プレハブ
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プレハブ工法の例部材を運ぶトラック

プレハブ工法(プレハブこうほう、: prefabricated-building)は、建築物の一部又は全ての部材をあらかじめ工場で製作し、建築現場で建物として組み立てる建築工法である。近年の建築物には多かれ少なかれ工場で生産された部材が用いられているが、従来の建築工法に比べて工場生産の部材を利用する割合が大きい工法に対して用いられる[1]。『学術用語集 建築学編』では、プレファブ工法またはプレファブリケーション(: prefabrication[注 1])と定められている。

一般に、この工法を用いた建築物は「プレハブ建築」あるいは単に「プレハブ」(英: prefab[注 2])と呼ばれ、この工法を用いた住宅は「プレハブ住宅」と呼ばれる。なお、俗称で仮設住宅バラック掘っ建て小屋など簡易な建築物の事を工法問わずに「プレハブ」と呼ばれるが、建築用語とは異なる。また、プレハブ工法で建築された住宅でも見た目が簡易でないものに対しては「プレハブ」とは呼ばない。
概要

プレハブ工法では、プレカットプレキャスト工法などの手法で工場での品質管理のもとで部材を生産するため、品質が一定で高い精度を確保できる。また、建築現場での作業が軽減され、工期が短縮される[2]。さらに、大量生産によって、低コスト化を図ることができる[3]。一方、画一的であると言われたデザインについても多様化が図られている[3]

一方、構造形式にもよるが、間取りの自由度が低く、増改築やリフォームがしにくいといった短所もある[4]。鉄骨系のプレハブ住宅は軽量鉄骨を用いるため、重量鉄骨を用いる鉄骨造に比べて耐久性が低い[5]

プレハブ建築は、以下の3種類に大別される[1]

プレハブ住宅

PC(プレキャストコンクリート)建築

規格建築

プレハブ住宅ユニット住宅の例(セキスイハイムMR)

プレハブ住宅は日本でのみ定着した工法とされる[6]。2014年の日本におけるプレハブ住宅の着工戸数は約14万戸で、全住宅着工戸数の15.7%を占める[7]。大手メーカーでは1社あたり年間1万戸を超えるプレハブ住宅を生産する。

プレハブ住宅は以下の4種類に分類される。

木質系

鉄鋼系

ユニット系(ユニット住宅

コンクリート系[8]

沿革

1920年代から1930年代にかけて、ドイツで単式工法住宅が試みられた。1950年代以降、アメリカで発達したツーバイフォー木造枠組壁構法)による住宅建築をベースに、ユニットバスシステムキッチンなどに代表される住宅機能のユニット化が進み、格段の進歩を見せた。アメリカではモービルホームとしても作成された。これは住宅が2つなどに分割されて、それぞれが車輪がついており牽引され現地で接合されるタイプのもの。

日本では、1941年住宅営団が木製パネル式組立住宅の開発を行った。第二次世界大戦直前の大工や資材が不足する中、1年間で3万戸の住宅建設を進めるために苦肉の策として編み出したもので、12坪の木造平屋建て住宅が1日で組み立てられる仕様であった[9]。また、1946年には戦後の住宅不足の中で、工場生産住宅協会が発足した。1947年戦災復興院が作成した簡易コンクリート造住宅基準では、分類のひとつとして組立式が設けられ、1949年には組立鉄筋コンクリート構造の試作棟が完成し、1950年にプレコンと名付けられた[10]

1955年には日本軽量鉄骨建築協会が設立され、小規模建築物への軽量型鋼の研究開発及び試作を行った[10]1959年大和ハウスから現代につながる鉄鋼系プレハブ住宅が、ミゼットハウスという名前で販売された。6畳の広さのものだった。1960年には積水ハウスから鉄鋼系が、その後ミサワホームから木質系が販売された。1956年浅田孝らが開発した南極観測のための昭和基地建設工事で、建材から工事をする必要がなく砕氷船で運び現地で組み立てるだけで使用でき、かつマイナス50℃という環境に耐える工法をミサワホーム1967年から採用、また積水化学工業からはユニット住宅としてセキスイハイムM1が販売された。近年では在来工法(木造軸組構法)にもプレカット材の利用が進むなど影響を与えている。
PC工法

工場等で予め製造されたプレキャストコンクリートを用いたプレキャスト鉄筋コンクリート工法(PC工法)も、プレハブ工法の一種である[11]
規格建築資材置き場兼事務所としての使用例阪神・淡路大震災時の仮設住宅としての使用例(脇浜町、1995年撮影)

水平力をブレースに負担させることにより、主要な構造材に軽量形鋼を使用した組立て式の建築物である。1960年代に開発され、リース用として事務所、教室、倉庫等の用途で使用されるようになった[10]1990年代以降は、組立すら不要のユニット住宅が主流となっている。

建設現場の休憩所から、集会所、大規模災害時の避難施設仮設住宅など、機動性と設置の容易さから幅広く普及している。都市部の小学校中学校では、児童や生徒数の増減に対応するために、仮設校舎が建設されることが多い。また、校舎の補強や建て替え工事の際にも仮設校舎として利用される。
有形文化財

2016年3月11日に、積水ハウス株式会社が1963年に建築した「山崎家及び臼井家別荘(セキスイハウスA型)」が、プレハブ住宅として初めて国(文化庁)の有形文化財(建造物)に登録された。この建物は、軽井沢に主に避暑を目的とした別荘として建てられ、現在(2016年時点)まで53年間利用されている[12]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 英語発音: [?pri?fabr??ke??n] プリーファブリケイシュン
^ 英語発音: [?pri?fab] プリーファブ

出典^ a b “プレハブ建築について”. 一般社団法人プレハブ建築協会. 2015年5月20日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2015年6月16日閲覧。
^一般社団法人プレハブ建築協会のご案内 (PDF) 一般社団法人プレハブ建築協会
^ a b .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}"第II部 技術と生活 第1章 生活史の中の技術 第2節 生活場面でみた技術の影響". 『国民生活白書 : 人にやさしい豊かな社会』平成2年版. 経済企画庁. 1990年10月30日. ISBN 4-17-190465-X. 全国書誌番号:91028733. 2014年11月20日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。


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