ブロムワレリル尿素
IUPAC名
(RS)-1-(2-bromo-3-methylbutyryl)urea
識別情報
CAS登録番号496-67-3
151?155 (分解)
log POW1.057
酸解離定数 pKa10.536
塩基解離定数 pKb3.461
薬理学
消失半減期2.5h[1]
排泄腎
薬理学
ATC分類N05CM03
投与経路経口
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
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ブロムワレリル尿素(ブロムワレリルにょうそ、英: bromovalerylurea)は、鎮静催眠作用のあるモノウレイド系の化合物である。日本では1915年に発売された商品ブロバリンという医薬品は不眠症の適応があり、一般用医薬品ではアリルイソプロピルアセチル尿素との合剤であるウットや、解熱鎮痛薬などにも成分の1つとして配合され、ナロン、ナロンエースなどが市販されている。かつては商品名カルモチンも販売されていた。
第15改正日本薬局方より、ブロモバレリル尿素と表記される。世界ではブロミソバル(Bromisoval(INN), Bromisovalum)で知られる。
ブロムワレリル尿素は1907年に登場し、オーバードースで死亡する危険性から、20世紀前半にはバルビツール酸系が主流となり、これも1960年代に登場したベンゾジアゼピン系に取って代わられている[2]。アメリカ合衆国では、ブロムワレリル尿素を含む臭化物は医薬品として販売禁止されている[3]。日本では1965年より総合感冒薬には使用できない[3]。
過去に自殺に用いられ、過量服薬や乱用の危険性があるにもかかわらず、2009年には日本でなぜ用いられているか理解に苦しむ、という専門家のコメントがある[2]。連用により薬物依存症、急激な量の減少により離脱症状を生じることがある[4]。日本では「乱用の恐れのある医薬品の成分」として、含有される一般薬の販売が原則で1人1包装に制限され[5]、若年者(高校生、中学生等)については、身分証明書により、氏名及び年齢を確認する[6]。日本では、ブロムワレリル尿素の催眠鎮静剤は習慣性医薬品、劇薬である。
急性の過剰摂取では、ブロム中毒をきたす[1]。ブロムワレリル尿素自体の血中濃度の半減期は2.5hであるが、代謝物であるブロムの血中濃度半減期が12日と著しく長く、連用により慢性ブロム中毒をきたすことがあり[1]、症状は多彩で精神、認知、神経、また皮膚の症状を生じる[7]。小脳の萎縮を引き起こすことがある[1]。
商品カルモチンの昔の広告
1907年にSoamが創薬し、1908年にドイツ帝国のKnoll社がブロムラル(Bromural)の商品名で発売した。
日本では、医療用医薬品(処方箋医薬品以外の医薬品)に、鎮咳・鎮痛・解熱剤としてカフコデN配合錠(ファイザー)がある。催眠鎮静剤として発売されていた、1915年発売のブロバリン原末(Brovarin、日本新薬)、ブロモバレリル尿素(後発医薬品各社)は、代替となる医薬品が複数登場したことから、相次いで発売中止、または発売中止が決定している。
一般用医薬品(指定第二類医薬品)は、鎮静剤として「ウット」(伊丹製薬)がアリルイソプロピアルアセチル尿素などとの合剤、「奥田脳神経薬 I、K、M、W」(奥田製薬)がチョウトウ、ニンジンなどの生薬やカフェインなどとの配合剤で各種ある。また、鎮静作用から解熱鎮痛薬にも配合されていて、ナロン、ナロンエースなど(大正製薬)がある。販売中止となったものに、グレランエース錠(武田コンシューマーヘルスケア)、リスロンS(佐藤製薬)、カルモチン(武田薬品工業)がある。 ブロムワレリル尿素は1907年(明治40年)に登場した[2]。名古屋医科大学内科での、自殺を目的とした急性薬物中毒は、1925年から4年間では催眠劑は13.8%であったものが、1932年(昭和7年)から2年間で55%と著しく増加し、研究ではブロムワレリル尿素を含有する商品名カルモチンに言及されている[8][注釈 1]。(愛知県では1935年から2年間では約43%である[9]) 低用量の使用の際には、死亡の危険性がより少ないということで、20世紀前半にはバルビツール酸系が主流となった[2]。さらに、1960年代にこれらより死亡の危険性や依存の危険性が低いベンゾジアゼピン系が登場し、主流となった[2]。アメリカ合衆国では、ブロムワレリル尿素を含む臭化物は、医薬品としては禁止されている[3]。 しかしながら、日本の1950?60年代の第二次自殺ブームの主役となった薬であり、多くの若者がこの薬で自殺を試みた。毎年約4,000人が臭化物中毒で死亡し、ブロムワレリル尿素によるものが最も多かった[10]。そのため自殺防止のため、市販薬では一錠あたり500mgを超えた薬は発売が禁止され、医師が発行する処方箋の必要な処方箋医薬品に変更された[11]。
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