ベクトル空間
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数学、特に線型代数学におけるベクトル空間(ベクトルくうかん、: vector space)、または、線型空間(せんけいくうかん、: linear space)は、ベクトル(: vector)と呼ばれる元からなる集まりの成す数学的構造である。

ベクトルには和(wikidata)が定義され、またスカラーと呼ばれる数による(スカラー乗法)を行える。スカラーは実数とすることも多いが、複素数有理数あるいは一般の可換体の元によるスカラー乗法を持つベクトル空間もある。ベクトルの和とスカラー乗法の演算は、「ベクトル空間の公理」と呼ばれる特定の条件(#定義節を参照)を満足するものでなければならない。ベクトル空間の一つの例は、のような物理量を表現するのに用いられる空間ベクトルの全体である(同じ種類の任意の二つの力は、加え合わせて力の合成と呼ばれる第三の力のベクトルを与える。また、力のベクトルを実数倍したものはまた別の力のベクトルを表す)。同じ調子で、平面や空間での変位を表すベクトルの全体もやはりベクトル空間を成す。

ベクトル空間は線型代数学における主題であり、ベクトル空間はその次元(大雑把にいえばその空間の独立な方向の数を決めるもの)によって特徴づけられる。ベクトル空間は、さらにノルム内積などの追加の構造を持つこともあり、そのようなベクトル空間は解析学において主に関数をベクトルとする無限次元の関数空間の形で自然に生じてくる。解析学的な問題では、ベクトルのが与えられたベクトルに収束するか否かを決定することもできなければならないが、これはベクトル空傍間に追加の構造を考えることで実現される。そのような空間のほとんどは適当な位相空間を備えており、それによって近傍連続といったことを考えることができる。こういた線型位相空間、特にバナッハ空間ヒルベルト空間については、豊かな理論が存在する。

歴史的な視点では、ベクトル空間の概念の萌芽は17世紀の解析幾何学行列線型方程式系の理論、ベクトルの概念などにまで遡れる。現代的な、より抽象的な取扱いが初めて定式化されるのは、19世紀後半、ペアノによるもので、それはユークリッド空間よりも一般の対象が範疇に含まれるものであったが、理論の大半は(直線平面あるいはそれらの高次元での対応物といったような)古典的な幾何学的概念を拡張することに割かれていた。

今日では、ベクトル空間は数学のみならず科学工学においても広く応用される。ベクトル空間は線型方程式系を扱うための適当な概念であり、例えば画像圧縮ルーチンで使われるフーリエ級数のための枠組みを提示したり、あるいは偏微分方程式の解法に用いることのできる環境を提供する。さらには、テンソルのような幾何学的および物理学的な対象を、抽象的に座標に依らない (: coordinate-free) で扱う方法を与えてくれるので、そこからさらに線型化の手法を用いて、多様体の局所的性質を説明することもできるようになる。

ベクトル空間の概念は様々な方法で一般化され、幾何学や抽象代数学のより進んだ概念が導かれる。
導入

ベクトル空間の概念について、特定の二つの場合を例にとって簡単に内容を説明する。
平面上の有向線分

ベクトル空間の簡単な例は、一つの平面上の固定した点を始点とする矢印(有向線分)全ての成す集合で与えられる。これは物理学で速度などを記述するのにもつかわれる。そのような有向線分 v と w が与えられたとき、その二つの有向線分が張る平行四辺形にはその対角線にもう一つ、原点を始点とする有向線分が含まれる。この新しい有向線分を、二つの有向線分の和 v + w と呼ぶ。もう一つの演算は有向線分を伸び縮み(スケール因子)させるもので、任意の正の実数 a が与えられたとき、v と向きは同じで長さだけを a の分だけ拡大 (: dilate) または縮小 (: shrink) した有向線分を、v の a-倍 av と言う。a が負のときは av を今度は逆方向に伸び縮みさせることで同様に定める。

いくつか実際に図示すれば、例えば a = 2 のとき、得られるベクトル aw は w と同方向で長さが w の二倍のベクトル (下図、右の赤) であり、この 2w は和 w + w とも等しい。さらに (−1)v = −v は v と同じ長さで向きだけが v と逆になる (下図、右の青)。



数の順序対

もう一つ重要な例は、実数 x, y の対によって与えられる(x と y の対は並べる順番が重要であり、そのような対を順序対という)。この対を (x, y) と書く。そのような対ふたつの和および実数倍は(x1, y1) + (x2, y2) = (x1 + x2, y1 + y2)

および a (x, y) = (ax, ay)

で定義される。
定義

集合 V が、その上の二項演算 + と、体 F の V への作用 ? をもち、これらが任意の u, v, w ∈ V; a, b ∈ F[nb 1]に関して次の公理系を満たすとき、三組 (V, +, ?) は「 F 上のベクトル空間」と定義される[1][2]

公理条件
加法の結合律 u + ( v + w ) = ( u + v ) + w {\displaystyle {\boldsymbol {u}}+({\boldsymbol {v}}+{\boldsymbol {w}})=({\boldsymbol {u}}+{\boldsymbol {v}})+{\boldsymbol {w}}}


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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