プラズマ
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この項目では、理工学分野で電離気体を意味する用語について説明しています。

医学・生理学における血漿 (blood plasma) については「血漿」をご覧ください。

生物学における原形質 (protoplasma) については「原形質」をご覧ください。

その他のプラズマについては「プラズマ (曖昧さ回避)」をご覧ください。

プラズマ

(左上)雷(右上)ネオンサイン(左下)プラズマボール(右下)太陽

プラズマ(電離気体[1], : plasma)は、荷電粒子(イオンまたは電子)がかなりの割合で存在することを特徴とする、固体液体気体と並ぶ物質の4つの基本的な状態の1つ[2]。狭義のプラズマとは、気体を構成する分子電離陽イオン電子に分かれて運動している状態であり、電離した気体に相当する。プラズマは、中性ガスを加熱するか、強い電磁場にさらすことによって人工的に生成することができる。主に恒星(太陽を含む)に存在する、宇宙で最も豊富な通常の物質の形態であるが、希薄な銀河間ガスや、銀河団ガスも支配している。
概要

プラズマは荷電粒子群と電磁場相互作用する複合系である。粒子の運動は電磁場を変化させ、電磁場の変化は粒子の運動にフィードバックされる。プラズマは固体液体気体のいずれとも異なる特有の性質を持つため、物質の第4の状態ともいわれる[2]。狭義のプラズマとは、気体を構成する分子電離陽イオン電子に分かれて運動している状態であり、電離した気体に相当する。狭義のプラズマは、プラズマの3要件
その物質系の大きさ L がデバイの長さ λD より十分大きくなければならない。すなわち L ≫ λD。

考えている現象の時間スケール t がプラズマ振動の周期よりも長くなければならない。すなわち t ≧ 1/ωpe。

半径が λD の球の中の粒子数 Λ が充分大きくなければならない。すなわち Λ ≫ 1。Λ をプラズマ・パラメタという。

をみたす。
電離層太陽風星間ガスなどがプラズマ状態であり、宇宙の質量の99%以上はプラズマ状態である。人工的には、レーザーマイクロ波の照射により気体を電離させることで生成され、プラズマプロセスや原子核融合など、多様な工学的応用がなされている。広義のプラズマは、プラズマの3要件の一部をみたさず、非中性プラズマ、強結合プラズマ(微粒子プラズマ、固体プラズマ)などを含んでいる。強結合プラズマは、プラズマ粒子が自由に動けず液体固体に似た振る舞いをする。プラズマ中では、電流磁場に沿ってフィラメント状の発光領域が観測できるなど、特有の構造が形成される。また、プラズマ中では、プラズマ波動プラズマ不安定性発光現象などの特有な物理現象が見られる。

プラズマの3要件や、物理現象の詳細な記述はプラズマ物理を参照のこと。
歴史

プラズマはクルックス管の中で初めて認識され、1879年、クルックスの著書[3]でradiant matterと記述されている。続いて、1897年、クルックス管で発生した陰極線の正体を電子の流れと特定したのはトムソンである。ラングミュアは、1920年代、デバイ遮蔽プラズマ振動などのプラズマの基本的性質を明らかにし、1928年、この物質を初めてプラズマと呼んだ[4]。以降、プラズマに対する研究は宇宙物理学や、原子核融合などの工学的応用において進展している。

プラズマ物理#歴史も参照のこと。
プラズマの種類

ここでは、プラズマの種類を区別するための基準をいくつか示す。
電離度
電離度が低く、電気的に中性な分子が大部分を占めるプラズマを弱電離プラズマ (weakly ionized plasma) 、もしくは低温プラズマ (cold plasma) と呼ぶ。一方、電離度が1となり、イオンと電子だけで構成されるプラズマを完全電離プラズマ (fully ionized plasma) 、もしくは高温プラズマ (hot plasma) と呼ぶ。電離度はサハの電離公式から計算できる。
圧力や粒子密度
大気圧下で発生させたプラズマを大気圧プラズマ真空中で発生させたプラズマを真空プラズマ、もしくは低圧プラズマと呼ぶ。
大域的な磁場の有無
大域的な磁場がある系を磁化プラズマ (Magnetized plasma) 、大域的な磁場がない系を非磁化プラズマ(Unmagnetized plasma)と呼ぶ。磁化プラズマでは、プラズマ粒子は磁力線の周りをサイクロトロン運動し、磁力線に垂直な方向の移動は制限される。このため、磁力線に対して平行方向の温度と、垂直方向の温度は異なることがあるほか、誘電率テンソルとなる。
近似の程度
プラズマを荷電粒子からなる多体系と捉える場合をプラズマの粒子モデルと呼ぶ。プラズマ粒子のクーロン衝突サイクロトロン運動が粒子モデルによる記述である。また、プラズマ粒子の速度を分布関数によって近似する場合を運動論的モデルと呼ぶ。さらに、プラズマの速度分布関数がマクスウェル分布であると仮定できる場合を流体モデルと呼ぶ。最後に、イオン流体と電子流体を結合して一体の流体として扱う場合を磁気流体力学 (Magnetohydrodynamics, MHD) モデルと呼ぶ。
電気的中性の有無
等量の正電荷と負電荷から構成され電気的に中性なプラズマを中性プラズマ、正または負どちらか一方のみの荷電粒子から構成されたプラズマを非中性プラズマと呼ぶ。ソレノイドコイルによる一様磁場と、複数のリング電極による静電場から構成される電磁場配位を用いれば、電子プラズマの閉じ込めができる[5]。このようにして集めた電子プラズマを減速材として用いて、陽電子を捕獲して蓄積することで、反物質プラズマを大量に生成できる可能性がある。
熱エネルギーとクーロンエネルギーの比
粒子間のクーロンエネルギーに比べて熱エネルギーの大きいプラズマを弱結合プラズマ、そうでない場合を強結合プラズマと呼ぶ。強結合プラズマは、プラズマが自由に動くことができない状態であり液体状態に相当する[6]。宇宙空間では白色矮星の内部などに存在し、プラズマ密度は固体密度を大きく越える[7]。実験室内においては、固体中の伝導電子(固体プラズマ)[7]、電解質、微粒子プラズマが強結合プラズマに含まれる。微粒子プラズマのクーロン結晶化の研究が進められており[8]産業への応用も期待されている。
量子化の有無
プラズマ振動量子化したものはプラズモンと呼ばれる。
自然界における例
地球

地球上では、電離層などが代表的であり、地球電磁気学超高層大気物理学によって研究される。

マーチソン広視野電波干渉計を用いた観測によって、高度約600kmの電離層上部からその上のプラズマ圏に向かって地磁気に沿って伸びるチューブ状のプラズマ構造物の存在が確認されている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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