ブラシノステロイド
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ブラシノリド(ブラシノステロイドの一種)の構造式

ブラシノステロイド (: brassinosteroid, BR) は、植物ホルモンの一種[1]ステロイド骨格をもつ化合物の一群である。植物体全身の伸長成長、細胞分裂と増殖、種子発芽などを促進する。またストレス耐性を誘導するが、これらの作用のほとんどは他の植物ホルモンと関連してはたらくものが多い。

1979年のブラシノリドの単離[2]以後、70種類以上のブラシノステロイド類縁体が植物から単離されている[3]。1997年に、細胞膜上のブラシノステロイド受容体としてBRI1 (BRASSINOSTEROID INSENSITIVE 1) が同定されている[4][5][6][7]
目次

1 発見の歴史

2 植物体内での合成・分布

3 効果

4 脚注

5 関連項目

発見の歴史

1970年にミッチェル (Mitchell) らはセイヨウアブラナ (Brassica napus) の花粉の抽出物にインゲンマメ幼体の成長促進作用があることを見出した[8]

1968年、丸茂らはイスノキ虫こぶにはイネの葉を屈曲させる活性があることを見出し、原因物質として3種類の成分を分離した[9]。当時の精製技術、機器の性能では構造決定は出来なかったものの、後にこれらの成分はブラシノライド同族体の混合物であることが確認された[10]

1979年、Groveらによってセイヨウアブラナの花粉40キログラムから活性物質として2ミリグラムのブラシノリド (brassinolide) が単離された[2]

1982年クリの虫こぶから、ブラシノステロイド類縁体のカスタステロン(castasterone、クリの学名 Castanea crenata に由来)が単離され[11]、それに続いて多数の類縁体が単離された。

1996年頃に生合成経路や遺伝子の欠損株が発見された。

植物体内での合成・分布

ブラシノステロイドはステロールから合成される。植物ではステロールはメバロン酸からスクワレン、スクワレンオキシド、シクロアルテノールの順に合成され、このシクロアルテノールからさらに植物の主要なステロールであるシトステロールカンペステロールおよびスチグマステロールが合成される。ブラシノライドはこのうち主にカンペステロールから合成される。カンペステロールは4段階の反応後に 5α-カンペスタノールに変換され、さらにカスタステロンまで変換されるが、この時B環のC6位の酸化が最初の反応で起きるか最後の反応で起きるかの2つの反応経路が存在する。このようにして合成されたカスタステロンが酸化されることでブラシノライドが合成される[12]

ブラシノステロイドは蘚苔類藻類を含む数々の植物で確認されているものの糸状菌細菌では発見されていない。ブラシノステロイドが植物体内のどの部分で生合成されているかは実験的に証明されていない。広く受け入れられている仮説の一つは、全ての組織がブラシノステロイドを生産している、というものである[13]。植物体内での分布は他の植物ホルモンと同様に花粉種子に多いがそれ以外のほとんど全ての部位にも存在している。に処理した場合の移動がなく、局所的に突然変異を起こした欠損株では正常部位と変異部位が混在することから、組織から組織への移動はせずに合成部位の近くではたらいているとされる。しかしその一方でから吸収させた場合茎頂に向かって移動することが確認されており、ブラシノステロイドの移動に関しては研究課題が残っている[13]。ブラシノステロイドは細胞膜に可溶であるが、細胞膜上で認識される[4]
効果

ブラシノステロイドの生理作用はブラシノライド発見以前から盛んに研究されていた。現在では40以上のブラシノステロイドが発見されており、このうちもっとも強い活性を持っているのがブラシノライドである。伸長成長、細胞分裂分化などの正の成長調節作用、耐ストレス作用があるが、植物にとって良好な環境下ではこのような作用は不明瞭且つ不安定であり、むしろ不良環境下や成長中の若い組織で顕著に現れる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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