ミルク繊維(ミルクせんい)[注釈 1]は、牛乳に含まれるタンパク質のカゼインを原料としたタンパク繊維
(英語版)(アズロン(英語版))の一種である。イタリアSNIA社の「ラニタル」、日本の東洋紡の「シノン」、イギリスのコートルズ(英語版)社の「フィブロレイン(英語版)[1]」などの商品名がある。動物性タンパク質を原料としているが、ウールや羽毛、絹などと同じ動物繊維ではなく再生繊維の一種に区分される[2]。日本の繊維メーカー東洋紡は、牛乳のタンパクを塩化亜鉛で溶解し[6]、アクリロニトリルをグラフト重合して湿式紡糸したプロミックス繊維「シノン」[注釈 3]を1969年から生産開始した[7]。プロミックスはプロテイン(タンパク質)とアクリル繊維の原料をミックスしていることに由来し[8]、JIS規格では重量割合でタンパク質を30%以上60%未満含む繊維をプロミックスと定めている。1リットルの牛乳からは約60グラムのプロミックス繊維が作られ[8]、短繊維のステープルではなく長繊維のフィラメントとして流通した[6]。
東洋紡では福井県の敦賀事業所に年産1000トンの生産設備を有していたが、2003年秋に生産休止。2004年に事業撤退した[9]。家庭用品品質表示法に基づく繊維製品品質表示規程からは、2017年3月末で繊維名の指定用語が除かれた[10][11] 和装品や、直接肌に触れる肌着・ベビー服、寝具などに用いられた。ウールの代用品として開発されたラニタルに対し、プロミックスは絹の代替として開発されたこともあり、絹に似た光沢と風合いがある[12]。虫害に遭いにくく、絹やポリエステルより軽量で保温性・吸湿性・耐薬品性
特徴
安価な化繊などに押されて一度は衰退したミルク繊維であるが、過剰生産や消費期限切れなどで廃棄される牛乳を再利用でき、製造工程で必要とする水も木綿に比べて少ないことから、2010年代以降はポリエステルなど石油系化学繊維に代わる持続可能性繊維素材として再び着目されている[5][13]。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ ミルクファイバー(英: Milk fiber)、または乳繊維(にゅうせんい)とも。
^ 「Lanital」。イタリア語でウールを意味するLan(a)