図[6][7])。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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