ペットボトル
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500mLペットボトル

ペットボトル(: PET bottle)とは、合成樹脂(プラスチック)の一種であるポリエチレンテレフタラート (PET) を材料として作られている容器

ペットボトルの約9割は飲料用容器に利用される。他に、調味料化粧品非常時のトイレにも用いられている。それまでガラスなどに入れられていた物の一部がペットボトルに置き換えられた。ペットとも呼ばれる。上記は日本での呼称・発音で、英語圏では通常、素材の違いを細分せず(PEボトルやPVCボトルと区別せず)plastic bottle と呼ぶ(ペットボトルを構成する素材であるPETについては、英語圏では普通はピートもしくはそのままピー・イー・ティーと読む)[1]
歴史これらのプリフォームは工場で加熱されてから膨らまされる

1967年デュポンアメリカ人科学者ナサニエル・ワイエス(英語版)が炭酸飲料向けプラスチック容器の開発を始め、1973年にペットボトルの特許を取得した。デュポン社のペットボトルは1974年ペプシコーラの飲料容器に採用され、世界初のペットボトルの応用例となった[2]

日本では当初、食品衛生法にPET樹脂の記載がなかったため、清涼飲料用には使用できなかった[2]。1977年にキッコーマン吉野工業所醤油の容器を開発した後、1982年に飲料用に使用することが認められ、同年からは日本コカ・コーラ1983年から全国展開)、1985年からは麒麟麦酒(現:キリンビバレッジ)が1.5リットルペットボトル入り飲料を発売した。それ以降は多くのメーカーで使われるようになり、かつてガラス瓶入りが主流であった1リットル以上の大型清涼飲料の容器はペットボトルに取って代わられた。1リットル未満の小型ボトルは飲料業界と厚生省の覚書により国内生産を自粛していた[3][4]が、輸入ミネラルウォーターブームを背景に1995年ブルボンが500ミリリットル入り製品を発売[5]容器リサイクル法が成立したことあり各社が追随した。全国清涼飲料工業会の自主規制は1996年4月1日に撤廃[6]されている。
容器の形態
素材

ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethyleneterephthalate)を主原料にしている[7]。ポリエチレンテレフタレートは石油由来のテレフタル酸エチレングリコールを高温・高真空下で化学反応させた樹脂である[7]

2016年アサヒ飲料は、三ツ矢サイダーの一部製品(1.5Lボトル4万箱分)に植物由来の原料を使用したオールバイオペットボトルの採用を開始した[8]

なお、ペットボトルのキャップはポリオレフィン系のポリプロピレンポリエチレンで出来ている。[7]。また、ラベルはポリスチレンポリオレフィン系のポリプロピレンやポリエチレンでできている[7]リサイクルしやすさや使用する資源量削減といった環境配慮から、ラベルのないペットボトル入り飲料も発売されている[9]

ペットボトルと他のプラスチック製のボトルは外観だけでは見分けることが困難な場合がある[10]。そのため、日本では指定表示品目(清涼飲料水、醤油、酒類)の指定ペットボトルには三角形の識別表示マークが付けられている[10]

色を付けるのは容易であり、世界では着色ペットボトルも珍しくない。しかし、日本で生産されるボトルについては、2001年のPETボトルリサイクル推進協議会の自主設計ガイドラインの改定に伴って、着色ボトルを全面禁止し、全て無色透明化された[11]。無色のペットボトルから作られた白い繊維は、衣類の原料として使用可能であるが、着色ペットボトルから作られた着色の繊維の需要は限られ、このルールが定められた[12]。着色ボトルが流通している国家では、無色と着色を選別する工程が必要になる[13]

なお、日本のペットボトルには口部が白いものがある。着色ではなく結晶化を用いて白くしている[10]

無色透明なものに色を付けたように見せる手法として、中身の液体の色を利用する方法、色付きラベルをペットボトル周囲に貼り付ける方法がある。
形状

正式に定められたものではないが、大きく分けて以下のように分類することができる。
耐圧ペットボトル:凸半球型ペットボトル(従来型・炭酸飲料用)
1982年に登場した初期の炭酸飲料用ペットボトル。現在のような底面をペタロイド形状(後述)に加工する技術がなく凸半球に膨れていたので、
樹脂製のベースカップを底面に接着して立たせていた。容量は1.5Lボトルのみであった。

前期型では、それまでのガラス瓶との流用でキャップの口径が広く金属製のキャップで閉められていて、ラベルもシールが貼られていた。

後期型では、キャップの口径が小さくなって樹脂製のキャップで閉められるようになり、ラベルもフィルムが巻かれるようになった。

耐圧ペットボトル:ペタロイド形状ペットボトル(炭酸飲料用)
コーラサイダーなどの炭酸飲料に用いられている。ペタロイドとは花弁のことであり、5本足のペタロイドによって自立する形状になっている[7]。口部は透明である[7]。従来の凸半球型ペットボトルの底面をペタロイド形状に形成してベースカップなしに立たせている。この加工技術の発達と1996年の規制緩和で500mL以下の小さいボトルが作られるようになった。これは炭酸の圧力により底面が膨張して容器が倒れる事を防ぐための形状である[14][15][16]

コカ・コーラから発売されているファンタは串団子状になっている。

サントリーから発売されているC.C.レモンはヒョウタン状になっている。

耐熱圧ペットボトル:ペタロイド形状ペットボトル(炭酸用)
果汁入り炭酸系飲料に用いられており充填後に熱水で殺菌できるようになっている[7]。口部は白色である[7]
耐熱ペットボトル(非炭酸飲料用)
果汁飲料スポーツドリンク等の非炭酸飲料に用いられている。ホット充填する内容物使用するため、口部に耐熱プラスチックを用いており口部が白いのが特徴[17]。底部は凹型である[7]。密封後に減圧されるため、独特の凹凸模様や角をつけて補強している。また、従来の円柱から直方体に加工することで、容量が3割増えて2Lボトルが登場した。
無菌充填用ペットボトル(非炭酸飲料・無菌充填用)
お茶スポーツドリンク等の非炭酸飲料に用いられている。内容液を殺菌後に常温で冷却するいわゆる無菌充填の専用ボトル。底部は凹型、口部は透明である[7]。常温で充填できるため他のペットボトルに比べて壁厚が極端に薄い。そのため、凹凸やビード、パネル成型を行って補強している。

サントリーから発売されている伊右衛門の店頭用500mLタイプは、くびれた竹筒の形をしている。

キリンビバレッジから発売されている生茶は「ペコロジーボトル」を採用(2Lボトルのみ)しており、通常より肉厚が薄く潰しやすいものとなっている。

ペットボトルの形状によって、商品イメージや販売数に影響が出るようにもなってきており、特に飲料メーカーは各社しのぎを削っている。
容量

日本で流通している主要な飲料用ペットボトルの容量は以下のとおり(注:ペットボトル自体の容量ではなく、そこへ入れる内容量を主体として分類した)。多く見受けられるものには※(こめじるし)を付した。

280mL※(こめじるし) - ホット(加温)対応飲料の多く(キャップがオレンジ色)

350mL※(こめじるし) - コールド(冷却)対応飲料の多く

500mL※(こめじるし) - コールド(冷却)対応飲料の多く

900mL※(こめじるし) - アイスコーヒーの多く

1L※(こめじるし) (1000mL) - 主に醤油

1.5L※(こめじるし) (1500mL) - 炭酸飲料の大容量版

1.8L (1800mL)- 主に
焼酎清酒調味料

2L※(こめじるし) (2000mL) - 主に飲料水、日本茶ウーロン茶など非炭酸飲料の大容量版、炭酸飲料では一部地域でコカ・コーラが存在する。

2.7L (2700mL) - 主に焼酎、ウイスキーワイン

4L (4000mL) - 主に焼酎、ウイスキー

5L (5000mL) - 主に焼酎

重量

用途や容量にもよるが、20 - 50 g程度が多い。小型の物でも20 - 30 g程度で、350 mLアルミニウム缶の16 g程度に比べると重い。最近では薄肉・軽量化が進み500 mLでも12 - 15 g前後の物も多くなって来ている。
容器の特性

包装容器であり、品質保全性、安全性、衛生性、便利性、商品性、経済性、作業性、環境対応性などが要求される[2]。また、飲料・液体食品包装であるため、特にガスバリア性[18]、透明性、自立性などが要求される[2]。ペットボトルは軽くて丈夫で柔軟性があり、軽度のへこみであれば自ら元に戻る性質を持つ。ペットボトルには耐熱用、耐圧用、耐熱圧用、無菌充填用など特性をもたせたものがある[7]
透過性

多くのペットボトルはPET単層ボトルである[2]。PET樹脂は、ポリオレフィン樹脂に比べると、ガスバリア性に優れているが十分ではなく、一定の気体透過性がある[2]。そのため、長期間保存した場合、内容物の酸化、炭酸飲料の場合は炭酸圧の低下、臭気のある環境では臭気の混入が起こる。そのため、一般的な金属缶や飲料の賞味期限が1年なのに対して、ペットボトル飲料の賞味期限は半年?9か月に設定されている。

酸素による酸化を防ぐため、飲料には酸化防止剤としてビタミンCなどが添加される。ガスバリアPETボトルにはPET単層ボトルにコーティングを施したものとガスバリア樹脂(パッシブバリア材)や酸素吸収性樹脂(アクティブバリア材)を利用した共射出ブロー多層ボトルがある[2]。「ダイヤモンドライクカーボン」を参照
耐薬品性

有機溶剤性は低い。アルコール濃度は20%が限度であり、それ以上のアルコール濃度を注入するとエステル交換反応という置換反応が起こる。耐性、耐塩基性は非常に低い。ただし、食酢程度の酸解離定数なら問題にならない。ただし、グレードにより耐薬品性の高いものもあり、高濃度のアルコール消毒剤の容器に利用されている。
耐熱・耐寒性

耐熱性は非常に低い。PET自体の耐熱性は50程度であり、真夏の自動車内に放置すると変形してしまう。通常の加熱殺菌には適さないため、限外濾過で無菌化または高温短時間殺菌し、常温充填(アセプチック充填)される。耐熱ボトルでも耐熱性は85℃程度であるが、加熱殺菌状態での充填がかろうじて可能である。

耐寒性は、瓶や缶に比べれば低いが、材料としての耐寒性は飲料ではほとんど問題にならない。内容物の凍結による膨張が問題になる。

保存温度帯(販売温度帯)では、ペットボトルは次のように分けられる。
標準温度帯用
常温冷蔵時に利用される、ごく一般的なペットボトル。キャップの色は基本が白だが、特に制約はなく様々な色が存在している(ボルヴィックなど海外製品で特に)。
高温度帯用
ホットウォーマーなどで、ペットボトル容器ごと温めることを想定して作られたペットボトル。高温度でも内容物が変質しないように改良されている。PET樹脂自体は酸素透過性があり、高温になると更に透過性が増大し内容物の酸化劣化をもたらす。しかしながら、高温度帯用の製品では容器の厚みを増やしたり、酸素遮断層をサンドイッチや内面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティング処理することにより加温時の酸化劣化を防いでいる。缶に比べて熱くなりすぎず、直接手で持っても火傷をすることが少ない。


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