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ウバタマ(ペヨーテ)
保全状況評価[1]
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ペヨーテ(peyote; 学名: Lophophora williamsii (Lem. ex Salm-Dyck) J. M. Coult.)は、サボテン科ウバタマサボテン属(ロフォフォラ属)の植物。とげのない小さなサボテンで、アメリカ合衆国南西部からメキシコ中部に原産。和名はウバタマ(烏羽玉)。ペヨーテはナワトル語で青虫を意味する「ペヨトル」が語源である。これは全体に青虫のような産毛が生えていることからきている。
ペヨーテは『メスカリン』をはじめ様々なフェネチルアミン系アルカロイドを含んでおり、アメリカ・インディアンを中心に治療薬として使用されている。メスカリンは、日本では麻薬に指定されており、使用しないことが望ましい。なお、サボテンのペヨーテ自体は、法的規制の対象にはなっていない。 ウバタマサボテン属の植物は成長がきわめて遅く、野生では地上部分の大きさがゴルフボール大になって、花をつけるようになるまでに約30年もかかることがある。栽培株はかなり成長が早いが、それでも発芽してから花をつけるまでには6年から10年が必要である。成長が遅く、また収集家やインディアン相手の「ペヨーテ・ディーラー」による乱獲も激しいことから、野生のペヨーテは絶滅が危惧されている。 地上に出ている円盤状の部分を地下の塊茎から切り離し、乾燥させボタン状にしたものを、そのまま噛んだり、あるいは煎じて飲むことによって、幻覚などの精神的効果が得られる。ただし、ペヨーテは非常に苦く、効果が得られる前に吐き気に襲われることが多い。頂部を切り取った塊茎からは再び地上部が再生するが、失敗すると弱って枯れてしまう。 通常、精神的効果を得るのに必要なメスカリンの量は300-500mgであり、これは乾燥ペヨーテ約5gに相当する。効果は10-12時間ほど続く。適切なセットとセッティング(心構えと環境条件)で服用すると、ペヨーテは麻薬のような、鮮やかな視覚・聴覚の共感覚を引き起こす。 ネイティブ・アメリカン・チャーチでは、インディアンたちはアルコール依存症や、様々な内的な問題、疾病の治療のためにペヨーテを用いる。ペヨーテの治療効果を期待してこれを摂取する場合には、インディアンの儀式のように、経験豊富な「ペヨーテロー」(シャーマンや呪術師のような人物)に常に付き添ってもらうことが推奨される。Handbook of the North American Indians(1910年)は、ペヨーテについてこう記述している。「これまでの検査では、ペヨーテには様々な薬効成分が含まれていることが判明しており、インディアンがこれを万能薬とするのも無理からぬことである。この薬物はいわゆる精神的昂揚感をもたらすが、その作用はほかに知られるいかなる薬物とも異なって、全く副作用は認められない」 いくつかの限られた研究がアルコール依存症に有効であること裏付けている[2]。また長期的なペヨーテの使用者に認知障害は見られなかった[2]。薬物を用いていない者よりも幸福感や肯定的な影響が強かった[2]。生涯におけるメスカリンやペヨーテの使用は、精神科の薬が処方されることが少ないことに関連している[3]。視覚的体験が再燃するフラッシュバックについて、儀式への定期的な参加者500人へのインタビューでは報告されていない[3]。 ペヨーテは、記録に残る限り最も古い時代から、北メキシコのウイチョール族などのメキシコ・インディアンによって、伝統的な宗教儀式の一部として使用されてきた。ウイチョール族は年に一度、秘密結社を組織し、数日かけて徒歩で原野へ赴き、「ペヨーテを狩る」。また、儀式で得た幻覚を色鮮やかな図柄の織物にする。 16世紀の『ヌエバ・エスパーニャ諸事物概史
概要・植物の特徴
詳細・副作用と効能アーケータ警察(カリフォルニア州)が押収したペヨーテ・ボタン
歴史と文化