プリンセス・トヨトミ
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プリンセス・トヨトミ
著者
万城目学
発行日 2009年3月1日
発行元 文藝春秋
皇冠文化出版
ジャンルファンタジー小説
日本
言語日本語
形態四六判仮フランス装
ページ数504
公式サイト ⇒プリンセス・トヨトミ
コードISBN 978-4163278803

ウィキポータル 文学

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『プリンセス・トヨトミ』(英題:Princess Toyotomi) は、日本作家である万城目学の小説。
概要

万城目学初の長編連載作品。『別册文藝春秋』にて2008年1月号から2009年1月号まで連載され、2009年3月に文藝春秋より刊行された。第141回直木賞候補作。『鴨川ホルモー』と『鹿男あをによし』に続く「関西三部作」のひとつ。400年にわたりあるものを守り続けてきた大阪の男たちと、それを知らずに大阪へやってきた会計検査院との攻防を軸に、親子の絆を描いたパラレルワールド的な作品。『鹿男あをによし』とは一部世界観を共有しており、同作品に登場した大阪女学館剣道部顧問の南場勇三がわずかに登場する。また、作中で頻発していた地震についても触れられている。

吉本」やバラエティ番組でよく取り上げられるイメージとは違う「日常の大阪」「もうひとつの大阪」を意識して執筆されている。例えば、観光地としては知名度が高くない空堀商店街が主な舞台とされ、大輔と茶子の会話にはベタなボケ・突っ込みシーンがなく(むしろコミカルなやり取りは東京からやってくる会計検査院側に多い)、熱狂的な阪神ファンも出てこない[1](ただし映画では新世界や道頓堀などのシーンが多く挿入されている)。

原作において辰野金吾の辰野建築がしばしば話題になり、「長浜ビル」や「大阪国議事堂」も辰野建築ではないかと言及される。

一説には、大阪都構想をモデルにしているとも言われている。
あらすじ

5月31日木曜日、午後4時。突如として大阪府で一切の営業活動、商業活動が一斉に停止した。物語はそこからさかのぼること10日前、東京から訪れた会計検査院の調査官3人と、空堀商店街に住む2人の中学生の、一見何の関わりもない行動を中心に描かれる。

会計検査院第六局所属の松平・鳥居・旭の3人は実地検査のため大阪を訪れる。そのリストの中には謎の団体「社団法人OJO」が入っていたが、期間中にOJOの検査をできないまま一旦帰京する。一方、空堀中学校に通う大輔と茶子は幼馴染。長い間女の子になりたいと思っていた大輔はセーラー服姿で登校することを夢に見て、実行に移す。しかし、彼を待っていたのは壮絶ないじめであった。

週が明けて火曜日、ある理由で大阪に残っていた松平はOJOの実地検査ができることを知り、現地へと向かう。一方の大輔はその日、担任教師に早退を命じられ、父親とともにある場所へと行くことになる。松平と大輔の2人が見たものは地下に眠る「大阪国」であり、大輔は父が大阪国の総理大臣であることを告げられる。

「大阪国」は35年間で日本国政府から175億円もの補助金を受けていたが、肝心なことを国との条約を盾に語らない。松平はこの「大阪国」の不正を明るみにするために対決することに。そんな中、大輔へのいじめがエスカレートし、茶子はいじめた相手への襲撃を決行するが、そのことが思いもよらぬ事態へと発展する。

それぞれの思惑と誤解が交錯したとき、長く閉ざされていた歴史の扉が開かれる。
用語解説
大阪国
大坂夏の陣による豊臣家の滅亡後、徳川家は豊臣秀吉が築いた大坂城を全て破却し、大坂から豊臣家の痕跡を消し去ろうとした(大坂城#徳川大坂城を参照)。そうした徳川家のやり方に不満を抱いた大坂の町人が、秘密裏にあるものを守るために大坂城の地下に寄合場を造ったのが大阪国の始まりである。その後、明治維新時に太政官政府と条約を交わし、国が正式に大阪国の存在を承認し、大阪国の運営資金を国家予算に組み込む(肩代わりする)ことになった。このとき以外、外部には一切その存在を現しておらず、関係者以外に存在を公にされた時が大阪国の終わりとされる。国が「訪問(視察)」の意思を伝えた場には誠実に対応しなければならない。あるものが危機にさらされた時、大阪国の人間は決められた「合図」に従って「立ち上がる」。大阪府民全てが大阪国の人間というわけではなく、大阪国の人間として認められるには条件がある。「国」ということで、大阪国の「国会議事堂」が存在する。その内部は実際の国会議事堂によく似ているが、ここで法案を成立させることなどはない。また、3年間の持ち回りで「大阪国総理大臣」が選出されている。運営資金の多くは、大阪国民をチェックするためのスーパーコンピュータや、「合図」のための伝達・整備資金にあてがわれている。
社団法人OJO
国や大阪府などから大阪国へ送られる資金の受け皿となっているダミー組織の一つ。大阪国の存在を公にできないため、資金の使途については「補助金」という形で一部偽りの報告を行ってきた。空堀商店街にある「長浜ビル」なる年季の入った建物に事務所があり、大阪国へとつながる長いトンネルが続く。「OJO」は略称でも何でもなく、大阪国の人間が守ってきたものそのものを指し、これが大阪国が存在する理由となっている。
主な登場人物

主な登場人物の名前は歴史上の人物から採られている。例えば豊臣秀吉の妹旭姫から採られた「旭」など[1]
会計検査院
松平 元(まつだいら はじめ)
会計検査院第六局
[2]副長。39歳。国家公務員1種試験をトップ合格しながら、「検査がしたい」との理由で名だたる省庁の誘いを断って検査院に入った。卓越した調査能力と妥協を許さぬ追及の厳しさから「鬼の松平」と恐れられる。大きな仕事の前には全身の関節を鳴らす癖がある。アイスクリームが好物[3]で、事あるごとに食べる。両親は大阪出身で、すでに他界した元官僚の父親とは長い間確執があった。幼少時に2年半ほど森之宮に住んでいたことがあり、その時に大阪城の異様な光景を目の当たりにしている。部下である鳥居の印象によると、三島由紀夫を連想する。徳川家康の原名、松平元康に由来。
鳥居 忠(とりい ただし)
会計検査院第六局所属。32歳。小太りで童顔。調査員らしからぬおっちょこちょいな性格で、検査院に入って10年経ってもミスを連発している。しかし、インクの臭いが苦手という体質から書類偽造を見極めたり、予期せず勘が鋭く働いたりすることから、本人の知らないところで「ミラクル鳥居」と呼ばれ、その能力を松平に買われている。恋人がおらず、見合いもうまくいっていないことが検査院内で噂になっており、下の名前(ファーストネーム)で呼ばれるのは実の母親だけだと言われている。原作では「ただし」の漢字表記は明らかになっていないが、映画のパンフレットで「忠」と表記されている。家康の側近、鳥居元忠に由来。実写映画では性別が男性から女性に変更され、それに伴い名前も「忠子」に変更されている。
旭 ゲーンズブール(あさひ ゲーンズブール)
会計検査院第六局所属。29歳。ハーバード大学卒業。国家公務員1種試験をトップ合格し、内閣法制局への出向経験を持つ才女。日本人とフランス人のハーフで、すれ違った男性のほとんどが振り返る程の美貌の持ち主。ただしフランス語は話せず、代わりに英語が堪能で、なぜか大阪弁も話せる。ファーストネームで呼ばれることを嫌うなど、鳥居にはやや冷めた態度を取っている。会計検査院に来たのにはある目的があった。秀吉の妹で家康の正室だった旭姫に由来。実写映画では性別が女性から男性に変更されており、鳥居と逆転している。
大阪市立空堀中学校
真田 大輔(さなだ だいすけ)
中学二年生。小学生の頃から女性になることに憧れ、男物の服装でいることに抵抗を感じていた(ただし男性を恋愛対象として見ているわけではない)。セーラー服で登校したことをきっかけにいじめの対象になるが、頑なに男子制服を着ることを拒む。しかし、運動が苦手な肥満体質であるためセーラー服姿は似合わない。
真田幸村の長男で、大阪城内で秀頼と一緒に自害したとされる大助に由来。
橋場 茶子(はしば ちゃこ)
中学二年生。陸上部員。2歳の時に交通事故で両親を亡くし、自身を引き取った叔母(宗右衛門町でスナックを経営)と大輔の家族によって育てられた。男勝りな性格で、小さい頃からよくいじめられる大輔をいつも守っていた。大輔からはセーラー姿で登校することを最初に打ち明けられている。秀吉の苗字「羽柴」と、秀頼の生母・淀殿の本名「茶々」に由来。
島 猛司(しま たけし)
中学二年生。実家がジャコを扱う乾物屋であることから、「ジャコ屋」と茶子に呼ばれている。1年前に父親を亡くしている。「太閤」のお向かいさんだが、大輔と親しくなるのは中学生になってから。大柄な体格で大輔が苦手としていたが、次第に大輔にとって良き理解者となっていく。豊臣方武将・島左近に由来。
蜂須賀 勝(はちすか まさる)
中学三年。


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