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「ベンジン」とは異なります。
ベンゼン
IUPAC名
benzene
別称ベンゾール
シクロヘキサ-1,3,5-トリエン
識別情報
CAS登録番号71-43-2
5.5 °C, 279 K, 42 °F
沸点
80.1 °C, 353 K, 176 °F
水への溶解度1.8 g/L (15 °C) [2][3][4]
粘度0.652 cP (20 °C)
双極子モーメント0 D
危険性
安全データシート(外部リンク)ICSC 0015
GHSピクトグラム
GHSシグナルワード危険(DANGER)
EU分類 F強い可燃性
Carc. Cat. 1
Muta. Cat. 2
T毒性
Xn急性毒性(低毒性)
Xn経口・吸飲による有害性
N水生環境有害性
主な危険性潜在的発がん物質
可燃性
経口摂取での危険性高い
呼吸器への危険性高い
眼への危険性高い
皮膚への危険性高い
NFPA 704330
RフレーズR45 R46 R11 R36/38 R48/23/24/25 R65
SフレーズS53 S45
引火点-11 °C, 262 K
発火点562.22℃ (自然発火の条件下で)
関連する物質
関連物質トルエン
ボラジン
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
ベンゼン(英: benzene)は、分子式 C6H6、分子量 78.11 の最も単純な芳香族炭化水素である。原油に含まれており、石油化学における基礎的化合物の1つである。分野によっては慣用としてドイツ語 (Benzol:ベンツォール) 風にベンゾールと呼ぶことがある。ベンジン(benzine、主として炭素数5 - 10の飽和炭化水素からなる混合物)とはまったく別の物質であるが、英語では異綴の同音異義語である。 構造および性質が類似する4物質、ベンゼン (Benzene)、トルエン (Toluene)、エチルベンゼン (Ethylbenzene)、キシレン (Xylene) の頭文字をとってBTEXと称されることがある。ベンゼン・トルエン・キシレンの3つをBTXとも呼ぶ。 6個の炭素原子が平面上に亀の甲(六角形)状に配置し、各炭素はsp2混成軌道をとっている。炭素原子間の結合距離は1.397 Åであり、C?C間の1.534 ÅとC=C間の1.337 Åの中間である。これは、全ての炭素同士の結合が等価になっていることを意味する。ケクレ構造式では交代する二重結合と単結合で表されているが、実際にはσ電子とπ電子が非局在化しているため、π電子は特定の結合に寄与していない。非局在化した電子は環の上下に環状のπ電子雲を形成する。ベンゼンが対称な構造をもつことは、この分子のσ電子とπ電子の相互作用による。よって、ベンゼンは平面構造を取る。非局在化していることを強調するためにベンゼン環を六角形の中に丸を書いた形(構造式右図)で表示することがある。 π電子が非局在化すると、単なる二重結合・単結合の並びに比べて安定性が高くなる。このようにπ電子を非局在化した環状炭化水素のうち、π電子が (4n+2) 個(6個、10個、14個、……)あるものはすべてのπ電子が結合性軌道に入るため特に安定性が高くなる。ベンゼン環を含む、このような安定した化合物を芳香族化合物と呼ぶ。 ベンゼン環はベンゼン核とも呼ばれるが、現在ではあまり一般的ではない。置換基となる場合はフェニル基 (phenyl group) と呼ばれる。 フェニル基の暗号としてはPhが用いられる。芳香族炭化水素の置換基はアリール基と呼ばれ、フェニル基はナフチル基と同様にアリール基に属する。 構造式の見かけ上ベンゼンは二重結合を持つが、アルケンと異なり付加反応よりも置換反応の方が起こりやすい。
化学的性質
ベンゼン環ベンゼン環の模式図試薬瓶に入ったベンゼン
反応
置換反応 - ハロゲン化(フッ素化、塩素化、臭素化、ヨウ素化。生成物の例: クロロベンゼン、ブロモベンゼン)、スルホン化(ベンゼンスルホン酸)、ニトロ化(ニトロベンゼン)、アルキル化、アセチル化
付加反応 - 紫外線を当てながら塩素 (Cl2) と反応させると、ベンゼンヘキサクロリド(略称 BHC、1,2,3,4,5,6-ヘキサクロロシクロヘキサン)が生成。