確率論や統計学において、ベルヌーイ試行(ベルヌーイしこう、英語: Bernoulli trial)または二項試行(にこうしこう、英語: binomial trial)とは、取り得る結果が「成功」「失敗」の2つのみであり、各試行において成功の確率が同じであるランダム試行である[1]。この名前は、17世紀のスイスの数学者であるヤコブ・ベルヌーイにちなんで名付けられた。ベルヌーイは、1713年の著書『推測法(英語版)』(Ars Conjectandi)でこの試行を分析した[2]。
ベルヌーイ試行の数学的形式化をベルヌーイ過程という。本項目ではベルヌーイ試行の基本的な概念を説明する。より高度な処理についてはベルヌーイ過程を参照のこと。
ベルヌーイ試行の結果は2つしかないため、以下のような「はい」か「いいえ」かで答えられる質問として組み立てることができる。
切ったトランプの山の一番上のカードはエースであるか?
サイコロを振ったときの出目は6であるか?
すなわち、結果の「成功」「失敗」とは単なるラベルであり、文字通りの意味として解釈されるべきではない。この場合の「成功」という用語は、道徳的な判断ではなく、結果が指定された条件に合致するかどうかを意味する。
より一般的には、特定の事象(結果の集合)についての任意の確率空間が与えられたとき、その事象が発生したかどうか(事象または余事象)に対応するベルヌーイ試行を定義できる。ベルヌーイ定義の例として、以下のものが挙げられる。 取り得る結果が正確に2つである試行を繰り返し実施し、各試行が独立している場合、この試行をベルヌーイ試行という。結果のうちの1つを「成功」、それ以外の結果を「失敗」と呼ぶ。ここで、1回のベルヌーイ試行で成功する確率を p {\displaystyle p} 、失敗する確率を q {\displaystyle q} とする。このとき、失敗は成功の余事象であるため、成功の確率と失敗の確率を合計すると1になる。「成功」と「失敗」は相互排他的
コイントスをし、表が出たときを「成功」、裏が出たときを「失敗」とした場合。公正なコインを使用した場合、成功の確率は1/2である。この例の場合、取り得る結果は表・裏の2通りしかない。
サイコロを振って、出た目が6のときを「成功」、それ以外の目が出たときを「失敗」とした場合。公正なサイコロを使用した場合、成功の確率は1/6である。この例の場合、取り得る結果は6通りで、「成功」の事象(6が出る)は1通り、余事象(6以外が出る)は5通りである。
世論調査を実施する際に、有権者をランダムに選択して、その有権者が今後の国民投票で「はい」と投票するかを確認する場合。
定義
これらはオッズの観点で記述することもできる。成功の確率 p と失敗の確率 q を与えたとき、成功のオッズ o f {\displaystyle o_{f}} (odds for)は p : q {\displaystyle p:q} 、失敗のオッズ o a {\displaystyle o_{a}} (odds against)は q : p {\displaystyle q:p} である。次式のようにこれを割り算と解釈すると、数値として表現できる。 o f = p / q = p / ( 1 − p ) = ( 1 − q ) / q o a = q / p = ( 1 − p ) / p = q / ( 1 − q ) {\displaystyle {\begin{aligned}o_{f}&=p/q=p/(1-p)=(1-q)/q\\o_{a}&=q/p=(1-p)/p=q/(1-q)\end{aligned}}}
これらは互いに逆数であり、掛けると1になる。 o f = 1 / o a , o a = 1 / o f , o f ⋅ o a = 1 {\displaystyle o_{f}=1/o_{a},\quad o_{a}=1/o_{f},\quad o_{f}\cdot o_{a}=1}