ブルーギル
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この項目では、魚のブルーギルについて説明しています。アメリカ海軍の潜水艦については「ブルーギル (潜水艦) 」をご覧ください。

ブルーギル

分類

:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
:条鰭綱 Actinopterygii
:スズキ目 Perciformes
:サンフィッシュ科 Centrarchidae
:ブルーギル属 Lepomis
:ブルーギル L. macrochirus

学名
Lepomis macrochirus
Rafinesque, 1819
英名
Bluegill

ブルーギル(: Bluegill、学名: Lepomis macrochirus) は、サンフィッシュ科に属する淡水魚の一種。北アメリカ大陸原産。同サンフィッシュ科のブラックバス、本種に形態が似たカワスズメ科ティラピア同様、日本でも分布を広げた特定外来生物である。
名称

本種の標準和名は「ブルーギル」である。鰓蓋(えらぶた)の後端に青黒い紺色の部分があり、鰓蓋(えらぶた)を英語でgill(ギル)と呼ぶことからブルーギルと名づけられた[1][2][3]

通称として単に「ギル」と呼ばれることもある[2]。原産地の米国カナダでは"bluegill"または"bluegill sunfish"と称され、"gill"と称されることはない。

サンフィッシュ類は北米大陸に広く分布し、現地では多くの種が生息し、ごく一般的な淡水魚であるため、文学作品にもしばしば登場する。しかしマンボウの英名が"ocean sunfish"で、こちらも単に"sunfish"とも呼ばれるため、英語圏の文学書を日本語に翻訳した際に、淡水産のサンフィッシュ類をマンボウと誤訳していることがある。
形態

成魚の体長は25cm程度になる[1][2][3]。原産地の北米では40p程になる。生後1年程度までの幼魚は体形がやや細く、体側に7から10本の暗色横帯がある[4]。しかし、成長とともに体高が高く変化し、体色も濃灰褐色から暗褐色となって横帯も不明瞭になる[4]

フライパンに収まりやすい魚=“パンフィッシュ”と呼び習わされるLepomis 属の中でもさらに最も体高があるため側面形は円形に近く、体幅は左右に強く側扁する。背鰭の棘条部と軟条部はつながっている[2]。口は小さい[2]。口内、唇内側には細かい鋸歯状の歯が並ぶ。

体型に加え胸鰭が小さいため直線的な遊泳力はやや弱いが、背鰭、腹鰭、尻鰭はよく発達して細かく体の向きを変える能力に富む。

体色は変異があるが、およそ若い個体が淡い青緑褐色で、成体になると黒に近い青紫色になることが多い。腹面は黄色みを帯び、群の中で地位の高いオスはさらに胸部がレッドブレストサンフィッシュやピラニア・ナッテリー等がそうであるように赤く染まる。

左右の鰓蓋の上部に突出した皮弁があり(若い個体にはほとんどない)、その部分が紺色になっている。この部分に由来して"Bluegill sunfish"(ブルーギル・サンフィッシュ : い鰓蓋のサンフィッシュ)、略してブルーギルと呼ばれる。また水面から本種を見ると鰭が鈍い光沢のある青色に見える事もある。背鰭、腹鰭、尻鰭に鋭い棘条があり、不用意につかむと刺さり、出血することもある。
生態

原産地は北米大陸東部[3][4]。淡水性。湖沼、ため池、堀、公園の池などに生息しており、湖では沿岸部の水生植物帯、河川では比較的流れが緩やかな水草帯に生息している[4]。山上湖から河口汽水域まで生存可能な水温・水質の幅は広く、溶存酸素が不足していなければ水質汚濁にも比較的強い。身を隠すのに適し水流を遮ってくれるような障害物や複雑な水中地形の場所を特に好み、そのような環境では多くの個体が密集する。若い小型個体は表層近くで活発に動き回るが、よく成熟した大型個体は深い位置であまり動き回らずにいる傾向にある。捕食者としてはブラックバスナマズカワセミなどがいると考えられ、稚魚はドンコに食べられる可能性もあると考えられている。

雑食性で、昆虫類、植物、魚類、貝類、動物性プランクトンなどを捕食する[4]。雑食性だが動物食性が強く[2]、特に他の魚類の卵を好む[3]。餌料生物が少ない時には水草も食べる[1]

繁殖期は春から夏。この時期になるとオスは縄張り意識と闘争性が極度に高まるとともに、水底の砂泥を口で掘って浅いすり鉢状の巣を作り、メスを呼び込んで産卵させる。産卵・受精が終わった後もオスは巣に残り、卵に新鮮な水を送ったり、ゴミを取り除いたり、卵を狙う他の動物を追い払ったりして卵を守る[5]。1回の産卵数は平均的な個体で21,000から36,000粒である[4]仔魚が孵化した後もしばらくは仔魚の保護を行う。ムギツクに巣を襲われ、托卵されることもある。
外来種問題釣られたブルーギル(アメリカ・ミズーリ州、Bilby Ranch Lake)。

ブルーギルは元々は北アメリカの中部・東部に広く分布する魚だが、移入された先々に定着し、世界各地に分布している。

小動物から水草まで食性は幅広く、汚染などにも適応力がある。さらに卵と稚魚は親が保護しているため捕食者は手を出しづらい。これらの習性からブルーギルは短期間で個体数を増やすことができ、各地で分布を拡げている。韓国イギリスでは生きた個体の持ち込みが禁止されている[6]。当初は食用として各地の試験場に配布され、養殖試験なども行われたが、成長が遅く養殖には適さないことが判明した。
日本国内
明仁との関係

日本への移入は、1960年に日米修好100周年を記念してアメリカ大統領から招かれて渡米していた当時の皇太子明仁親王が、シカゴ市長からシェッド水族館の4種の淡水魚が贈呈され、その中にブルーギル18匹が含まれていた。4種は当時の東京都南多摩郡日野町の淡水区水産研究所で飼育されることとなり、ブルーギル18匹の内、1962年まで15匹が生存した[7][8]

その15匹は淡水区水産研究所が食用研究対象として飼育した後、1966年静岡県伊東市一碧湖に放流した。このことは、2009年三重大学生物資源学部が発表したミトコンドリアDNAの解析結果により、全都道府県の56か所で採取した1,398体全ての標本の塩基配列が、アメリカ13地点で採取したサンプルのうちアイオワ州グッテンバーグ(英語版)で採取したものと完全に一致したことで証明された[9]

食用としても釣りの対象としても利用価値が低いブルーギルが日本国内に広く拡散したことについては、1980年代以降のバス釣りブームの際、バス釣り業界の関係者や愛好家の手により、ブラックバスの餌と称して各地の湖沼から別の湖沼へ放流されたものが繁殖し、日本中に分布を広げるに至った、という指摘が2000年代にあったが、根拠となる資料は充分ではなかった[6][10]

2014年に発表された研究では、1960年代から1970年代前半にかけての状況を、当時の内水面漁業や釣り関係の文献で詳細に調査しており、オオクチバスに付随する形ではなく、ブルーギル単独の野外放流や逸出が明らかになっている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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