プーカ
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この項目では、ケルト神話の妖精について説明しています。その他の用法については「プーカ (曖昧さ回避)」をご覧ください。

プーカ は、ケルトの神話・伝説に伝わる妖精フェアリー)あるいは妖魔の一種。

アイルランドの伝承のプーカ(アイルランド語: puca, pooka, phouka, puka)もあるが、 ウェールズの伝承でもプーカ(ウェールズ語: pwca, pwwka)という妖精が信仰されてきた。カナ表記は同じでも、これらはいちおう区別される。
同類

コーンウォル語にもこれらに相当するブッカ(英語版)の言い伝えがある。マン島のバゲーン(英語版)(またはボゲードン)も同じ系統である[1]

チャンネル諸島でも、プーク(ガーンジー島方言(フランス語版)・ジャージー島方言(フランス語版): pouque)と呼ばれている。そのため、この地元ではクロムレックのことを pouquelee, pouquelay(e) と呼ぶ風習がある。 ブルターニュ地方では、プールピケ(?) poulpiquet, polpegan と呼ばれる[2][3]
性悪・性善説

プーカは、人間に害をもたらす存在とも、恩恵をもたらす存在とも伝わる。妖精学の大家トマス・カイトリーも、「プーカについての認識はじつにあやふやなものである」[4]としており、多くを語らないが、同志のトマス・クロフトン・クローカーが、キラーニー近くの山に住む少年から採集した、次のような話を紹介している:「年寄りの人は、プーカは昔いっぱいいたもんだ、とよく言っていました。.. プーカは性悪で、見た目が黒く、悪いモノでした。..鎖をまわりに垂れ下げた野生の若い牡馬'の姿でやってくるんです。で、うとい旅人にずいぶん悪さをするんです」[5]

またブラックベリーの季節が終わる頃になると実が傷むのはプーカの仕業であり、子供たちに「熟れ爛れたブラックベリーはもう食べちゃだめよ」[6]と教える風習があったという。[7]

しかし逆にプーカが人間を手助けする伝承もあると、ジェイン・ワイルド(英語版)(オスカー・ワイルドの母親)の著作ではされており、次のような物語が所収される:ある農夫の息子パドリグ(Phadraig。パトリックのアイルランド形)が、ある日、目に見えないプーカが通り過ぎるのを感じ取り、外套(コート)をさしあげたいから、こちらにおいで、と呼びかける。プーカは若い牡牛の姿でやってきて、供物を受け取り、今晩、古びた粉ひき小屋までやって来な、といいつける。そのとき以来、プーカたちが夜中ひそかにやってきて、穀物の袋を置いておくと、いつのまにか粉に挽いておいてくれるようになった。パトリックは、最初の晩は寝てしまい、起きてからプーカの仕業に気が付いのだが、のちに、櫃の中に隠れてプーカの仕事ぶりを目にした。ある日、パトリックは、ぼろをまとうプーカが不憫になって、シルクのスーツをあつらえて置き残してやった。そうすると、思いのほか、プーカはこんな紳士の格好をしたからにゃ、少し世界を見て回らなにゃ、と言って、それ以降、仕事はせずにいなくなってしまった。しかしプーカのおかげでかなりの蓄財をした農夫は楽隠居し、パトリックは学問を修めさせ、めでたく結婚した。その式の日に、ひそかに黄金の杯を置かれてあったが、それがプーカの贈り物と何の疑いもなく飲み干すと、幸福にめぐまれたという[8][9]
プーカの変身

プーカは変身が巧みで、さまざまな恐るべき形態をとると考えられていた。最も多くの場合、流れるようなたてがみと輝く黄の眼を持つ、つやつやとした黒の姿をとったが、他にもの姿になることもあれば、大きな黒山羊の姿を借りることもあった。この名の語源は古アイルランド語 poc(牡山羊)と同じである。
マン島のグラシュティンは、水馬でもあり人間の姿にも扮するという妖魔であり、プーカとの共通点がみられるが、ただし馬の耳を隠すことができないという[10]。スコットランドの水馬ケルピーも人間の姿で現れる[11]。一方、アイルランド伝承の水馬オヒシュキは、もっぱら馬の姿で目撃される。
プーカの魔力

プーカはフェアリーの中でも最も恐ろしいものと考えられている。姿の恐ろしさなどというのは序の口で、恐れられた最大の理由はこのフェアリーの持つ力である。プーカは夜、旅人達を待ち伏せると言われている。もしその背中に放り上げられると、最良の場合でもそれは命をかけた乗馬になる。戻って来た時、旅人達は別の姿に変わっており、二度と元の姿に戻ることはできない。プーカには人間の言葉を話す能力があり、プーカをないがしろにした、あるいは怒らせようとしたと思う相手を家から誘い出し、獲物として背中に乗せると言われている。うまく出現することができない場合は、柵を破る、家畜を切り裂くなどの破壊行為に及ぶ。
プーカと暮らし

伝統的にプーカは農事歴と関係づけられている。プーカはケルトにおける異教的な(←キリスト教からみて。ペイガニズム参照)収穫を感謝する三番目の祭、すなわち作物を収穫し終えたときの祭と結びついている。農場に残ったものはすべて puka (フェアリーによってしおれさせられたもの)と考えられ、だからこそ食べられないのである。土地によっては、飢えたプーカを宥めるために若干の作物を残しておくこともある。ともあれ、11月1日はプーカの日で、その日だけはプーカもおとなしくしていると思われている。

地域によっては、プーカは恐怖より尊敬の対象として扱われている。しかるべく敬意を払えば、出会った人に幸運をもたらすという。プーカは山や丘のフェアリーだが、それらの地域では11月1日になると姿を現し、予言や警告を与えてくれるという。
派生作品

ウィリアム・シェイクスピア作の戯曲夏の夜の夢でも有名なパック(Puck)は、このプーカに由来するとされるが、ウェールズ伝承のものを原型とみる説が有力である[12]

他の多くの強力な神話上の生物と同じく、21世紀になると、プーカも骨抜きの目にあってしまった。今日のメディアの手にかかると、恐るべきプーカも無害で恥ずかしがりで薄ら馬鹿な庭の精になってしまう。 ⇒ゾウムシ食い.

アメリカ合衆国の人々はこの種の腑抜けなプーカにしか親しんでいないらしい。脚本家メアリー・チェイス(英語版)のブロードウェイ舞台作『ハーヴェイ』(1944年。1950年にハリウッドで映画化)では、プーカは目に見えない6フィート3.5インチのウサギの姿をしている[13][14]。プーカは往年の日本製テレビゲーム『ディグダグ(Dig Dug)』のキャラクターでもある。また、妖精ネタのロールプレイングゲームChangeling: The Dreamingのキャラクターにおけるクラスにもなった。
出典
脚注
^ Mackillop 1998, pooka, puca, buggane等の項目
^ Thomas Price (Carnhuanawc) (1830), “A Tour through Brittany” (google), Cambrian quarterly magazine and Celtic repertory 2: 23-43, https://books.google.co.jp/books?id=3KI2AAAAMAAJ&pg=PA23 , p.23-24 "These cromlechs, or kistvaens,.. are called in Jersey poquelays, and in Brittany policans & poulpiquets, &c."
^ Loth, J. (1894), “le Nain de Kerhuiton” (google), Annales de Bretagne 10, https://books.google.co.jp/books?id=r0ZNAAAAMAAJ&pg=PA78 
^ Keightley 1880, Fairy Mythology, p.371,"notions respecting it are very vague,"
^ Keightley 1880, Fairy Mythology, p.371, 、"old people used to say that the Pookas.."
^ ケルトの伝承ではブラックベリーは不吉な果実で、ふれた者すべてに不幸をもたらすものとされていたし、イングランド南部のウェストサセックス州ではかつて10月10日の「聖ミカエル祭」の後にブラックベリーを食べると、年内に食べた当人かその親族が死や災難に見舞われると考えられた。
^ 『ベリーの歴史』株式会社原書房、2020年11月30日、32頁。 
^ Wilde 1887, Ancient Tales, p.48
^ Croker の採集した民承と、Wilde との対比は、 Mackillop 1998 事典,"pooka"の項にある所見。
^ Mackillop 1998,glashtin "could not hide his horse's ears"
^ Mackillop 1998,kelpie"usually thought to be a horse, sometimes human"
^ Mackillop 1998,pooka, "a common speculation links the pooka to the English folk figure Puck, although the Welsh pwca is a more likely Celtic cognate"
^ Mackillop 1998, "The 6′ 3¢ (ママ) invisible rabbit in Mary Chase's Broadway comedy Harvey.."
^ Mary Chase, Harvey (1944) (Goolge)(typescript), "pooka," (passim), "Six feet three and a half inches"(p.2)

参考文献
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