ベータマックス
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ベータマックス
Betamax、Beta(β)


メディアの種類磁気テープ
記録容量K-30(βI:30分)
K-60(βI:60分)
L-85(βII:20分、βIII:30分)
L-125(βII:30分、βIII:45分)
L-165(βII:40分、βIII:1時間)
L-250(βII:60分、βIII:1時間30分)
L-330(βII:80分、βIII:2時間)
L-370(βII:90分、βIII:2時間15分)
L-500(βII:2時間、βIII:3時間)
L-660(βII:2時間40分、βIII:4時間)
L-750(βII:3時間、βIII:4時間30分)
L-830(βII:3時間20分、βIII:5時間)
フォーマットアナログ
NTSCカラー、EIA標準方式)
読み込み速度40.0 mm/s(βI・βIs)
20.0 mm/s(βII)
13.3 mm/s(βIII)
読み取り方法水平磁気記録 回転2ヘッド・ヘリカルスキャンアジマス方式
書き込み方法水平磁気記録 回転2ヘッド・ヘリカルスキャンアジマス方式
書き換え回数随時オーバーライト
策定ソニー
主な用途映像等
大きさ156×96×25 mm(テープ幅:12.65 mm(1/2インチ
上位規格ED Beta
関連規格BETACAMVHS(競合規格)
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ベータマックスのビデオデッキ(下から1、2段目の各1台と、右側最上部の1台)テープサイズの比較。
Betamax(上)とVHS(下)ビデオデッキの内部構造(SL-HF150)ベータカム(左)とベータ方式(右)のビデオテープ

ベータマックス(βマックス、Betamax)は、ソニー(初代法人、現:ソニーグループ)が販売していた家庭向けビデオテープレコーダおよびその規格である。規格全体を指す名称としては、東芝三洋電機などが参画した時点から「ベータフォーマット」や「ベータ規格」、「ベータ方式」を用いていた。Hi-Band ベータ(ハイバンドベータ)やEDベータ(Extented Definition Beta、ED Beta)もベータマックスの記録フォーマットの一種である。この項では規格および製品について詳述する。
概要

本格的家庭用規格として、VHSと共に大々的に販売されたカセット型ビデオテープレコーダ(VTR)規格である。1号機(SL-6300)は1975年4月16日に発表され、同年5月10日に発売された。

これ以前の家庭用VTR規格はいずれも本格的な普及を見なかったが、低価格での販売が可能になった事も含め、ベータマックスのヒットにより家庭用VTR市場が開拓され、その初期段階ではVHSよりも高いシェアを占めていた。しかし、VTRの世帯普及率が高まる中でVHSと業界を二分した熾烈な販売競争(ビデオ戦争)に敗れ、1984年度をピークに販売台数が減少に転じ、ついに2002年、規格主幹のソニーも生産を終了した。ソニー製ベータマックスVTRは日本国内で累計約400万台(全世界で累計約1,800万台以上)が生産され、ビデオカセットはピーク時(1984年度)には年間約5000万巻が出荷されていた[1][2]

VHSに対する劣勢が顕著となった1980年代前半には、矢継ぎ早に複数の技術革新が行われた。たとえばカメラとデッキを一体化したカメラ一体型VTR「ベータムービー」の発売(1983年)、音声FM記録による音質の大幅な改善を図ったBeta hi-fiの発売(1983年)、FMキャリアを高周波数化することで水平解像度の向上を図ったHi-Band Betaの発売(1985年)などがそれである。しかし、いずれもVHS陣営が迅速に対抗規格・対抗機種を投入したために劣勢を覆すことはできず、むしろ販売台数の減少に拍車がかかった。そして1987年、VHS陣営がS-VHSを投入するに至って、ついに画質面でも追い抜かれ、挽回は絶望的となった。1987年にはメタルテープ使用の高画質新規格であるEDベータを発売して画質面で再び優位に立ったが、マニア向けのニッチ商品の域を超えるものではなかった。

ソニー自身が1988年にVHSビデオデッキの製造販売に参入して以降もベータマックスの生産・販売は継続されたが、新規機種の投入は減ってゆき、2002年8月27日、構成部品の調達が困難になったこともあり、生産終了を発表し、新品は市場から姿を消した[1]

ベータ規格の代名詞とも言える「ベータマックス」という名称はソニーの商標として登録されており[注釈 1]、東京芝浦電気(現:東芝)、三洋電機アイワ(初代法人)、新日本電気(NEC:日本電気ホームエレクトロニクス)、ゼネラル(現:富士通ゼネラル)、パイオニア(ホームAV機器事業部、現:オンキヨーテクノロジー〈開発・製造元〉/ティアック〈発売・販売元〉)などが参入した時点でシステム全体の名称は「ベータ方式」「ベータフォーマット」などとされていた。東芝・三洋電機はVコード方式からベータ方式に鞍替えしたため、参入当初のカタログ等には「ベータコード方式」の表記を使用していた。自社で開発・製造を行っていたのはソニー・東芝・NEC・三洋電機・アイワの計5社で、ゼネラル・パイオニア等の他各社はOEM供給による販売を行っていた。

日本国外ではSearsやZenith Electronics(英語版)、RadioShack、TATUNG(台湾の大同公司(中国語版))、大宇電子といったメーカー・ブランドでもベータ方式に参入し販売されていたが、ソニー以外の各社は1986年までにVHSの生産・販売に移行した。オーディオメーカーの日本マランツ(現:ディーアンドエムホールディングス/マランツ コンシューマー マーケティング)も三洋電機からのOEM供給により日本国外でベータフォーマットのデッキを販売した実績がある。
VHSと比較した特徴

VHS規格と比較した特徴として、下記のような特徴を持っている。

カセットが小さい。ソニーの社員手帳(
文庫本)サイズ[3]

テープとヘッドの相対速度が大きく、画質面で有利(VHSの5.8m/sに対し、βI:6.973 m/s、βII:6.993 m/s)。

初期の機種でも特殊再生が行えた。

テープがデッキに挿入されている間は常にメカにローディングされている「フルローディング」が基本である。このため早送り・巻き戻し動作と再生動作の切替が俊敏であり、操作性に優れていた。また、テープの情報が常にヘッドから読み取れるため、テープカウンターを秒単位で時間表示する「リニアタイムカウンター」も搭載できた。これに対してVHSは、再生時だけテープをローディングする「パートタイムローディング」が基本であった[注釈 2]

常用の標準画質録画(βIIモード)において、L-830テープで200分録画できた。

VHSの最長テープは長年T-160(標準モードで160分)だったため、β最末期に至るまで残された数少ないアドバンテージのひとつだった。ソニーのベータ撤退から更に下り、VHS自身も終焉の見え始めた頃になってT-210が発売され、ようやく覆された。


長時間録画モード(βIII)の録画時間ではVHS(3倍モード)の方に分があったが、画質ではβIIIの方が遥かに優れていた。

VHSの3倍モードの画質は1987年のS-VHS導入を皮切りとして90年代に様々な技術的改良が行われて実用に耐えるレベルとなっていったが、その頃にはすでにベータは市場から事実上撤退していた。


テープのリーダー(先端・終端)部分はアルミテープになっており、センシングコイルにより先端と終端を検出、自動停止するためセンサーの耐久性に優れ、巻き戻しや早送り時にテープ自体を傷めない構造となっている。なおVHSビデオ規格はリーダー部分が透明になっており、光検出により自動停止する。この光検出手法はテープの作成が安価になる反面、フォトトランジスタの耐久性の問題、カセットハーフの構造自体を変えにくい(ハーフの色や確認窓を変えられない)ためデザイン面で制約が出るなどの欠点があった。ベータテープには当初からグレーや白、藍色などのハーフが存在したが、VHSテープが1990年頃まで黒しか発売されなかったのはこのためである(しかし、後にカラーカセットでも不透明ならば光検出に問題ないことが判明している)。

値段がそれぞれ、60分用テープが4500円で30分用テープが3000円となり、性能的にも優れたものだったが、VHSより部品点数が多く、調整箇所も高い精度を要求される構造により、家電メーカーにとって家庭用ビデオの普及期に廉価機の投入が難しかったという欠点も持ち合わせていた。東芝や三洋電機からは思い切って機能を省いた廉価機も初期から発売されていた。とは言え規格主幹のソニーが性能重視の姿勢で、廉価機の開発が出遅れたこともあって思いの外シェアを伸ばすことができなかった。それゆえに「性能が優れているものが普及するとは限らない例」として、初期のレコードの例[注釈 3]とともによく引き合いに出されることも少なくない。

しかし、ベータ方式を基に策定された放送用規格「ベータカム」は、20年以上に渡り世界の放送業界のデファクトスタンダードとなり、デジタルベータカムHDCAMなど、再生互換性を持つ製品バリエーションを増やしながら2016年3月末まで販売されていた[4][5]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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