ブレードランナー
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この項目では、1982年公開の映画について説明しています。その他の用法については「ブレードランナー (曖昧さ回避)」をご覧ください。

ブレードランナー
Blade Runner

監督リドリー・スコット
脚本ハンプトン・ファンチャー
デヴィッド・ピープルズ
原作フィリップ・K・ディック
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
製作マイケル・ディーリー(英語版)
チャールズ・デ・ロージリカ(ファイナル・カット)
製作総指揮ブライアン・ケリー
ハンプトン・ファンチャー
ジェリー・ペレンチオ(英語版)
バッド・ヨーキン
邵逸夫(クレジットなし)
出演者ハリソン・フォード
ルトガー・ハウアー
ショーン・ヤング
エドワード・ジェームズ・オルモス
音楽ヴァンゲリス
撮影ジョーダン・クローネンウェス
編集テリー・ローリングス
マーシャ・ナカシマ
製作会社ラッド・カンパニー(英語版)
ショウ・ブラザーズ
ブレードランナー・パートナーシップ
配給 ワーナー・ブラザース
公開 1982年6月25日
1982年7月10日
上映時間116分(劇場公開版、ディレクターズ・カット)
117分(ファイナル・カット)
製作国 アメリカ合衆国
イギリス領香港
言語英語
製作費$28,000,000
興行収入 $32,914,489[1]
$41,722,424[1]
次作ブレードランナー 2049
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『ブレードランナー』(原題:Blade Runner)は、1982年アメリカ合衆国SF映画。監督はリドリー・スコット、出演はハリソン・フォードルトガー・ハウアーショーン・ヤングなど。フィリップ・K・ディックSF小説アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を原作としている[2]
ストーリー

21世紀初頭、遺伝子工学技術の進歩により、タイレル社はロボットに代わるレプリカントと呼ばれる人造人間を発明した。彼らは優れた体力に、創造した科学者と同等の高い知性を持っていた。

環境破壊により人類の大半は宇宙の植民地(オフワールド)に移住し、レプリカントは宇宙開拓の前線で過酷な奴隷労働や戦闘に従事していた。しかし、彼らには製造から数年経つと感情が芽生え、主人たる人間に反旗を翻す事件が発生する。そのため、最新の「ネクサス6型」には、安全装置として4年の寿命年限が与えられたが、脱走し人間社会に紛れ込もうとするレプリカントが後を絶たず、地球へ脱走した彼らは違法な存在と宣告された。そんな脱走レプリカント達を判別し見つけ出した上で「解任(抹殺)」する任務を負うのが、警察の専任捜査官「ブレードランナー」であった。

2019年11月ロサンゼルス地球に残った人々は酸性雨の降りしきる、高層ビル群が立ち並んだ人口過密の大都市での生活を強いられていた。ネクサス6型レプリカントの一団がオフワールドで反乱を起こし、人間を殺害して逃走、シャトルを奪い密かに地球に帰還した。タイレル社に入り込んで身分を書き換え、潜伏したレプリカントの男女4名(ロイ・バッティ、リオン、ゾーラ、プリス)を見つけ出すため、ロサンゼルス市警のブレードランナーであるホールデンが捜査にあたっていたが、リオンの反撃にあい負傷する。上司であるブライアントはガフを使いに出し、既にブレードランナーを退職していたリック・デッカードを呼び戻す。彼は情報を得るためレプリカントの開発者であるタイレル博士と面会し、彼の秘書であるレイチェルもまたレプリカントであることを見抜く。レイチェルはデッカードの自宅アパートに押しかけ問いただした結果、人間だと思っていた自分の記憶が作られたものだと知り、自己認識が揺さぶられ涙を流して飛び出してしまう。そんな彼女にデッカードは惹かれていく。

デッカードは、リオンが潜んでいたアパートの証拠物から足跡をたどり、歓楽街のバーで踊り子に扮していたゾーラを発見、追跡の末に射殺する。現場にブライアントとガフが訪れ、レイチェルがタイレル博士のもとを脱走したことを告げ、彼女も「解任」するよう命令される。その直後リオンに襲われて銃を落とすが、駆けつけたレイチェルが銃を拾ってリオンを射殺した事でデッカードは命拾いする。彼はレイチェルを自宅へ招き、彼女が自分のことも「解任」するのか問うと「自分はやらないが、他の誰かがやる」と告げる。そして未経験の感情に脅えるレイチェルにキスし、熱く抱擁する。一方反逆レプリカントのリーダーであるバッティは眼球技師のチュウを脅して掴んだ情報をもとに、プリスを通じてタイレル社の技師J・F・セバスチャンに近づき、さらに彼を仲介役にして、本社ビル最上階に住むタイレル博士と対面する。バッティは地球潜入の目的である、自分たちの残り少ない寿命を伸ばすよう依頼するが、博士は技術的に不可能であり、限られた命を全うしろと告げる。絶望したバッティは博士の眼を潰して殺し、セバスチャンをも殺して姿を消す。

タイレル博士とセバスチャン殺害の報を聞いたデッカードは、セバスチャンの高層アパートへ踏み込み、部屋に潜んでいたプリスを格闘の末に射殺。そこへ戻ってきたバッティと最後の対決に臨む。優れた戦闘能力を持つバッティに追い立てられ、デッカードはアパートの屋上へ逃れ、隣のビルへ飛び移ろうとして転落寸前となる。しかし、寿命の到来を悟ったバッティは突如デッカードを救い上げ、最期の言葉を述べた後、穏やかな笑みを浮かべながら事切れた。現場に現れたガフが不穏な言葉を告げ、デッカードはレイチェルにも同じ運命が待っているのではないかと慌てて自宅へ戻るが、彼女は生きていた。デッカードはレイチェルを連れ出し、逃避行へと旅立った。
登場人物・キャスト
リック・デッカード(Rick Deckard

演 - ハリソン・フォード本作の主人公。「殺し屋」としての仕事に疲れ果て、ブレードランナーを退職していたが、捜査のため強制的に復職させられる。
ロイ・バッティ[注釈 1](Roy Batty)
演 - ルトガー・ハウアー反逆レプリカントのリーダー。戦闘用レプリカント。製造番号:N6MMA10816。
レイチェル(Rachael)
演 - ショーン・ヤング本作のヒロイン。タイレル博士の秘書で、彼の姪としての記憶を移植されているレプリカント。
ガフ(Gaff)
演 - エドワード・ジェームズ・オルモスロサンゼルス市警の刑事。「シティスピーク(Cityspeak)」という、日本語ハンガリー語などが混じり合ったクレオール言語を喋る。また折り紙を折る手癖がある。
ハリイ・ブライアント(Harry Bryant)
演 - M・エメット・ウォルシュロサンゼルス市警警部。ブレードランナーの統括者で、デッカードを脅すようなかたちで復職させる。レプリカントを「人間もどき(skin-job)」と呼び侮蔑する。
プリス・ストラットン(Pris Stratton)
演 - ダリル・ハンナ慰安用レプリカント。バッティのパートナーで、彼の計画によりセバスチャンに接触する。製造番号:N6FAB21416。
J・F・セバスチャン(J. F. Sebastian)
演 - ウィリアム・サンダーソンタイレル社の遺伝子工学技師。早老症に侵されており、実年齢より老いた外見をしている。自宅アパートで自身が造り出した「ペット」と共に暮らしている。
リオン・コワルスキー(Leon Kowalski)
演 - ブライオン・ジェームズ労働用レプリカント。元は放射性廃棄物の運搬作業に従事しており、怪力の持ち主。製造番号:N6MAC41717。
エルドン・タイレル博士(Dr. Eldon Tyrell)
演 - ジョー・ターケルタイレル社社長。レプリカントを生んだ科学者でチェスの名手。
ゾーラ・サロメ(Zhora Salome)
演 - ジョアンナ・キャシディ女性レプリカント。暗殺用に再プログラミングされている。ルイスのバーにダンサーとして潜伏していた。製造番号:N6FAB61216。
ハンニバル・チュウ(Hannibal Chew)
演 - ジェームズ・ホン遺伝子工学者。タイレル社に雇われ、レプリカントの眼球を製作している。
デイヴ・ホールデン(Dave Holden)
演 - モーガン・ポール(英語版)ブレードランナー。リオンを取り調べ中に銃撃される[注釈 2]
タフィー・ルイス(Taffey Lewis)
演 - ハイ・パイク(英語版)ゾーラが潜伏していたバーの経営者。デッカードの尋問を受け流した。
カンボジア女性(Canbodian Lady)
演 - キミコ・ヒロシゲロサンゼルスの路上で商売をしている女。鱗の証拠物を調べ、合成ヘビであることをデッカードに伝えた。
スシマスター(Sushi Master)
演 - ロバート・オカザキダウンタウンの屋台“ホワイトドラゴン(白龍)”で働く日系人。 ハウイー・リー(Howie Lee)とも書かれているが、これは1997年発売のビデオゲームで付けられた名前。
アブドゥル・ベン・ハッサン(Abdul Ben Hassan)
演 - ベン・アスター(劇場公開版ではクレジットなし)合成動物を販売している商人。ゾーラに合成ヘビを販売した。シアトルのSF博物館(英語版)(Science Fiction Museum & Hall of Fame)に収蔵・展示されている、作中で使用された衣装
セバスチャンの衣装(左)レイチェルのドレス(中)ゾーラのレインコート(後列右)
内容解説

ネオ・ノワールを基調とした暗く退廃的な近未来のビジュアルは、公開当初こそ人気を得なかったものの、後発のSF作品に大きな影響を与え、所謂「サイバーパンク」の代表作の一つと見なされている[3]シド・ミードの美術デザイン、ダグラス・トランブルVFXメビウスの衣装デザイン、ヴァンゲリスシンセサイザーを効果的に使用した音楽も独自の世界観の確立に貢献した[4]

リドリー・スコットが「彼女は完璧だった」と評したレイチェル役のショーン・ヤング[5]、そしてプリス役のダリル・ハンナも本作をきっかけに注目されるようになった[6]

作中の風景に日本語が多く描かれている理由は、スコットが来日した際に訪れた新宿歌舞伎町の様子をヒントにしたとされている[7]。このことが日本人観客の興味をひくことになり、これらのシーンへのオマージュ・議論が生まれることになった。また、スコットは都市の外観は香港をモデルにしていることを述べている[8]。なお、香港のショウ・ブラザーズが制作費の大半を出資したために本作は事実上アメリカ・香港合作であり[9][10][11]、ショウ・ブラザーズの創設者である邵逸夫は本作で製作総指揮にクレジットされている。

1993年アメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録された。2007年視覚効果協会が発表した「視覚効果面で最も影響力がある50本の映画」で第2位にランクインした[12]2014年、イギリスの情報誌『タイム・アウト(英語版)』ロンドン版にてアルフォンソ・キュアロンジョン・カーペンターギレルモ・デル・トロエドガー・ライトら映画監督、作家のスティーヴン・キング、ほか科学者や評論家150名が選定した「SF映画ベスト100」にて、第2位にランクインした[13]
原作

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』とは設定や登場人物、物語の展開、結末などが翻案により大きく異なっており、原作というよりは原案に近い扱いである。

1968年の原作発表後から程なくして、いくつかの映画化交渉が持ち上がったが、いずれも不成立に終わっていた。1975年ハンプトン・ファンチャーは作者のフィリップ・K・ディックとの交渉を行ったものの成立せず、友人のブライアン・ケリーが交渉にあたり[14]1977年に承諾を取り付けた。ディック自身は制作会社に映画化権を売った後は関与していないが、ファンチャーが書き上げた草稿に彼は良い返事を出さず、何度も改稿が行われた。撮影開始後も映画の出来を不安視し、ノベライズ版の執筆も断っていたが、2019年のロサンゼルスを描いたVFXシーンのラッシュ試写を観て「まさに私が想像したとおりものだ!」と喜んだという[注釈 3]。監督のスコットは、就任にあたって全く原作を読んでいなかったが[15]、作品の世界観についてディックと何度も議論を交わしたことで、彼は映画の出来に確信を持つようになり、制作会社に「我々のSFとは何であるかという概念にとって革命的な作品となるだろう」と期待の手紙を送っている[16]


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