プラド美術館(プラドびじゅつかん、西: Museo del Prado)は、スペイン・マドリードにある美術館。歴代のスペイン王家のコレクションを中心に幅広いヨーロッパ絵画を展示する世界有数の美術館であり、数々の重要な傑作が収蔵されている。新型コロナウイルスの世界的流行の影響を受け、2020年の来館者数は76パーセント減少して年間85万人台に落ち込んだが、それでも美術館の人気番付(対来館者数)で世界第16位であった[2]。
同じ地区にあるティッセン=ボルネミッサ美術館、ソフィア王妃芸術センターと当館の3館がある地区を〈マドリードの芸術黄金地帯〉と呼ぶ。2021年に一帯はUNESCO世界遺産「パセオ・デル・プラド(英語版)とブエン・レティーロ(英語版)、芸術と科学の景観」[3]に登録された。 美術館の前身である王室コレクションは、16世紀にヨーロッパ第一の大帝国となったスペインの莫大な富と権力を背景に、当時の美術の中心であったイタリア、フランドルなどから選りすぐりの絵画を購入したことに端を発している。スペイン・ハプスブルク家のカール5世が基礎を築き、フェリペ2世からフェリペ4世まで引き継がれた17世紀末には、5500点を超える膨大なコレクションに発展した。スペイン・ブルボン家の時代になってもフェリペ5世、カルロス4世らによって収集品は拡充されたが、1734年の旧マドリード王宮の火災で500点以上が灰塵(かいじん)に帰す。19世紀初頭のナポレオン軍の侵攻による略奪等によって、さらに数百点が失われた。持ち出された作品はヤン・ファン・エイクの『アルノルフィ二夫妻像』、ジャック・ルイ・ダヴィッドの『サン・ベルナール峠を越えるボナパルト』などの傑作を含む。 美術館は、1819年11月19日に「王立美術館」と称して一般の観覧を受け入れた[4]。この年に発行した当館の展示図録の第1号には、スペイン絵画311点のみ掲載した。当時の収蔵品総数は1510件、(旧)「王宮」を含む王族それぞれの宮殿を飾ったり、国外の作家の作品も数えている。スペイン名誉革命 (九月革命)
歴史
本館にあたる「ビリャヌエバ館」(西: Edificio Villanueva)の建物は、1785年にカルロス3世が自然科学に関する博物館を作るため、フアン・デ・ビリャヌエバ(英語版)に設計させたものである。しかし所記の目的に使われることはないまま孫のフェルナンド7世に受け継がれ、王太子妃マリア・イサベルの進言を受けて「王立絵画彫刻美術館」として一般に公開した。その後、20世紀を通じビリャヌエバ館はいくたびか拡張され、増え続ける収蔵品と、その観覧を希望する民衆の声に応じようと新たな展示空間を設けた[7]。
その東側には、2007年にホセ・ラファエル・モネオ設計による新館「ヘロニモス館」が増築され[8]、主にカフェテリア、ショップなどのサービス施設のほか、企画展示に使用されている。
ビリャヌエバ館は@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}2階・1階・0階・?1階の4フロア、ヘロニモス館は2階・1階・0階で構成され、両館は0階で連絡している[疑問点 – ノート]。現在[いつ?]、さらに近隣の「サロン・デ・レイノス」 (Salon de Reinos) の建物を新たな別館とする拡張計画が進行中である。.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}フランシスコ・デ・ゴヤ『裸のマハ』カンバスに油彩(1797?1800年頃)『着衣のマハ』カンバスに油彩(1797?1800年頃)
王家のコレクション(英語)中心だった収蔵品に、ゴヤのマハ像2点などが加わった。他のGLAM施設の資料も継承し、もとの収蔵機関はいずれも閉館したトリニダード美術館(1872年Museo de la Trinidad)と近代美術館(1971年Museo de Arte Moderno)であった。当館の19世紀絵画コレクションの中核は、後者から受け継いだ作品類である。芸術家はたとえばスペインのマドロサ家より画家で彫刻家のホセ・デ・マドラソ・イ・アグード(英語)(父)と息子で画家のフェデリコ(英語)(1815年?1894年)。ヴィセンテ・ロペス(英語)(通称イ・ポルターニャ)、カルロス・デ・アエス、エドゥアルド・ロサレスとホアキン・ソローリャ(英語)などである[要出典]。フランドル派を連想させる作者不明の宗教画(1450年頃)の通称〈生命の源〉[注釈 1]も該当し、聖ドミンゴ、聖ペドロ・マルティルの肖像が描いてある[注釈 2]。あるいはエル・グレコの筆とされるキャンバス画5点(英語)[注釈 3]。
度重なる増改築の端緒は1918年の増床であった。
創建以来、さまざまないきさつを経て加わった絵画は2300点に上るといい、その他の工芸的な資料もある。「新収蔵品」の大部分を占める版画や素描その他の美術作品は、受贈あるいは受託したり、購入した作品である。遺贈を受けたコレクションは質も豊かになり、収集家P・M・デュラン(Pedro Fernandez Duran)から素描や装飾美術品・工芸品など収蔵品全点を贈られた中に、特筆するべき作品『デュランの聖母』(15世紀、ロヒール・ファン・デル・ウェイデン作)がある。勲章・メダル類(Pablo Bosch y Barrau旧蔵品)、19世紀絵画史をまとめたラモン・デ・エラス(Ramon de Errazu)の一連の遺贈品もある。フレデリック・エミール・エルランジェ旧蔵のゴヤ作「黒い絵」(1881年)は特に貴重である。2010年代に購入した特筆に値する作品群は、画家別にエル・グレコ作『寓話』(1993年)と『エジプトへの逃避』(2001年)、ゴヤ作『チンチョン伯爵夫人マリア・テレサ像』(英語)(2000年)、ベラスケス作『フェルディナンド・ブランダーニの肖像』(英語)(2003年)、またブリューゲル作『聖マルティンのワイン祭り』(2010年)、フラアンジェリコ作『ザクロの聖母』(2016年)などがある。