ブラウフレンキッシュ
ブドウ (Vitis)
オーストリアのブルゲンラント州で育ったブラウフレンキッシュの房
種Vitis vinifera
別名モドラ・フランキーニャ、レンベルガー、ブラウアー・リンバーガー、フランコフカ (フランコニア)、ケークフランコシュ、ガメ (近縁種?)
原産地シュタイエルスカ地方 (現在はスロベニアの一部)
主な産地ショプロン、ヴィラーニー、セクサールドおよびエゲル
主なワインエグリ・ピカヴェール
ブラウフレンキッシュ (ドイツ語:Blaufrankisch、"青いフランクのブドウ")は、赤ワイン用の暗色の皮を持つブドウ品種である[1]。晩生品種であるブラウフレンキッシュは、典型的なタンニンが豊富な赤ワインを生産し、スパイシーな特徴を明確に発揮する[2]。
主に中央ヨーロッパに広範に栽培されており、オーストリア、チェコ (特に南モラヴィア州で"フランコフカ"として知られる)、ドイツ、スロバキア (現地では"フランコフカ・モドラ"と呼ばれる)、クロアチア、セルビア ("フランコフカ")、スロベニア ("モドラ・フランキーニャ"として知られる)、およびイタリアのフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州のワイン ("フランコニア"と呼ばれる)を含む。ハンガリーでは"ケークフランコシュ" (これも青いフランクの意)と呼ばれ、ショプロン、ヴィラーニー、セクサールドおよびエゲル (カダルカに大部分が置き換えられているもののエグリ・ピカヴェール(英語版) (エゲルの牡牛の血の意)として知られる有名な赤ワインブランドの主要なブレンド品種である)のワイン生産地域のいくつかで栽培されている。また、東ヨーロッパでの普及と評判のため、"東のピノ・ノワールと呼ばれることがある[1]。アメリカではこのブドウはアイダホ州、ワシントン州およびドイツに良く似た気候のニューヨーク州のフィンガーレイクス周辺で栽培されており、"レンベルガー"、"ブラウアー・リンバーガー"あるいは"ブルー・リンバーガー"として知られている。
DNA型鑑定ではブラウフレンキッシュがグーエ・ブラン(英語版) (ドイツではヴァイサー・ホイニッシュ;男系親)とブラウ・ツィメートトラウベ (アルガン (ドイツではブラウゲンズフュッサー)の子孫; 女系親)との交配であることが分かっている。歴史的なアンペルグラフ (ブドウ品種学)の情報源では、この品種の起源としての地理的領域は下シュタイアーマルク (今日ではスロベニアのシュタイエルスカ地方)であるという非常に堅実な証拠を提供してきた[3]。
ブラウフレンキッシュは、DNA分析が適用される以前からガメ品種のクローンであると誤って考えられていたが、これは形態学上のある種の類似性のためであるほか、ブルガリアでGameという別名で呼ばれていることも一因である可能性がある[1]。
ドイツ語名のレンベルガー (Lemberger)は、19世紀にオーストリア・ハンガリー帝国に含まれた当時のスロベニアの下シュタイアーマルクのレンベルク・プリ・シュマリエからドイツに輸出されていたことの名残である。1877年にレンベルガー種ブドウのドイツへの輸出の記録が残っている。ほぼ同じ名前のリンバーガー (Limberger)は、下オーストリアのマイッサウ(ドイツ語版)のリンベルクを指し、19世紀後半には「非接木のリンバーガー・ブラウフレンキッシュ」 (wurzelechte LimbergerBlaufrankisch-Reben)が販売された[1]。
ワシントン州は北米のいくつかの主要なワイン生産地域の一つであり、レンベルガーの栽培を行っている。このワシントンワイン(英語版)に使われるブドウはほとんどがヤキマバレー (Yakima Valley)で栽培されているが、オリンピック半島でも栽培されている。ミシガン州でも少量のレンベルガーが栽培されており、ニュージャージー州[4]、アイダホ州、ニューヨーク州、コロラド州[5]、 オハイオ州、バージニア州[6]、およびカリフォルニア州でも栽培されている[7]。
歴史と起源DNA分析でブラウフレンキッシュがグーエ・ブラン (写真)と別の不明品種との交配種であることが示されている
ブラウフレンキッシュが初めて公式の文書に現れたのは、1862年に行われたオーストリアのウィーンでのブドウ栽培の展覧会にこのブドウが含まれていたという記録だが、ブドウの存在自体ははるかに古く、恐らく中世には既にフレンキッシュ系の別名品種が存在していた。フレンキッシュという名称はドイツワインの生産地域であるフランケン地方から来ており、北西のバイエルン州、ハイルブロン=フランケン地域連合周辺のバーデン=ヴュルテンベルク州の北東部、テューリンゲン州の南部地域を含む。中世にはこの地域のワインは高く評価され、優れたワインを生産することができると考えられていたブドウは「フレンキッシュ」と呼ばれ、それほど高く評価されていないハンガリー由来のブドウと区別されていた。この時代から1900年代にかけてのある時期に、ブラウフレンキッシュ (文字通り青いフレンキッシュ)がこの地域で栽培され始めた可能性が高い[8]。
フランケン地方との密接な関係にもかかわらず、アンペルグラファー (ブドウ品種学者)達はダルマチアからオーストリアやハンガリーまで広がっている土地のどこかにこのブドウの起源が存在している可能性が高いと考えている。彼らの考えはこの地域に由来する別名が多数存在することに基づいており、DNA分析の証拠が古いハンガリーワインのブドウ品種であるケークフランコシュが実際にはブラウフレンキッシュと同種であり、グーエ・ブラン (ヴァイサー・ホイニッシュ)と未知のブドウ品種がブラウフレンキッシュの親品種であるということを示しているのと同程度に信じられている。フランス名であるにもかかわらず、グーエ・ブランは東ヨーロッパ起源と考えられており、"ホイニッシュ"という名称もフン族から派生したと推測される。また、グーエ・ブランは別のハンガリーワインのブドウ品種であるフルミントの親品種であると確認されているが、グーエ・ブランとブラウフレンキシュの両方の正確な発祥地は分かっていない[8]。
別名の"レンベルガー"や"リンバーガー"が最初に文献に現れるのは19世紀も終わりに近付いた頃で、このブドウがオーストリア=ハンガリーの都市であるレンベルク (今日のスロベニア)と下オーストリアのリンベルク (今日ではマイッサウとして知られる)が起源であるとの推測に関するものである。1875年、フランスのコルマールにある国際アンペルグラフ (ブドウ品種学)委員会はブラウフレンキッシュを公式に認可された名称として採択した[8]。
ブドウ栽培ワシントン州のレッドウィロー葡萄園(英語版)のブラウフレンキッシュの葉
ブラウフレンキッシュ種のブドウは早春の霜に感受性がある早生出芽品種として知られている。一方で晩生熟成品種であり、比較的暖かい葡萄園で栽培される傾向がある。