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前照灯(ぜんしょうとう)とは、輸送機械の前部やヘルメットなどに搭載・装着し、操縦者の視認性と外部からの被視認性を向上させるために使われる照明装置。ヘッドランプ (headlamp)、ヘッドライト (headlight) ともいう。なお当記事ではヘッドライトとしても表記する。 輸送機械では主な進行方向に透明のレンズや反射板を持つ光源が付けられていることが一般的で、目的によってはレンズや光源に様々な色を発色するようにされている。用途としては自動車、鉄道車両、自転車など地上の車両の他、航空機、船舶にも装備される。 主な構造は光源、レンズ、反射鏡などの構成部品からなる[1]。広義には電源ユニットや首振り機構まで含んで呼称する場合が多い。霧や雨天時には黄色の方が遠くに届くため、補助灯として黄色系の光源が搭載されることがある。 なお、ヘルメットや帽子など頭部に装着するものもヘッドランプという。リング状にした平紐やゴム紐のベルトで頭部に直接巻きつけるか、固定具で装着して使用する。帽子のつばにクリップ状に装着して使用するものもある。身体の一部に固定して使用することにより両手が自由になるため、暗所での作業だけでなく、登山や釣りなどのアウトドアレジャーのほか、潜水にも使用される。電源や光源は様々な種類があり、現在では充電式で、光源には発光ダイオード (LED) を使用したものが普及している。かつては交換式の乾電池や電球を光源とした製品が一般的だった。多くの製品は屋外で使用されることが多いため、防水、防塵、耐熱、耐腐食性などの対候性が求められる機器がほとんどである。 自動車でヘッドランプと呼称されるのは、夜間等で主に使用する前照灯のことを指すが、「前灯」と言った場合には車幅灯やフォグランプも含む。自動車・オートバイ(自動二輪車、原動機付自転車)用の場合、ほとんどの国・地域で、搭載する数、色、照度、照射範囲などが厳しく法令で定められている。特に赤系の発色は尾灯と誤認させるために禁止されている。日本国内では保安基準にて特に細かく制限があり、上下位置、左右位置、個数、照度、色(K:ケルビン = 色温度)、左右均等、レンズ破損、点灯方法(動いたりしないか)などが定められている[注 1]。近年では2020年4月以降に日本国内で製造された自動車にはオートライトが義務化された。 通常、ハイビーム「走行用前照灯」(上向き(正確には水平)・遠目)とロービーム「すれ違い用前照灯」(下向き又は減光・すれ違いビーム)を切り替えることができる。ハイビームは正面を遠く(最低前方100 m)まで照らすため、夜間の対向車や前方の車が存在しない場合に用い、ロービームはやや下方(前方40 m)を照らすため、対向車や前方の車への眩惑防止や、霧や雪などに光が反射する場合、薄暮時に使用する。 自動車用ランプに関しては1958年協定に基づき国連でECE規則が策定されており加盟国間では認証の相互承認制度が導入されている[1]。 国際連合の欧州経済委員会 (UNECE) による自動車基準調和世界フォーラム(World Forum for Harmonization of Vehicle Regulations
機能と構造
進行方向の状況を可視化するため(視認性)と、周囲に自身の存在や状況を知らせる(被視認性)目的で設置される。前方を照射していても、装飾目的のものはヘッドライトとは呼称されない場合が多い。また、作業者が手に持って前方を照らすライトも目的は同様であるものの、ヘッドライトとは呼ばれない。
自動車CIBIE製ダブルリフレクター式ヘッドランプに交換されたトヨタ・カローラレビン・TE27型
通常の反射鏡でハイビーム用となる範囲の前側にドライビングランプ用反射鏡が備わっている多数のLEDを配置した例(アキュラ・RLXのジュエルアイLEDヘッドランプ)前照灯にトールハンマーをモチーフとしたデイタイムランニングランプ兼ターンランプを組み込んだボルボ・XC90
追加の補助灯としてフォグランプが一般的だがドライビングランプ、スポットランプ、コーナリングランプ等も存在する。
また、前照灯と区別するために、車内だとしても前方から見える位置に光源を設置することは禁止されている。ラリーなどの競技用車両が装備している追加の前照灯も、公道で点灯して運転すると法令違反となる。
車幅灯についてはメーカーや時代によって様々な呼称があり、クリアランスランプ、フロントコーナーマーカーランプ、スモールランプ、ポジションランプなどがある。ヘッドランプユニットの内部に設置され、ヘッドライト点灯中は光っていても見えなくなるものもある。 自動車初期の前照灯は、石油やアセチレンガスを燃料として使用しており、アセチレンランプが主に使用された。1908年に発売されたフォード・モデルTでもアセチレンまたは石油ランプが採用されていた。電灯を利用した前照灯は1898年のElectric Vehicle Companyによるコロンビア電気自動車にオプション設定されていた。しかしながら、当初の電気式前照灯はフィラメントの寿命の短さや、十分な電流を供給できる小型のダイナモの生産が困難なこともあり、すぐには普及しなかった[2][3]。1912年にキャデラックが、デルコ・エレクトロニクスのバッテリー式点火装置と電気式照明装置を統合した。1915年にはロービーム機能を持つ前照灯が登場したが、外から操作しなければならず、車の中から操作できるタイプは1917年にキャデラックが初搭載した。1924年に登場したBilux bulbにより1つのバルブでハイとローが切り替えられるようになった。1927年には足で操作するタイプのディマースイッチが登場し、標準となっていった。 北米では1984年までSAE規格のシールドビーム型前照灯が義務付けられていた。丸形・角形のそれぞれに2灯式・4灯式があるものの、自動車のデザインに制約を与えるものであった。これは、バルブ、反射鏡、レンズが一体(非分解式)となったガラス製の灯体で、どの地方のガソリンスタンドに行っても交換しやすいよう規格を絞り込んだためとされる[4]。
歴史
その後、LEDのハイビームライトに比べ照射距離約2倍、光度約3倍の性能を持つレーザーヘッドライトが開発され、2014年にはアウディが米国・ラスベガスのCESにコンセプトカーを出展[5]、更にル・マン24時間レース向けのAudi R18 e-tron クワトロ[6]や市販車のBMW・i8[7]に搭載されている。