ヘッダ・ガブラー
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ヘッダ・ガーブレル
ヘッダに扮したアラ・ナジモヴァのポスター (1907)
脚本ヘンリク・イプセン
初演日1891
初演場所ドイツミュンヘン、レジデンツ劇場
オリジナル言語デンマーク・ノルウェー語 (リクスモール、のちのブークモール)[1][2]
主題結婚したばかりの若い女性が、刺激も魅力もなく思える暮らしと向き合い、もがき苦しむ様子を描く。
ジャンルドラマ
舞台設定ノルウェーのクリスティアニアにあるテスマン家、1890年代

『ヘッダ・ガーブレル』(Hedda Gabler, ノルウェー語発音: [2h?d?? ????bl?r]) はノルウェーの劇作家ヘンリク・イプセンによる戯曲である。1891年1月31日、ミュンヘンのレジデンツ劇場で劇作家も出席して世界初演が行われた[3][4]リアリズム演劇の古典であり、19世紀演劇の代表作、世界文学の傑作として評価されている[5][6][7]。タイトルロールであるヘッダはしばしば「女ハムレット[8][9]」と呼ばれ、演劇史上における最も偉大な役柄のひとつとみなされている[10]。日本語では『ヘッダ・ガブラー』と表記されることもある[11]

ヘッダは結婚してヘッダ・テスマンを名乗るようになっているので、ガーブレルは旧姓である。タイトルについて、イプセンは「夫の妻であるよりは、むしろ、父親の娘[12]」としてヘッダの人格を提示したかったということを述べている。
登場人物

ヘッダ・テスマン (旧姓ガーブレル) ? 主人公。ガーブレル将軍の娘で、テスマンと結婚したばかりである。結婚生活にも人生にも飽きており、初めて他人の運命に影響を及ぼすということを試みようとしている。

イェルゲン・テスマン ? ヘッダの夫。学者で、関心事は研究、旅行、妻である。かつてヘッダの愛をめぐってエイレルトとライバル関係にあったが、エイレルトが訪ねてくると快く優しく迎え、酔っ払って人事不省に陥ったエイレルトがなくした原稿を取り戻せるよう、精一杯取りはからう。

ユリアーネ・テスマン ? テスマンを小さい頃から育て、とても大事に思っているおば。劇中ではユッレおばさんと呼ばれることもある。初期の草稿ではイプセンはユリアーネをマリアーネ・リシングと名づけているが、これは明らかに自身のおば(父親と片親が違う妹)で名付け親であるマリアーネ・パウスからとったものである。マリアーネは父と一緒に
シェーエンの近くにあるリシングの大農場で育った。名前はユリアーネ・テスマンに変更されたが、キャラクター自体はマリアーネがモデルになっている[13]

テア・エルヴステード ? ヘッダの学校の下級生で、イェルゲンの旧友。臆病で内気なところがあり、不幸な結婚をしている。

ブラック判事 ? 一家の友人。遠慮のない性格。

エイレルト・レェーヴボルク ? イェルゲンの以前の同僚。今は出版業績をあげて大学の教員のポストを得ることをめざしており、イェルゲンのライバルである。かつてヘッダを愛していた。

ベルテ ? テスマン家の使用人。

あらすじ1890年に著者が記した『ヘッダ・ガーブレル』手稿の表紙

上流階級の出身で謎めいた人物であった故ガーブレル将軍の娘であるヘッダは、新婚旅行を終えてクリスチャニア(現在のオスロ)にある屋敷に戻ってきたところである。夫のイェルゲン・テスマンは若くて上昇志向もあり、信頼できるが才気煥発というわけではない学者で、ハネムーン中も研究を続けていた。芝居が進むにつれて、ヘッダは一度もイェルゲンを愛したことはなく、もう若く奔放に暮らせる日々が終わったと思ったために結婚しただけだということが明らかになってくる。ヘッダが妊娠しているかもしれないという可能性についても劇中で何度か言及がある。

イェルゲンの研究上のライバルであるエイレルト・レェーヴボルクが再び現れたことにより、テスマン家の暮らしがかき乱される。著述家のエイレルトは今までアルコール依存症のせいで才能を無駄にしていた。しかしながら、ヘッダの学校時代の旧友で、エイレルトのために夫を捨てたテア・エルヴステードとの新しい絆のおかげで、エイレルトは回復の兆しを見せ、イェルゲンと同じ分野でベストセラーを出したばかりだった。ヘッダとエイレルトは2人で内密に話しあい、かつて恋人同士だったことが観客に開示される。

最新作が非常によい批評を得たおかげで、エイレルトはイェルゲンがあてにしていた大学の教授職を争うライバルとなり、イェルゲンには不安の種となる。イェルゲンとヘッダは経済的に無理をしており、イェルゲンはヘッダが期待していたような、普段からお客を招いてもてなす贅沢な暮らしはできなくなるかもしれないと告げる。しかしながら夫妻はエイレルトに会って、エイレルトには教授職を必死に争うようなつもりはあまりなく、最新作の「続編」となる新たな傑作を書くことのほうに関心があるらしいことを知る。

エイレルトにテアが及ぼす影響に嫉妬したヘッダは、2人の間に割って入ろうとする。エイレルトの飲酒問題を知りながら、イェルゲンと仲間のブラック判事と一緒にパーティに行くようすすめる。イェルゲンはパーティから帰り、エイレルトの新しい傑作の草稿をまるごと拾ってしまったと明かす。他にコピーはなく、エイレルトは後で自分が酔っ払って原稿をなくしたと気付く。イェルゲンは急におばの家に呼ばれ、原稿をヘッダの手元に残していく。エイレルトが次にヘッダとテアに会った時、エイレルトはわざと原稿を破壊したと言う。テアは傷つき、エイレルトと自分の共作だったのにと嘆く。ヘッダは原稿が家にあることを告げず、エイレルトの言うことをそのままにし、テアを安心させてやることもしない。テアが出て行くと、ヘッダはエイレルトに父のものだったピストルを与えて自殺をそそのかす。それからヘッダは原稿を燃やし、イェルゲンに対して2人の将来のため、イェルゲンが教授職を得られるよう原稿を捨てたのだと告げる。

エイレルトが自殺したという知らせが届き、イェルゲンとテアは、テアがとっておいていたエイレルトのノートから著作を再構成しようと試みる。ヘッダはブラック判事から、エイレルトが売春宿でだらしなく、おそらくは偶発的に死んでしまったということを聞いてショックを受ける。これはヘッダがエイレルトに望んでいた「無限の美を持った」死とはあまりにも違う「滑稽で、下卑た」死だった[14]


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