プロトタイプ
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この項目では、一般概念としてのプロトタイプについて説明しています。商品名などについては「プロトタイプ (曖昧さ回避)」をご覧ください。

プロトタイプ(: prototype)は、原型[1]。最初の、形にしたもの。それを土台にしてさまざまなパターンを生み出してゆくための、最初のもの[2]。試作品[1]
概要

prototypeの接頭辞「proto- プロト」の意味は「最初の」である。

日本語では試作品ともいう[注釈 1]機械分野や航空機分野では「試作機」「試験機」「実験機」などとも言う。車の業界では「試作車」とも。分野によっては「仮組み」と呼ぶこともある。「仮に組んでみるもの」だからである。

まずはプロトタイプを1個作ってみることで、ようやく新しい技術や新しい機構の検証や試験を行うことができ、大量生産に入ってしまう前に問題点の洗い出しができ、それを判断材料にして改良したものをまた1個、あるいは改良の方向性の違う試作品を数種類ほど作り、それをまた検証や試験してみてまた改良したものをつくり...ということを何回か繰り返し、もし納得できるレベルに到達すれば、ようやく試作段階が終了したと見なすことができ、完成品の設計図を描き、それをもとに必要な部品を大量発注し、工場のラインでの大量生産(「本生産」)の段階に入ってゆく。納得が行くレベルに到達しなければ、プロトタイプのままで終わるということになる。そうなったものを《試作止まり》という。開発をしている側の人間から見ると、《試作止まり》になるもののほうが数が多く、実際に製品化されるのは一部である。[注釈 2]

工業分野で何か新しい技術を活用した部品や製品を作ったりする際、頭の中にあるイメージだけをもとに完璧な設計を行う事は難しく、その図面通りにいきなり生産ラインに乗せて大量生産を行うということはできない。[注釈 3]通常は試しに1個ないしは数個、手作業でよいので、とりあえずアイディアや図面の一部分、あるいはアイディアを簡素化したものでよいから、とりあえず実体化(物体化)したものを作ってみて、まずはそれに手で触れてみたりそれを動かしてみたりして、それが心で思い描いていた通りに動くのか(期待した性能値をはじき出すのか)、あるいは逆に実物として触ってみると使い勝手が悪いものなのか(期待した性能値が出ないのか)、まずは実物化したもので確かめてみる、ということを行う。そのようにして、最初に作るものがプロトタイプである。そのため実用性やデザインは考えず基盤や内部機構がむき出しで、武骨な見た目の事も多い。これには改良や改造で手を加えやすいと言うメリットもある。

なお、大量生産するものでなくても試作の段階のものは「プロトタイプ」という。たとえば競技に参加する場合、本番で使うことになる実機は1台だけの場合でも、その完成度の高い、本番用の1台(あるいは予備機も含めた2?3台)にたどり着くための原型としてまず作るものは「プロトタイプ」である。

またプロトタイプの「プロト」の意味は「最初の」だが、これは相対的、比喩的に言っており、2番めの試作品や3番目の試作品もプロトタイプと言う。(本生産に入る前に、検証のために作っているものであれば「プロトタイプ」という。)

プロトタイプを活用することでより良い製品を生み出す手法や開発の効率を高める手法はプロトタイピングという。

スピットファイヤーのプロトタイプ

Ferrari 250 GTOのプロトタイプ

ゲーム機 Atari 2600のプロトタイプ(米国計算機歴史博物館展示品)

試作車が数台製作されたものの、結果的に市販化されなかったスバル1500

省エネ競技車のプロトタイプ。もともと大量生産する予定が無いもののプロトタイプの例。

M3A1軽戦車のプロトタイプ

電子回路のプロトタイプ(試作用の基板ブレッドボードで作ったもの)

エレクトロニクス

エレクトロニクス製品も、まずはプロトタイプを作る。

電子回路に関しては、試作基板(ブレッドボード)で回路を実際に試しに組んでみる。いきなりプリント基板を大量発注するということは行わない。近年ではソフトウェアの回路シミュレータがあるので、ものによっては、まずはソフトウェアで電子回路のシミュレーションを行って、大丈夫そうなら次にプロトタイプをブレッドボードなどで組んでみて、それでも大丈夫そうならプリント基板を発注するという手順を踏む場合もある。

なお電子回路においては、プロトタイプ品と量産品で性能に違いが出てしまうことがある。これは部品の数や違い・プリント基板のパターン引き回しの違い・空中配線部品を使ったかどうかなど、様々な要因で起きる。特に高周波回路ではわずかな違いが原因で性能に差が出てしまう。
コンピュータ
ハードウェア

コンピュータのハードウェア製造する場合も、まずはプロトタイプを作る。特に大量生産する計画があるならば、まずはプロトタイプをつくる。




ダグラス・エンゲルバートが作り1968年に公表したマウスのプロトタイプ。手作り、木製。

Talking Electronics Computer TEC-1のプロトタイプ

Apple社の初期のMacintoshのプロトタイプ。(米国計算機歴史博物館展示品)

PalmPilotというPDAタイプのコンピュータのプロトタイプ。後ろの大きな緑の基板。まだ手のひらサイズにできていない段階。(米国計算機歴史博物館展示品)

ソフトウェア

コンピュータのソフトウェアに関しても、プロトタイプは活用される。

C言語には関数プロトタイプ宣言というものがあるが、これは関数サブルーチンの引数と返り値の値を宣言するものである。外部とのやりとりを示す「宣言」に対し、中身を示すものを「定義」と言う。

プロトタイプベースオブジェクト指向プログラミングでは、プロトタイプは「クローンとしての新しいオブジェクト」を作ることができるオブジェクト、のことである。逆にそのクローンの側から見ると、自分がクローンとして作り出される元となったオブジェクトがプロトタイプである。

プロトタイプ・プログラムを日本語では「試作プログラムなどと呼ぶ。[注釈 4]

Adobe_Directorなどのツールを使うと、通常の開発環境より迅速にメニュー画面などのプロトタイプの作成が出来る。また、実際の開発環境との互換性が全く無いため確実にプロトタイプを破棄できる利点がある。
自動車

自動車業界ではプロトタイプは、基本的には性能の確認、新たな装備・機能の試験、社内での各専門家からの意見聴取などの目的で作られる。

プロトタイプは、基本的にあくまで開発のためのものであり、社内のためのものであり、基本的には外部には見せないものである[注釈 5][注釈 6]

エアロダイナミックス(空気力学)の試験のためのプロトタイプは風洞実験ができればよいので、外形だけができていればよく、走行できないものでもよい。縮尺模型など実物大ではない場合もある。

公道走行で検証・試験を行うためのプロトタイプは、日本では「試作車」(輸入車の場合は「型式不明車」)として登録をする必要があり、自動車検査証の交付を受けた状態、もしくは臨時運行許可番号票や回送運行許可番号票を取り付けた状態で公道走行試験を行う。

クライノーのあるモデルのプロトタイプ(1916年)

全地形対応車のプロトタイプ(1936年、イギリス)

アメリカ合衆国ワシントン州電力会社、シアトル・シティ・ライトが製作した電気自動車のプロトタイプ RT1(1976年)。1度も量産されることはなかった[3]、つまり《試作止まり》となった。


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