ブカレスト地下鉄(ブカレストちかてつ、ルーマニア語:Metroul Bucure?ti(メトロウル・ブクレシュティ)、英語:Bucharest Metro(ブカレスト・メトロ))は、ルーマニアの首都ブカレストを走る地下鉄である。通称はメトロウ(Metrou)。
運営会社はメトロレックス(Metrorex)。ブカレストでは最もよく利用される公共交通機関のひとつであり、平均して週に延べ75万人の利用者を運ぶ[1]。2015年現在の路線の総延長は69.25キロメートル、51の駅が設置されている。 ブカレストの地下鉄計画は1930年代末に、ブカレストの都市近代化計画の一環として持ち上がった。1938年、ブカレストの当局は地下鉄の計画と建設に関する職務をS・A・メトロポリタヌル社(S.A. Metropolitanul)に割り当て、1941年の開業を目指したものの、第二次世界大戦の勃発とその後の共産主義化の混乱の中で計画は中止された。 1970年、都市の急速な開発の進行に伴って、それまでの公共交通システムは限界をむかえていた。このことに関して委員会が設置され、委員会はブカレストへの地下鉄システムの導入を求めた。共産主義時代のルーマニアの大型建設プロジェクトには国民の館をはじめ不要であったと見られるものが多い中、この地下鉄計画は「共産主義時代の大型建設プロジェクトの唯一の成功例」とも評される。 ブカレストの地下鉄建設は他の東ヨーロッパ諸国とは異なっていた。まず、駅のデザインはシンプルで、輪郭のくっきりした現代的なデザインが採用され、モザイクやけばけばしい照明、過度の装飾は排除された。駅は乗り換えなどの利便性を第一に設計されている。また、他の東ヨーロッパ諸国とは異なり、車両のほとんどがルーマニア国内で製造されたものであるが、これはかつて国の政策により機器・技術の輸入が制限されていたことによる[2]。各駅は同じ色をテーマに統一され[注 1]、また計画は公開されていた。それぞれの駅がそれぞれ異なる姿になるように設計された。しかし、1980年代にはエネルギー節約のために照明が控えられ、駅は薄暗かった。ブカレストはルーマニア最大の都市であり、東ヨーロッパ全体でみても有数の規模を誇る。そのため、その地下鉄の規模も巨大であり、プラハ、ブダペスト、アムステルダムなどの地下鉄よりも大きい。計画路線がすべて完成すると、その総延長は100キロメートルを、駅の数は80を超える。ガーラ・デ・ノルド1駅に進入する車両 (M1号線、ドリストル2駅方面) 1979年11月16日、M1号線の区間が初めて開通した。開通したのはティンプリ・ノイ駅からセマナトアラ駅までの区間6.2キロメートルで、6つの駅があった。その後、次の区間が順次開通していった。 ヴィクトリエイ駅などの乗換駅には2つのターミナルがあり、それぞれヴィクトリエイ1駅、ヴィクトリエイ2駅と言うように異なる名称がつけられている。ネットワーク図ではそれらは接続して描かれており、実際に同じ駅の構内に階の異なる2つのターミナルがある。ただし、ガーラ・デ・ノルド1駅とガーラ・デ・ノルド2駅は別々に分かれており、この駅で乗り換える際は一度改札を出たうえで、その先の区間のチケットを新しく買う必要がある。そのため、M4号線とM1号線の間を乗り換える際はひとつ手前のバサラブ駅を利用する。 一般的にブカレスト地下鉄の駅は巨大な地下空間を特徴としており、その中でも最大の地下空間を持つピアツァ・ウニリイ駅はアウトレット店やファーストフード店を備え、地下通路は複雑に入り組んでいる。 メトロレックス(Metrorex)はブカレスト地下鉄を運営しているルーマニアの会社。一方、路面電車やトロリーバス、市バスといったブカレストの地上の公共交通機関はRATBによって運営されており、運営主体が異なる。 2015年現在、ブカレスト地下鉄の路線の大部分が地下を走っているが、M2号線南端のベルチェニ(旧デポウルIMGB)駅付近のみ地上区間である。 色路線名開業年建設中・計画中を含む全区間開業済み区間 車両は次の2種類がある。 アストラ製の車両は2両固定編成であり、M1号線とM3号線では、それが3本からなる長さ120メートルの6両編成で運行されている。一方、M4号線では2両編成×2本の4両編成となっている。アストラ製の車両は1978年から1993年の間に製造されたもので、次第に耐久年数を過ぎつつあり、改修または廃車が進んでいる。M2号線にはボンバルディア製の車両が導入されている。ボンバルディア製の車両は6両固定編成であり、6両ある車両は全て人が行き来できる。 アストラ製の車両は252本あり、うち181本が使用されている。2本または3本の編成によってひとつの列車を構成するため、この181本からおよそ60編成が構成され、うち30編成から50編成は日常的に使用されている。ボンバルディア製の列車は40本あり、いずれも日常的に使用されている。 ボンバルディア製の列車にはそれぞれ愛称がつけられている。M2号線の車両には花の名前が、M1/M3号線の車両には欧州連合諸国の首都の名前がつけられる。列車番号は4ケタからなっている。 番号と愛称は次の通り: M2号線の列車M1/M3号線の列車
歴史
1981年12月: M1/M3号線 ティンプリ・ノイ駅 - レプブリカ駅; 10.1キロメートル、6駅
1983年8月: M3号分岐線 エロイロール駅 - インドゥストリイロール駅; 8.63キロメートル、5駅(後にゴルジュルイ駅が1991年に追加される)
1984年12月: M1号線セマナトアラ駅 - クルンガシ駅; 0.97キロメートル、1駅
1986年1月: M2号線 ピアツァ・ウニリイ駅 - デポウルIMGB駅(後にベルチェニ駅に改名); 9.96キロメートル、8駅
1987年10月: M2号線ピアツァ・ウニリイ駅 - ピペラ駅; 8.72キロメートル、6駅
1987年12月: M1号線クルンガシ駅 - ガーラ・デ・ノルド1駅; 2.83キロメートル、2駅
1989年8月: M1号線ガーラ・デ・ノルド1駅 - ドリストル2駅; 7.8キロメートル、6駅
1990年1月: M1/M3号線レプブリカ駅 - パンテリモン駅; 1.43キロメートル、1駅(単線)
2000年3月: M4号線ガーラ・デ・ノルド2駅 - 1マイ駅; 3.6キロメートル、4駅
2008年11月: M3号線ニコラエ・グリゴレスク2駅 - リニア・デ・チェントゥーラ駅; 4.7キロメートル、3駅
2011年7月1日: M4号線1マイ駅 - パルク・ブラジレスク駅; 2.62キロメートル、2駅
2017年3月31日:M4号線パルク・ブラジレスク駅 - ストラウレシュティ駅; 1.89キロメートル、2駅[3]
2020年9月15日:M5号線ルウル・ドアムネイ駅/ヴァレア・ヤロミツェイ駅 - エロイロール駅; 6.87キロメートル、10駅[4]
メトロレックス
ネットワーク
M1号線1979年ドリストル駅 - パンテリモン駅
M2号線1986年ピペラ駅 - ベルチェニ駅
M3号線1989年プレチズィエイ駅 - アンゲル・サリニー駅
M4号線2000年ガーラ・デ・ノルド2駅 - ストラウレシュティ駅ガーラ・デ・ノルド駅 - パルク・ブラジレスク駅
M5号線
M6号線
列車ボンバルディアの車両。ピペラ駅にて。アストラIVA地下鉄, 1980年代
アストラ・ヴァゴアネ・カラトリ (Astra Vagoane C?l?tori) 製(1978年-1993年製造) - 252本
ボンバルディア製 Movia BM2 および BM21 (2002年-2008年製造) - 44本
最初のケタは車両の向きを表し、前半部は1、後半部は2となっている。
次のケタは路線を表し、0はM2号線、1はM1/M3号線を表している。
後半の2ケタは車両を表す通し番号である。
1001 & 2001: ダリア(Dalia、ダリア)
1002 & 2002: ナルチサ(Narcisa、スイセン)
1003 & 2003: カメリア(Camelia、ツバキ)
1004 & 2004: ザンビーラ(Zambila、ヒヤシンス)
1005 & 2005: ヴィオレータ(Violeta、スミレ)
1006 & 2006: マルガレータ(Margareta、フランスギク
1007 & 2007: ブジョロウ(Bujorul、ボタン)
1008 & 2008: クリザンテーマ(Crizantema、シマカンギク