ブロンプトン・バイシクル
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『M3L』、ブロンプトンが製造している自転車、クランクは44t、フロントパニアバッグを装着。

The Brompton bicycle(ザ・ブロンプトン・バイシクル、単にブロンプトンやブロムプトンなど)はイギリス人アンドリュー・リッチーが設立した折り畳み自転車会社。また、製造された自転車の通称である(自転車自体の正式名称は『M3L』などのモデル名である)。

同社は公式に正式な日本語転写名を定めていないが、本項では国内輸入元の『ミズタニ自転車』が定める定冠詞が無いブロンプトンやブロンプトン・バイシクルに準じる。
概要折り畳み第二段階(駐輪モード)折り畳み第三段階折り畳んだ状態のブロンプトン
特徴

その特徴として卓越した折り畳み性能と使い勝手のよさが挙げられる。すなわち、

手早くかつ小さく折り畳めること

折り畳みサイズが箱型になり自立すること

持ち上げても折り畳んだ状態から形がくずれないこと

であり、ブロンプトンは基本的な走行性能を犠牲にせずこの3条件を同時に満たしている。

最初の設計として、たとえばロードバイク等のスポーツ車に対抗できるような性能を追求したものではなく、スポーツ用には必ずしも適したものではない。あくまでも軽快車ないし実用的な自転車として、生活に根付いた使用を前提としている。またブロンプトンの特徴のひとつに独自の荷物運搬システムが挙げられ、専用のフロントバッグないしフロントキャリアを使用すればかなり重い荷物を運搬できる。

主に英国オランダスペインで人気が高く、用途としては自転車通勤に使われることが多い。
折り畳み方

以下の手順で折り畳む。折り畳み時間は30秒-1分、慣れれば15秒でできる。
車体後半部を手前にひっくりかえす(この時、チェーンのテンションはそのままにドライブトレーンが屈曲される)。

フレームのヒンジを止めているネジをゆるめて右に折り畳む。その際にはフォークの前輪軸左側のフックを車体後半部のチェーンステーにひっかける。

シートポストを引っ込める。

ステム根元のヒンジを止めてある固定ネジをゆるめてを右側に折り畳んで、ステム自体をフォーク右側のフックで固定する。

折り畳んだ状態から広げるには4,3,2,1の手順を逆に行う。手慣れると2.1.が同時にできるようになる。
車体構造試作段階のモデルハンドルだけをそのままに他は折りたたんだ状態で移動させている。
フレームデザイン

基本デザインは1986年にリッチーが工場を立ち上げて生産を始めてからほとんど変わっていない。もちろんそれは初期モデルから改良が全くなされていないということではなく、毎年少しずつ小さな改良は施されている。

折り畳みサイズは565 mm × 545 mm × 250 mm、車輪の大きさ16インチ、タイヤは「16×1 3/8」(37-349、16インチWOともいう)を使用する。折り畳み時間は慣れれば15秒程度。折り畳んだ状態で固定されているのでそのまま持ち上げることもできるが、折り畳んだ状態で小さなキャスターが床につくようになっているので、そのまま転がして運ぶことも可能(オプションの「イージーホイールキット」の装着をしておくことが望ましい)。重量はモデルによって異なり9.8kgから13kg程度。

生産管理は一貫してブロンプトンバイシクル社が行っており、それぞれの車体のフレーム溶接、組み立ての担当者が記録され、頻繁に破壊テストを行うなど品質管理は徹底している。

設計の考え方として日常生活で長年にわたって使用できる耐久性を第一に、次に無駄な重量を増やさないことを重点に置いており、使い方としてはスポーツ自転車というよりもロードスター型自転車ないし実用車としての使い方を想定して設計されている。そのため重量増のデメリットがあっても金属疲労による急激な破断が起こりにくいクロムモリブデン鋼をフレームの材質に採用しており、シンプルでいて堅牢な作りになっている。同じ理由で外装変速機(ディレーラー)に比べて重量増、限られた変速段数というデメリットはありながらも整備不良などでも故障が起こりにくい内装ギアを採用している。

製造当初からクロムモリブデン鋼製フレーム(以下「スタンダードフレーム」と表記する)のみだったが2005年に新たにフレームの一部[1]チタンを使った軽量フレーム(以下「軽量フレーム」)が加わった。すべての塗装は厚いパウダー塗装で施される。
コンポーネント

変速機は本体内部に遊星歯車機構を密閉してある内装ギアを一貫して使用、長らくスターメーアーチャー製の3段か5段の選択が可能であった。1999年に同社が営業停止、内装ギアの供給が途絶えるとSRAM社製3段のみとなったが、2006年モデルから3段変速仕様に限り、台湾資本下(SunRace社)で再生したスターメーアーチャー製変速機を搭載している。現在では従来の3段仕様に加えて新たにブロンプトンバイシクルが独自に開発した外装変速装置の2段が加わった6段仕様のモデルもある。

3速モデルの場合クランクがストロングライト(Stronglite)製の50T(T=ギアの歯数)のアルミクランクで、リアスプロケットは13T、6速モデルの場合リアスプロケットは13Tと15T、2速モデルは12Tと16Tの組み合わせとなる。チェーンは3速モデルはトラックレーサーでも使われる1/8インチ規格、2速・6速モデルは3/32インチ規格(シマノ9速用と同規格)のものを使用。ブレーキはアルホンガ(Alhonga)社製のキャリパーブレーキを使用。付属備品としてゼファール(Zefal)社の携帯ポンプがリア三角フレームに固定されている。
現行モデルハンドルバー各種(上よりMハンドル、Sハンドル、Pハンドル
モデル表記について

基本モデルは以下の要素で区分けされている。以下1.2.3.4を順番に組み合わせた記号がモデル番号となる。
ハンドルバーの違い:ハンドルは3種類に区分される。

Mハンドル:ブロンプトン伝統の「ひ」の字形ハンドル。ゆったりした姿勢で乗るには最適。

Sハンドル:
MTBに使われるようなストレートハンドル。ステムが前傾しているのでスポーツ車に乗り慣れている人に向いている。ただオプションのフロントバッグの使用がSバッグのみと限られる。

Pハンドル:複数の握り方ができるハンドル。SハンドルとMハンドルの利点を合わせ持ち疲れにくいが、重量がかさむのが短所。

Hタイプ:細かく言えば、このモデルはハンドルの違いではなく、ステムの違いによるものである。基本はMタイプと同じだが、ステムが60mm長くなっており、高い身長の乗り手向けとなっている。


変速数の違い:変速は2段、3段、6段の選択。

ツーリング用装備(ライトダイナモ、荷台)の有無:装備がなければL、あればRとなる。

フレーム、装備の違い:スタンダードフレームは記号なし、軽量フレーム、シートポスト使用の高級モデルは語尾に-Xとなる。

また泥除けなしの廉価モデルは『C+(数字)+E』と前に「C」、後に「E」がつく。廉価版は限定的に販売されることが多く、かつてC3E(泥よけなしの3段変速、クランクが鉄製)が存在していた。2010年はC1E(泥除けなし、変速なしモデル)が販売されている。

※上記の組み合わせ全てが販売されているわけではない。
イギリスで販売されているモデルと日本に輸入されているモデル

英国ではM3L、M3R、M6L、S2L、S3L、S6L、M6R、P6R、S2L-X、P6R-Xが販売されている。このほかにフレーム材質で2種類(スタンダードフレーム、軽量フレーム)、変速で4種(変速なしの1段、外装2段変速、内装3段変速、外装2段+内装3段の6段変速)、ハンドルとステム形状の種類(Mハンドル、Sハンドル、Pハンドル、Hハンドル)で4種類、ツーリング装備(ライト、ダイナモ、リアキャリア)の有無の2種類の計64種類の選択のオーダーも可能、それに加えて塗装色も選択できる。また稀ではあるが、小売販売店の中にはフレーム前部、後ろ三角(クロモリ、チタン)、ステム、フロントフォーク(クロモリ、チタン)と分割して売るところもある。

日本で販売されているのはM3L、M3R、S3L、M6L(08年モデルまではM6R)、S2L-X、P6R-Xの6種類であり、輸入代理店が1.5倍ほどの金額にして販売している。また補修部品の扱いが十分とは言えず、販売店が直にイギリスから取り寄せているのが現状である。

台湾製モデル

近年まで台湾ネオバイク社でライセンス生産された数多くのブロンプトンが、イギリス製造のモデルと並行して日本市場に流通していた。ここでは「台湾製モデル」と表記する。併売されていた時期はイギリス生産をIKDが輸入し台湾生産をミズタニ自転車が輸入した。

台湾製モデルの実売価格はイギリス製造のモデルの約半分だったため、数多くの台湾製モデルが日本の市場に流通した。しかしロットによる差異もあるものの、台湾製モデルの品質に関してはイギリス製モデルとは比較の対象にされることもある[2]。確実に言えることは部品の多くの規格がイギリス製と使われている部品が異なるので、純正部品がそのまま使えないことがあるので注意を要する。アンドリューリッチーは当時としては仕方のない判断だったが、品質や管理において多くの問題があり失敗であったと振り返っている。
オプション・アクセサリー
フロントキャリアシステム

ブロンプトンには優れた荷物運搬システムがあり、これを「フロントキャリアシステム」と呼ぶ。専用に開発された鞄(バッグ)を専用の硬化プラスチック製のアダプターを介してフレームのヘッドチューブに固定して使用するもので、簡単に取り外しができる。ヘッドチューブに固定するので、ハンドルを左右に動かしてもバッグは動かない。このためバッグ(の内容物)の重さはハンドルの重さに直接の影響を与えない。専用バッグの種類は5種類ある。
現行モデル

フォールディング・バスケット:畳んで収納可能な買い物かご。容量24リットル。

Aバッグ:2010年に登場。ビジネス利用などのフォーマルな場所でも使える革製のアタッシェケース。容量9リットル。

Cバッグ:2009年に登場。以前のフロントパニアバッグ(後述)から派生したタイプ。ナイロン製で防水性はないが、専用のレインカバーが付属する。 容量25リットル。


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