「whodunit」はこの項目へ転送されています。GLAYの楽曲については「whodunit/シェア」をご覧ください。
『僧坊荘園』では、シャーロック・ホームズが、何者かに殺害されたユースタス・ブラックンストール卿の殺人事件を捜査する。
フーダニット(「whodunit」、または「whodunnit」。「Who [has] done it?(誰がそれをやったか)」の口語的な省略形)は、誰が犯罪を犯したのかという謎に焦点を当てた、複雑な筋書きのある推理小説を指す[1]。読者や視聴者には、「犯人の正体を推理するための手がかりが与えられ、物語のクライマックスでその正体が明らかになる」といった展開が描かれることが多い。捜査は通常、風変わりな素人またはセミプロの探偵によって行われる。このような物語の展開は、脅かされた社会の平穏に秩序を取り戻す喜劇の一形態と考えられている[2]。 フーダニットは、古典的な推理小説の典型に沿ったもので、犯罪を探偵役が投げかける質問の連鎖によって解決されるパズルとして提示するものである[3]。しかし、フーダニットでは、読者も主人公と同じように犯罪捜査の過程で推理をする機会が与えられる。これにより、読者は犯罪捜査の専門家である捜査官と競争したり、裏をかいたりしようと努力するようになる[4]。 「フーダニット」の物語の特徴は、いわゆる二重物語構造(double narrative)である。つまり、そういった物語形式では、2つの物語が同時進行で起きている。そして、ある物語が表のストーリーとして語られ、すべての状況が提示される一方で、別の物語は隠され徐々に全体像が明らかにされる展開となる[5]。この特徴は、ロシアの文学用語である「シュジェートとファーブラ
コンセプト
二重物語は構造としては深い構造となっているが、特に時間と物語自体を分けて考えることの2つに関しては特殊である[6]。2つの物語が共存しており、第1の物語では犯罪そのものやその原因、解決のための捜査に焦点が当てられ、第2の物語では犯罪の再構築がテーマとなっている[6]。ここでは、ディエゲシス(英語版)、つまり登場人物の調査レベル程度での生き様や背景などがファントムナレーションを生み出し、物や身体、言葉が探偵と読者の双方にとって解釈と結論を導くためのサインとなる[6]。例えば、推理小説では、謎を解くためには、犯人が起こした事件を再現する必要がある。しかし、この過程では、原因や動機、犯罪とその結果についての知見を得るために、探偵は精査に耐えうる仮説を立てることも必要となる[7]。こういった探偵役による説明パートは、犯罪に関連する第1の物語のほかに、第2の物語を構成する[7]。
フーダニットとスリラーを区別する主な要素として、二重物語が挙げられる。フーダニットは、犯罪と捜査の両方の時間軸を再構築しながら物語が進むが、スリラーは1つのストーリーの中で行動と一致させながら物語が進む[8]。ツヴェタン・トドロフによれば、時間的論理の観点から、フーダニットの物語は、未来の出来事ではなく、すでに知られていて、ただ待っているだけの出来事に関連して物語が展開されるため、一般にフィクションのパラダイムと考えられている[8]。ただし、そのような確実性は犯罪に関わるものであり、読者が未知の未来の一部として予想しなければならない犯人の正体に関わるものではない[8]。 Merriam-Webster Dictionary
歴史
「フーダニット」は、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の[13]、いわゆる探偵小説の「黄金時代」(英語版)に栄え、犯罪小説の主流となった。アガサ・クリスティ、ニコラス・ブレイク、G・K・チェスタトン、クリスチアナ・ブランド、エドマンド・クリスピン、マイケル・イネス、ドロシー・L・セイヤーズ、グラディス・ミッチェル、ジョセフィン・テイなど、この時代に活躍した有名な「フーダニット」ミステリ作家の多くはイギリス人である。また、S・S・ヴァン・ダイン、ジョン・ディクスン・カー、エラリー・クイーンのように、アメリカ人でありながら「イギリス」のスタイルを真似た作家もいる。