ブギーマン
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この項目では、伝説上の怪物について説明しています。その他の用法については「ブギーマン (曖昧さ回避)」をご覧ください。
『ブギーマンがやって来た』(フランシスコ・デ・ゴヤ画、1797年頃)

ブギーマン(英語: Bogeyman、Boogeyman、boogyman、bogyman、boogey monster、boogeyman、boogieman、ブーギマン、ブーゲイマン)は、子供たちが往々にして信じている、伝説上の、もしくは民間伝承における幽霊に類似した怪物である。
概要

ブギーマンには、いかなる特定の外観もない。実際のところ、同じ近所でも家によって全く異なる姿で信じられていることもある。多くの場合、ブギーマンは子供たちの心の中で、いかなる形も持たず、単に不定形の恐怖が実体化したものである。気になる恐ろしい人物や事象に対し比喩的に用いられることもある。親は、子供が言うことを聞かない時に「ブギーマンがさらう」と脅し、言うことを聞かせようとする。ブギーマンはおそらくスコットランドが発祥であり、そこではこのような存在が、ボーグル(bogles)、ボガート(boggarts)、ボギー(bogies)などと呼ばれる[1]

ブギーマン伝説は、土地により異なる。あるところではブギーマンは男性であり、他のところでは女性である。米国中西部のどこかでは、窓を引っ掻く。また、寝台の下にいたり、箪笥の中だったり、子供が夜寝ないと食べたりする。イボを伝染したりもする。子供のする悪いこと、たとえば指シャブリのみを標的にすることもあれば、悪いこと一般を目標にしたりする。

アイルランドでは、沼地(bog、ボグ)にこの様な妖精が棲んでいて、子供と遊びたいために一年と一日間誘拐するという。
語源

「bogey」はおそらく「恐ろしい幽霊」を意味する中世の英単語「bogge/bugge」に由来する[2](これは「bug」の語源でもある)。他の欧州言語にも同語源のものがある。 bogge, boggel-mann(英語の「ブギーマン」に相当)(ドイツ語), Buse (ニーノシュク), bocan, puca, pooka or pookha (ゲール語), pwca, bwga or bwgan (ウェールズ語), puki (古ノルド語), pixieあるいはpiskie (コーンウォール語), puck英語), bog?(?) (スラヴ語派[3]
他の未検証の語源

この言葉は東南アジアでは一般に、インドネシアのスラウェシ島南岸の海洋民族のブギス人(Bugis)[4]またはブギス人海賊(Buganese pirates)[5]を指し示す。これらの無慈悲な海賊は、初期のイングランドオランダ東インド会社の貿易船を苦しめた。一般には、欧州の船乗りが東南アジアから恐ろしい海賊を意味する「ブギ・マン」という言葉を持ち帰ったものとも信じられている。しかし語源学者は、欧州による東南アジア植民地化の何世紀も前から「ブギーマン」の原型となる単語が用いられていたこと、当時西洋人がブギス人を知っていたとは考えがたいことから、この考えを否定している。また、イギリス人がナポレオンに対して用いていた蔑称「Boney」から派生し、時を経て「Boneyman」、「Bogeyman」へと変化したという説もある。
異文化圏での類似する怪物

このような存在はほぼ普遍的なもので、さまざまな国の伝承にある。

アゼルバイジャン 子供をおとなしくさせる類似の生き物はホハン(khokhan)

ブラジルポルトガル 聞き分けのない子供を脅すという同目的の類似の生き物が存在し、「袋の男」(ポルトガル語: homen do saco)と呼ばれる。サンタクロースのように袋を担いだ成人男性で、浮浪者のようななりをしていて、悪い子を集めて売り払う。子供が聞き分けのない時に、「袋の男」を呼んで持っていってもらうように子供に言う。類似の怪物にはビチョ・パパオ(bicho papao、食獣)もいる。

ブルガリア ブルガリアでは行儀が悪い子供には、黒い恐ろしい化け物のような男「トルバラン」(Торбалан、Torbalan、袋を持った男)がやってきて、さらって大きな袋に詰めると言われる。スモリャン州のある村では、「タラスム」(Таласъм、Talasam)と言う名の毛の生えた黒い幽霊の如き生き物が、納屋の陰や屋根裏に棲み、夜な夜な子供を脅すと信じられている。

チェコ共和国 ブバク(bubak、怖いもの)ハストルマン(hastrman、案山子)がチェコでのブギーマンである。トルバランのごとき袋を持ち子供を連れ去る類人である。しかしながら、成人も連れ去り、川の土手に隠れ軽率な人をおびき寄せるために、迷子の赤子の泣声のような音をたてる。満月の夜に機織りをし、盗まれた魂のために服を作り、猫の引く車に乗る。

デンマーク デンマーク版はブッセマンド(bussemand)。寝台の下に隠れ、寝ない子供を持ち去る。英語と同様、鼻水を意味する俗語でもある。

フィンランド フィンランド版はモルコ(Morko、フィンランド語)またはモラン(Marran 、スウェーデン語)。モランはムーミン(原作はスウェーデン語)に出てくるものが有名であり、恐ろしい暗い青色の大きな幽霊のような生き物である。

フランス フランス版はクロックミテーヌ(le croque-mitaine、手袋噛み)。

ドイツ ドイツではシュヴァルツェマン(Der schwarze Mann、黒い男)かブッツェマン(Butzemann)。黒は皮膚の色を指し示すのではなく、箪笥の中、寝台の下など、子供たちが夜間に恐れる暗いところに隠れていることを示す。また子供のゲームで"Wer hat Angst vorm schwarzen Mann?"(黒い男を怖がっているのは誰だ)というものがある。

ギリシャ ギリシャ版はバブラス(Baboulas)。いろいろな場合があるが、たいていは寝台の下に居る。

ハイチ ハイチでは、ブギーマンは巨大で、よい子の所へくるクリスマスおじさん(Tonton Noel)の相方。よくない子供を拉致し袋詰めにすることで名が高い。当地のクレオル語での名はトントン・マクート(Tonton Macoute、麻袋おじさん)。

ハンガリー レーズファスー・バゴイ(Rezfaszu bagoly)。言葉の意味は、銅のペニスのフクロウ。よくないことをした子供を脅すのに使う言い回しは、「銅のちんちんのフクロウがお前をさらっていく」。

インド インドでは各地で異なる名前がある。

北インド 子供たちは、捕獲した子供を入れる袋(bori)を持ったボリバラ(Bori Bara)が来ると脅される。類似のチョーンキ・ダール(Chownki Daar)は寝ない子供を持ち去る夜警を指す。

南インド タミル・ナードゥ州では、二つ目玉のテライ・カナン(Terrai Kannan)かポーチャーンディ(Poochaandi)が来ると脅される。アーンドラ・プラデーシュ州での相当版は、ブチュドゥ(Buchdu)。


イラン ペルシャ文化では、行儀の悪い子供たちは、ルル(lulu、????)が悪い子を食べる、と脅される。ルルはたいていルル・コルコレ(lulu-khorkhore、全部平らげる怪物)と呼ばれる。この脅迫は、たいていちいさな子供たちに食事を食べさせるのに使われる。

イタリア イタリア相当版はウオモ・ネロ(l'uomo nero、黒い男)、背が高く、黒い上着、黒い頭巾か帽子で顔を隠す。時に、親はいかにも誰かがドアを叩いているかのように食卓の下を強く叩き「さて、どこぞにスープを飲まん悪い餓鬼がいるか知っている黒い男がきたぞ」という。この黒い男は、子供を食べたり傷つけたりはせずに、ただどこか不思議な恐ろしいところへ連れ去るのみである。多くの子守唄では一ヶ月間子供を隠すとなっている。黒色はファシズムを連想させるので、黒い男という語は大人の政治風刺でも用いられる。1980年以後、皮膚の色が黒い人たちを意味するnegroにneroがとって代わったので、人種主義者による風刺にも用いられる。ほかには、カルタゴの将軍であるハンニバル(Hannibal)も使われる。ハンニバルは古代ローマの最大最強の敵とされていたので、ローマの文化の重要なものとなった。ローマに対する脅威はあまりにも大きかったので、その恐怖心はながらくイタリアに残っていた。かつては「お行儀よくしなさい。そうしないとハンニバルがきてさらっていってしまいます」というのが悪童をしつけて矯正する手段とされており、今日においても同様である。

日本 柳田国男は、コトリゾ、カクシババなどの伝承を書籍に記載している。また、「油取り」「隠れ婆」など子供を連れ去る隠し神神隠し)の存在が各地で語り継がれている。かつては「むくりこくりの鬼」が来るという脅し文句もあり、一般には元寇にちなんでいるとされる。

メキシコ エル・ククイ(el Cucuy)。社会学教授マヌエル・メドラノが言うには、ククイは小さな亜人間で赤く光る目があり、箪笥の中か寝台の下に居る。メドラノは「ある伝承では暴力の被害者であった小さな子供とされており、…、生きてはいるが、生きてはいない」という(Xavier Garza’s 2004 book Creepy Creatures and other Cucuys.からの引用[6]


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