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ヘムa
ヘム(英語: haem、米語: heme 英語: [?hi?m], [?h?m]、ドイツ語: Ham)は、2価の鉄原子とポルフィリンから成る錯体である。通常、2価の鉄とプロトポルフィリンIXからなるプロトヘムであるフェロヘムのことをさすことが多い。ヘモグロビン、ミオグロビン、ミトコンドリアの電子伝達系(シトクロム)、薬物代謝酵素(P450)、カタラーゼ、一酸化窒素合成酵素、ペルオキシダーゼなどのヘムタンパク質の補欠分子族として構成する。ヘモグロビンは、ヘムとグロビンから成る。ヘムの鉄原子が酸素分子と結合することで、ヘモグロビンは酸素を運搬している。
フェリヘムやヘモクロム、ヘミンなど、その他のポルフィリンの鉄錯体もヘムと総称されることもある。
なお、「ヘム」という名称の由来は、古代ギリシア語の α?μα(haima「血」)である。 ヘムは以下のように8段階の反応によって生合成される。 ポルフィリンとヘムの生合成の律速酵素は、グリシンとスクシニルCoAがδ-アミノレブリン酸へ縮合することを媒介するアミノレブリン酸シンターゼ(アミノレブリン酸合成酵素)(Aminolevulinic acid synthase)(EC 2.3.1.37 ミトコンドリアから細胞質に移行したδ-アミノレブリン酸2分子が細胞質に所在するアミノレブリン酸脱水酵素によって脱水縮合されると、ピロール環構造を持つポルフォビリノーゲン(PBG)となる。 δ-アミノレブリン酸2分子 ポルフォビリノーゲン(PBG) 細胞質においてポルフォビリノーゲン4分子がポルフォビリノーゲン脱アミノ酵素(別名:ヒドロキシメチルビラン合成酵素)によってアンモニアを脱離して結合すると、ピロールが4つ直線状に連結した構造をもつヒドロキシメチルビランが出来る。 4 + H2O ⇒ + 4 NH3 ポルフォビリノーゲン ヒドロキシメチルビラン ヘム合成回路において細胞質においてヒドロキシメチルビランがウロポルフィリノーゲンIIIシンターゼによって縮合し、環を巻くとウロポルフィリノーゲンIIIとなる。この際、ウロポルフィリノーゲンIIIシンターゼの働きにより4つのピロール環が整然と並んだヒドロキシメチルビランの一端のピロール環一つだけが反転して縮合し環を形成する。ウロポルフィリノーゲンIIIシンターゼが働かない場合、ピロール環が整然と並んだままのヒドロキシメチルビランが自発的に縮環してウロポルフィリノーゲンI が生成する。ウロポルフィリノーゲンI はウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素の基質となりコプロポルフィリノーゲンIへと変換されるが、これはコプロポルフィリノーゲン酸化酵素の基質とならないため、プロトポルフィリンには至らない[2]。このようにウロポルフィリノーゲンI やコプロポルフィリノーゲンIが蓄積していくことがポルフィリン症の原因の1つとなりうる。 ⇒ ヒドロキシメチルビラン ウロポルフィリノーゲンIII ウロポルフィリノーゲンI 細胞質においてウロポルフィリノーゲンIIIが、ウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素によって4つの酢酸基が脱炭酸されてメチル基となったものがコプロポルフィリノーゲンIIIである。 ---> + 4 CO2ウロポルフィリノーゲンIII コプロポルフィリノーゲンIII さらに、細胞質に所在したコプロポルフィリノーゲンIIIがミトコンドリア内に移行し、コプロポルフィリノーゲン酸化酵素によって2箇所のプロピオン酸基が酸化され、ビニル基に変換されるとプロトポルフィリノーゲンIX となる[1]。 ---> コプロポルフィリノーゲンIII プロトポルフィリノーゲンIX 最終的にプロトポルフィリノーゲン酸化酵素によって酸化されると、共役したポルフィリン環が形成され、プロトポルフィリンIX ができあがる。 ---> プロトポルフィリノーゲンIX プロトポルフィリンIX 鉄付加酵素によりプロトポルフィリンIXに鉄が配位したものがヘムである。この反応はミトコンドリア内で進む。ミトコンドリア内で生成されたヘムは細胞質に出て対応するアポタンパク質と結合してヘムタンパク質となる[1]。 + Fe2+ ⇔ + 2H+ プロトポルフィリンIX ヘム
生合成
第1段階アミノレブリン酸合成
第2段階
第3段階
第4段階
第5段階
第6段階
第7段階
第8段階
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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