医薬品(陣痛誘発・促進剤)としてのプロスタグランジンE2については「ジノプロストン」をご覧ください。
プロスタグランジンE2
IUPAC命名法による物質名
IUPAC名
7-[3-hydroxy-2-(3-hydroxyoct-1-enyl)- 5-oxo-cyclopentyl] hept-5-enoic acid
識別
CAS番号
363-24-6
プロスタグランジンE2(英: Prostaglandin E2, PGE2)は生理活性物質であるプロスタグランジンの一種であり、PGE受容体を介して発熱や破骨細胞による骨吸収、分娩などに関与している。医薬品(ジノプロストン)としては陣痛促進や治療的流産に用いられる。 PGE2の命名法はプロスタグランジン類に共通するものであり、五員環部分の9位にオキソ基と11位にヒドロキシル基、側鎖部分の15位にヒドロキシル基を有するので“E”、5位、13位の2箇所に二重結合を有するので“2”とされる。 PGE2をはじめとしたエイコサノイドは炭素数20の不飽和脂肪酸を原料に生合成されることが知られており、食物由来物質の中ではアラキドン酸の含量が多い。このことからエイコサノイドの合成系をアラキドン酸カスケードと呼んでおり、PGE2も精嚢腺や肺などにおいてアラキドン酸から生成される。 アラキドン酸カスケードでのPGE2合成反応は以下の4段階に分けられる。1) 生体膜のリン脂質のsn2位にエステル結合しているアラキドン酸がホスホリパーゼA2 (PLA2) と呼ばれる酵素により切り出される。2) 遊離したアラキドン酸はシクロオキシゲナーゼ (COX) により代謝されPGG2になる。この際、アラキドン酸がリポキシゲナーゼ (LOX) による代謝を受けるとロイコトリエンの合成系に入っていくが、本題から外れるため詳述しない。3) さらにPGG2はPGH2に変換され、この反応もCOXが担う。つまり、COXの関与する反応はアラキドン酸→PGG2とPGG2→PGH2の二段階であり、前者をシクロオキシゲナーゼ反応、後者をヒドロペルオキシダーゼ反応と称する。4) プロスタグランジンE合成酵素 ホスホリパーゼA2はリン脂質を脂肪酸とリゾリン脂質 PGESはPG合成系の中間体であるPGH2から生理活性化合物であるPGE2への代謝反応を選択的に触媒する酵素である。PGESにはmPGES-1、mPGES-2およびcPGESの3種類が存在しており、それぞれ特徴が異なる。 プロスタグランジン受容体
化学構造
産生機構
アラキドン酸カスケードプロスタグランジンの生合成経路。PGH2(図中青色)を基点として様々なエイコサノイドが作られるが、PGE2はPGE合成酵素 (PGE synthase) により生成される。
ホスホリパーゼA2
シクロオキシゲナーゼ (COX)詳細は「シクロオキシゲナーゼ」を参照
COX-1
COX-1は構成的酵素であり、炎症性刺激の有無に関わらずほぼ全ての組織に発現がみられる。胃粘膜保護や腎臓血流量の増加などに関与し、生理的な機能の維持を行っていると考えられている。
COX-2
炎症や癌などの病的状態において誘導される酵素であり、滑膜細胞やマクロファージ、単球などに発現が見られる。サイトカインや増殖因子、細菌内毒素などの刺激により産生が促され、抗炎症薬により抑制される。抗炎症薬投与によりCOX-1が活性阻害を受けると、プロスタグランジンの胃粘膜保護作用や血小板凝集作用などが失われるため副作用の原因となる。そのためCOX-2選択的な阻害薬が治療により有用性が高いとされている。COX-2選択的な阻害薬としてセレコキシブなどが知られている。また、ステロイド性抗炎症薬によってもその発現が抑制される。
プロスタグランジンE合成酵素
mPGES-1 (Microsomal PGE Synthase-1)
mPES-1の機能発現は主にCOX-2と共役しており[2][3]、癌や炎症、疼痛、発熱、組織修復などに関与することが知られている。mPGES-1は炎症刺激によって発現が上昇する3量体の誘導型酵素であり、抗炎症薬であるグルココルチコイドにより発現が抑制される。mPGES-1の誘導には転写因子Egr-1
mPGE-2
PGES-2は二量体を形成しており、アミノ基側末端を介して脂質膜に結合している。様々な組織・細胞にmPGES-2の構成的な発現が見られ、炎症や組織損傷などによって誘導されないタイプの酵素であると考えられている。しかし、結腸・直腸癌ではmPGES-1と共にその発現量が増大していることが報告されている。
cPGES(Cytosolic PGE Synthase)
cPGESはコシャペロン分子のp23と同一のタンパク質であり、細胞質中に存在してCOX-1由来PGH2の代謝を行う。炎症などの因子に影響を受けない構成型酵素であるが、カゼインキナーゼ2 (CK2) によるリン酸化によりミカエリス・メンテン係数(Km)が大きく減少することが報告されており、CK2によるリン酸化はcPGESの酵素活性とPGE2産生量に結びついている。
受容体と生理活性
EPにはこれまでに少なくとも4種類のサブタイプ (EP1?EP4) の存在が報告されており、いずれもPGE2に対して反応性が高い。EP3には選択的スプライシングにより産生される数種類のアイソフォームが存在している。
EP1EP2EP3EP4
構成アミノ酸数 (マウス)405362366(EP3α)513
Gタンパク質UnknownGsGiGs(Gi)
情報伝達細胞内Ca2+↑cAMP産生量↑cAMP産生量↓cAMP産生量↑、PI3キナーゼ
代表的な分布組織腎臓、胃、肺血管平滑筋腎臓、子宮、胃平滑筋、腎、胸腺
作用平滑筋収縮、ストレス反応(ACTH分泌等)血管拡張、卵胞成熟発熱、痛覚伝達、胃液分泌抑制、平滑筋収縮免疫抑制、骨代謝
アゴニストONO-DI-004ONO-AEI-259ONO-AE-248ONO-AE1-329
アンタゴニストONO-8713-ONO-AE3-240ONO-AE3-208
出典^ Das S, Rafter JD, Kim KP, Gygi SP and Cho W.(2003)"Mechanism of group IVA cytosolic phospholipase A(2) activation by phosphorylation."J.Biol.Chem. 278,41431-42. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}PMID 12885780