ヘンリー・セルマー・パリ
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ヘンリー・セルマー・パリ(: Henri Selmer Paris、アンリ・セルメール・パリ)は、フランス楽器メーカー。アンリ・セルメール(Henri Selmer, 1858年生)が1885年に創業した。フランスの企業であるが、日本ではもっぱら英語読みの「ヘンリー・セルマー・パリ」、またその略称「セルマー」の名で知られている。サクソフォーンクラリネットオーボエ(製造終了)、ファゴットトランペット2002年セルマーUSAでの製造終了、2011年に完全に製造終了)、トロンボーン(製造終了)、ギター1952年製造終了)などを製造、販売し、特にサクソフォーンの評価は世界的に高い。
目次

1 歴史

2 セルマーの楽器

2.1 サクソフォーン

2.1.1 1900年代

2.1.2 2000年代

2.1.3 管体仕上げ


2.2 サクソフォーンマウスピース

2.2.1 生産終了品

2.2.2 現行品

2.2.3 マウスピースのオープニングとリガチャー


2.3 サクソフォーンリード

2.4 クラリネット

2.5 ファゴット


3 かつて製造していた楽器

4 脚注

5 関連項目

6 外部リンク

歴史

1885年、フランスのクラリネット奏者であったアンリ・セルメール(ヘンリ・セルマー)は、クラリネットのマウスピースリードの製作を始め、パリに店を開いた。1898年からクラリネットを作り始め、著名なアーティストたちから評価を得た。同年、アンリの弟でボストン交響楽団などでクラリネット奏者をしていたアレクサンダー(フランス名はアレクサンドル)が、兄の楽器などをアメリカで販売するためニューヨークに店を開き、1904年にセルマーUSA(Selmer USA、後にセルマー・カンパニー、セルマー・インダストリーズを経て現在のスタインウェイ・ミュージカル・インスツルメンツ及びコーン・セルマー)を設立した。1921年12月31日に、セルマー・パリ初のサクソフォーンを完成させた。1929年にサクソフォーン生みの親であるアドルフ・サックスの工房を買収する。現在もセルメール(セルマー)家が経営している。
セルマーの楽器
サクソフォーン
1900年代
モデル22
1921完成後、1922年より発売開始。ロット番号44++位まで。
モデル26
ロット番号44++?119++位 1926年発売
シガー・カッター (Cigar Cutter)
ロット番号119++?185++位 1930年発売オクターブキーのメカニズム構造が、紙巻タバコを切るシガーカッターに似ているのでその名前がつけられているモデル。このモデルより他社と異なる設計を採用し、独自の音質を実現。
ラジオインプルーブド (Radio Improved)
ロット番号18+++?21+++位 1934年発売シガーカッターのマイナーチェンジ。管体の厚みがより薄くなっている。今でも現役で使われている。
バランスド・アクション (Balanced Action)
ロット番号19+++?35+++ 1936年?47年セルマーが世界的に有名になるきっかけとなった。テーブルキーなどの配置を見直し、操作性が大幅に向上。若干数ではあるがアメセルも存在。略称でB.Aと表記される事もある。
スーパー・アクション (Super Action 通称:スーパー・バランスド・アクション)
ロット番号35+++?558++ 1947年?53年バランスドアクションで好評だったテーブルキーなどを更に改良。ここで初めてインラインから現在の主流であるオフセットに変更された。音量こそ低いものの、キー配置の変更により構造をより薄く出来るようになり、音質が飛躍的に向上。アメリカでノックダウン方式により本格的にアメセルも発売開始。50年以上経過した現在でも、マーク6と同じく非常に人気が高い。後述するSA80が発売された事により、本来のスーパー・アクションという名称が、現在では通称でS.B.A(スーパー・バランスド・アクション)と呼ばれている。
マーク6 (Mark VI)
ロット番号558++?23++++ 1954年?74年セルマー社を世界のトップサクソフォーンメーカーに押し上げた歴史的モデル。アドバイザーの
マルセル・ミュールの意見が強く反映されている。当時のプロ奏者がこぞって使用し、セルマーそしてマーク6の名声を不動の物にした。アルト、テナーサックスのメカニズムはこのモデルでほぼ完成形となる。主な改良点は、オクターブキーや、左手小指テーブルキーのシーソー機構等である。ソプラニーノからバスまでのフルラインナップが販売される。アルトとテナーは20年間にもわたり製造された。ソプラノとバリトンはシリーズ1で、ソプラニーノとバスに至ってはシリーズ2でモデルチェンジするまでマーク6が引き続き製造された。長期間の製造に伴いマイナーチェンジが随時行われており、製造時期によって楽器の特性が異なっている。アメリカで組み立てられた個体、いわゆるアメセルは現在でも高い人気を誇る。すでに発売から50年以上経過しているが、アメセルもフランス製も、ハンドメイドであったという点も併せて高い品質を誇る。
マーク7 (Mark VII)
ロット番号22++++?31++++ 1974年?80年工場製手工業で製造された最後のモデル。開発アドバイザーはミュールの後任のMichel Nouaux。最初期を除いて工場ラインでの生産に移行した。アルトとテナーが存在する。コンサートや、電気楽器に囲まれた中での使用を想定した音量の増大と競争力のある価格設定のためのコストダウンが為された。具体的に管体の重量増加、テーブルキーの拡大などと同時に、細かい部分の仕上げの簡素化が行われている。
スーパー・アクション80(Super Action 80 通称:シリーズ1)
ロット番号31++++?39++++ 1981年?85年日本製サクソフォーンに対抗する為に、当時は不評だったマーク7の後継機種として登場したモデル。シリーズ1ならではの音程、音量、音色にファンは多い。彫刻もU字管まで丁寧に施されている。SA80の登場で、1947年から製造されたスーパー・アクションが通称スーパー・バランスド・アクションと呼ばれるようになった。またSA80はシリーズ2と続くことから、SA80自体がシリーズ1と呼ばれるようになった。シリーズ1は4年間しか販売されなかった短命モデルである。価格面での対抗を踏まえ、この頃より上級者モデルとしてリファレンスを製造し始める。
リファレンス (Reference)
マーク7の生産終了後、アメセルの生産ラインを廃止し、代わりに上級者やプロ奏者向けのモデルとして製造を開始。SA80シリーズ1以降、初心者から上級者まで幅広い顧客獲得を狙ったが、上級者にはあまり受け入れられなかった為に、価格と引き換えに音質を追求して製造された。本来真鍮の管体を純銀を使用して製造されたスターリングシルバー、メッキをプラチナで塗装したゴールドプレート、プラチナプレートなども特別モデルとしてラインナップされた。
スーパー・アクション80 シリーズ2 (Super Action 80 SerieII)
ロット番号39++++? 1986年?現行モデル。シリーズ2の初期モデル(ロット番号42++++位まで)は、シリーズ1と比較するとフロントF#キーとHigh F#キーの形状変更、緩み防止スクリューの使用以外は殆ど変更点が見られず、シリーズ1とシリーズ2の初期モデルは同じ楽器と言って良い。当時はコスト面で苦しんでいたシリーズ1の値上げをする為に発売されたと言われていた。しかし、その後は大量生産をする為のマイナーチェンジを繰り返して現在に至っており、現行モデルは、管体を含めてシリーズ2の初期モデルとは名前は同じでも全く別物であると言って良い。なおソプラニーノとバスはマーク6以来の新設計であり、シリーズ2はマーク6以来のフルレンジのラインナップとなる。現行モデルは、ネックなどの部分がより初心者でも吹きやすいように改良してある。発売以来20年以上経った現在でも販売され続けているシリーズ2は、マーク6よりも製品寿命は長く、製造本数も圧倒的に多い。ラッカー・メッキなどの表面仕上げも様々なバリエーションがある。2014年に廉価シリーズヴァルールの名を冠したSA80IIヴァルール2が発表された。アルトのみ。管体とキーはブラッシュドサテン、ベル内部とキーガード、管体接続リングがゴールドメッキという仕様。通常のジュビリーよりもやや安価となっている。
シリーズ3 (Serie III)
ロット番号51++++? 1995年?現行モデル。シリーズ2の後継機種として現代の製造技術を駆使して新設計された。名称から80年代のスーパーアクションという意のSuper Action 80が外れる。主な変更点は、メカニズム、部品点数の簡素化、管体の材質変更、軽量化等である。1995年にソプラノ、1997年にテナー、1999年にアルト、そして2006年にバリトンが発表されており、設計時期が異なるため同じシリーズ3といえどもキー、メカデザインが異なる箇所がいくつかある。ソプラノはこのモデルよりデタッチャブルネックが採用された。アルトはC#の音程補正のメカが備わる他、意図的に節を作り出しフラジオ音域の発音を補助するハーモニクスキーのオプションがある。シリーズ2からの仕上げに加え、スターリングシルバー製のモデルも発売されている。管体が薄く、様々な点で軽量化が施された。従来からのニーズに応えるため、ベストセラーであるシリーズ2は引き続き製造が続けられている。2000年には、アルトで銀メッキサテン仕上げ・スターリングシルバー製のネックを持つミレニアムモデルが474本[1]限定で販売された。


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