プールサイド小景
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『プールサイド小景』
著者
庄野潤三
言語日本語
分野短編小説
初出の書籍
書籍『群像』1954年12月号
言語日本語
出版社講談社
発行日1954年
その他の書籍
書籍『プールサイド小景』(他収録)
出版社みすず書房
発行日1955年
書籍『プールサイド小景』(他8編)
出版社角川書店角川文庫
発行日1956年
ウィキポータル 文学

『プールサイド小景』(プールサイドしょうけい)は庄野潤三による短編小説。『群像1954年12月号に掲載された。第32回下半期芥川賞受賞作。

日常生活スケッチを通し、小市民のささやかな幸福がいかに脆く崩れやすいものかを描いている。
内容

四日前に会社をクビになった青木弘男が、プール水泳の練習をしている小学5年生・4年生の二人の息子をプールサイドで眺めるところからこの物語は始まる。

青木は会社の金を無断で密かに使い込んだ(青木が会社で貰う俸給の6カ月分)為に、本来ならば家を売却してでも弁償しなければならないところを特別に許されて、その代わり18年勤めてきた会社を即日クビになった。

それからは三日前の夕方から、子供達が仕事の無くなった父を引っ張り出して、学校に新しく出来たプールへ泳ぎに行くことにした。

青木は夫人に問いただされて、美人で素っ気ない姉と不美人でスローモーションな妹が切り盛りするOというバアに、その姉と会うことを目当てに通っていたことを告白する。

更に訊いて行くと、青木が実は、ビクビクしながら会社の椅子に永い間座って来たことを話し、夫人は夫が勤め先に始終苦痛を感じていた為にまっすぐ帰宅しなかったことが分かる。

10日の休暇の後、青木は近所の目を気にして、出勤するかのように毎日出かけることとしたが、夫人は夫がどこか見知らぬアパートの階段をそっと上がる後姿を想像してぞっとする。夕方、夫人は台所に立って働きながら、夫がたとえ失業者になっても無事に帰って来てくれることを何度も心の中で祈り続ける。

プールはひっそり静まり返り、夕風が吹いて、水面に時々細かい小波を走らせている。
登場人物
青木弘男
織物会社の課長代理として働いていたが、バアの女の為に会社の金を横領して即日クビになる。兄弟は3人いて、皆似たり寄ったりのか細い役所や会社勤めの身。学生の頃はバレーボールの選手をしていたことがあり、元々運動好きの性質。
夫人
青木弘男と結婚してから15年間付き添ってきた女性。実家は戦争前には貿易商をして比較的ゆったりした生活をした暮らしをしていたが、戦後はすっかり逼塞してしまっている。
Oというバアを切り盛りする姉妹の姉
青木弘男が密かに心を寄せているバアの女性。顔はフランス映画の女優Mに似ており、現世的な容貌に彼岸的な空気を漂わせている。青木弘男とは一度、有名なアメリカの選手の出る国際水上競技試合を観に行ったことがある。幼年時代は父親と共にハルビンで過ごした経験がある。バアに来る客の殆どは彼女の美貌に惹かれて慕い寄って来ている。
出典

「プールサイド小景・静物」(著:庄野潤三 版:新潮社)











 第32回芥川龍之介賞

 1930年代 - 1950年代(第1回 - 第42回)
1930年代

第1回
石川達三蒼氓

第2回 該当作品なし

第3回 小田嶽夫「城外」/鶴田知也コシャマイン記

第4回 石川淳普賢」/冨澤有爲男「地中海」

第5回 尾崎一雄「暢気眼鏡」他

第6回 火野葦平糞尿譚

第7回 中山義秀「厚物咲」

第8回 中里恒子「乗合馬車」他

第9回 半田義之「鶏騒動」、長谷健「あさくさの子供」

第10回 寒川光太郎「密獵者」

1940年代

第11回 高木卓「歌と門の盾」

第12回 櫻田常久「平賀源内」

第13回 多田裕計「長江デルタ」

第14回 芝木好子「青果の市」

第15回 該当作品なし

第16回 倉光俊夫「連絡員」

第17回 石塚喜久三「纏足の頃」

第18回 東野邊薫「和紙」

第19回 八木義徳「劉廣福」/小尾十三「登攀」

第20回 清水基吉「雁立」

第21回 由起しげ子「本の話」/小谷剛「確証」

第22回 井上靖闘牛」「猟銃

1950年代

第23回 辻亮一異邦人

第24回 該当作品なし

第25回 安部公房壁 S・カルマ氏の犯罪」/石川利光「春の草」他

第26回 堀田善衛「広場の孤独」「漢奸」他

第27回 該当作品なし

第28回 五味康祐「喪神」/松本清張或る『小倉日記』伝

第29回 安岡章太郎「悪い仲間・陰気な愉しみ」

第30回 該当作品なし

第31回 吉行淳之介驟雨」他

第32回 小島信夫アメリカン・スクール」、庄野潤三「プールサイド小景」

第33回 遠藤周作「白い人」

第34回 石原慎太郎太陽の季節

第35回 近藤啓太郎「海人舟」

第36回 該当作品なし

第37回 菊村到「硫黄島」

第38回 開高健裸の王様

第39回 大江健三郎飼育

第40回 該当作品なし

第41回 斯波四郎「山塔」

第42回 該当作品なし


 1960年代 - 1970年代(第43回 - 第82回)
1960年代

第43回
北杜夫夜と霧の隅で

第44回 三浦哲郎忍ぶ川

第45回 該当作品なし

第46回 宇能鴻一郎鯨神

第47回 川村晃「美談の出発」

第48回 該当作品なし

第49回 後藤紀一「少年の橋」/河野多惠子「蟹」

第50回 田辺聖子感傷旅行 センチメンタル・ジャーニィ

第51回 柴田翔されどわれらが日々──

第52回 該当作品なし

第53回 津村節子「玩具」

第54回 高井有一「北の河」

第55回 該当作品なし

第56回 丸山健二「夏の流れ」

第57回 大城立裕「カクテル・パーティー」

第58回 柏原兵三「徳山道助の帰郷」

第59回 丸谷才一「年の残り」/大庭みな子「三匹の蟹」

第60回 該当作品なし

第61回 庄司薫赤頭巾ちゃん気をつけて」/田久保英夫「深い河」

第62回 清岡卓行アカシヤの大連

1970年代

第63回 吉田知子「無明長夜」/古山高麗雄「プレオー8の夜明け」

第64回 古井由吉「杳子」

第65回 該当作品なし

第66回 李恢成「砧をうつ女」/東峰夫「オキナワの少年」

第67回 畑山博「いつか汽笛を鳴らして」/宮原昭夫「誰かが触った」

第68回 山本道子 「ベティさんの庭」/郷静子「れくいえむ」


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