フリーフォントとは、利用許諾契約またはライセンスで無償使用を許可するフォント(とりわけデジタル・フォント)である。これらは概ねフリーウェアであり、プロプライエタリなフォント、または販売や商用利用を禁ずるものも含む。フォントの利用条件がGPLなどのフリーソフトウェアライセンスもしくはオープンソースライセンスの場合、「フリーソフトウェア・フォント」(英: Free software typefaces, フリーソフトウェア書体)もしくは「オープンソース・フォント」と呼び、まとめてオープンフォント(Open Fonts)と呼ぶこともある。ただし通常「オープンフォント」といえば「OpenTypeフォント」を指す場合が多い。また「フリーソフトウェア・フォント」のみを指してフリーフォント(Free Font)と呼ぶ場合もある(英語圏ではこちらのケースが多い)。この場合は「(商用利用や改変、頒布の)自由な利用を許可するフォント」の意味である[1]。またFLOSSとの類推で、"libre font"(仏: font libre, 「自由フォント」)やlibre typeface(自由書体)という語が使われる場合もある[2]。 欧文では多種多様なフリーフォントが製作されており使用の環境も整えられているためよく利用されている[3]。欧文フォントにはフォントファイルの容量が小さいという特徴があり、WEBサイトなどでは画像に代えてフォントを用いていることも多い[3]。 日本語のフォントは作成のために多くの知識が必要となる。また、その字種が多いために作成するのに時間や費用が多くかかる。特にフリーフォントの場合、昨今の商用フォントと違い全文字を手作業で作る場合が多いため、JIS X 0208やJIS X 0212、JIS X 0213をすべて網羅するフォントは数が少ない。 以下のようなフリーフォントが作られている。 また、既存のビットマップフォントをpotraceなどでトレースし、アウトラインフォント化されることがある。 フォントは、スプライン曲線(ベジェ曲線)の頂点(制御点)情報並びにグラフ情報のデータ集合であるグリフや、フォントヒンティング・プログラムなどを内包するバイナリである[4]。フリーフォントにはそのソースコードに当たる情報(たとえばグリフ・データなど)が公開されない場合もある。しかしながらフォントのライセンスがオープンソースライセンスやフリーソフトウェアライセンスの場合、ソースコードが公開されている。ライセンスによっては、受領者から要求された場合、ライセンシーはコードを公開しなければならない。一例を挙げると、Linux Libertineというフォントはウィキペディアのロゴに採用されているフォントであり、GPLとOFLのデュアルライセンスで使用が許可されている。これはライセンシーにGPLでの利用も許諾していることに相当するため、フォントの改変や二次的著作物の作成を可能な状態にしなければならず、事実、同フォントのプロジェクトでは、フォントのソースコードに当たる「スプライン・フォント・データベース」(Spline Font Database, SFDファイル[5])を公衆に公開している[6][注釈 1]。その他さざなみフォントや花園フォント、Ubuntu-Titleではソースコードにあたるデータが公開されている。
言語とフリーフォント
フリーフォントの種類
既存フォントの代替フォント
ポケットコンピュータや商用OSなどの標準のフォントが見難いために代替のビットマップフォントが作られた。美咲フォント(恵梨沙フォントの代替)や小夏フォント(Haruフォントの代替)など。のちにアウトラインフォント化されたものもある。
旧Mac系(MacOS 8.1以前)
足りない文字はOsakaから補完されることを前提としている。へた字フォントやダサ字フォントなど手書き風フォントが多く、全てが丸漢ファイル形式のビットマップフォントであった。のちにアウトラインフォント化されたものもある。
Unix・Linux系
UnixやLinuxのフォントのために開発されている。初期はXやTeX用のBDF形式のビットマップフォントが開発されたが、最近はデスクトップで使うためのアウトラインフォントが開発されている。古くはK14に始まり、東風フォント、さざなみフォント、VLゴシックなどがある。多くがオープンソースライセンスを採用している。
研究系
研究のために開発されている。グリフの合成や自動生成、多くの文字への対応などを目指す。和田研フォント、GT書体、花園フォントなどがある。
AA用フォント
初期はWindows以外で2ちゃんねるを見るために開発されたが、後に綺麗なフォントで2ちゃんねるを見たいという理由も加わった。モナーフォントやIPAモナーフォントなど。
模倣・再現フォント
特定の用途で用いられているが、フォントデータとして存在しない書体を再現したもの。趣味用途に用いられることが多い。GD-高速道路ゴシックJAや国鉄方向幕書体・機械彫刻用標準書体フォントなど。
著作権の無いフォント(パブリックドメイン・フォント)
著作権の切れたフォント、もしくは著作権の発生しないフォント。GL-Tsukiji-*、GlyphWikiなど。
合成フォント
複数のフォントをFontForgeなどで調整・合成したフォント。英数やカナを好みのものに入れ替えたり、足りないグリフを他のフォントで補うために行われている。UmePlusやSystema、Koruriなど。
趣味など
フォントを作成するデザイナーが一部のデザインフォントをフリーで公開しているものなど。
データの公開について
歴史
1986年 Fontographerが発売され、フォントの作成が可能となる
1987年 橘浩志によりK14フォントが作られる[7]
1990年4月 東京大学の和田英一により和田研漢字分科会が発足、和田研フォントの開発が開始[8]
1992年3月 和田研漢字分科会が終了[8]
1995年 振興会産学共同研究支援事業として「人文系多国語テクスト・プロセシング・システムの構築に関する研究」が発足、GT書体の開発が開始される
1995年 マイクロソフトによりWindows 95が発売され、外字エディタが標準搭載される
1996年 日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業として「マルチメディア通信システムにおける多国語処理研究プロジェクト」 が発足、GT書体の開発が引き継がれる
1996年4月 シェアウェアのTTEditが発売され、Windowsでの安価なフォントの開発ができるようになる
1998年10月? 高野琢巳により古いMac用フォント(丸漢ファイル)をMacOS8.5以上に対応させるフリーソフト へたダサヘルパーが公開される。名前はへた字フォントおよびダサ字フォントから取られている。
2000年1月 JIS X 0213の規格が規定され、これによりJIS X 0213対応のフリーフォントの需要が高まり、複数のフリーフォントの開発が始まる[9]
2000年10月 フリーのフォント開発ツールであるPfaEdit(現在のFontForge)が公開される
2000年11月 東風フォントの開発が開始される
2001年ごろ 東雲フォントを基にMS P ゴシック 12px幅互換にしたアスキーアート用のフォントであるモナーフォントが作られる
2001年 「マルチメディア通信システムにおける多国語処理研究プロジェクト」が終了、東京大学多国語処理研究会が設置されGT書体の開発が継続される
2002年ごろ M+ FONTSの開発が開始される
2003年 情報処理推進機構(IPA)によってIPAフォントが公開される
2003年10月 渡邊フォントが基にしていたLABO System 123に含まれるフォントが商用フォントに酷似していたことが発覚し、渡邊フォントを基に開発されていた東風フォントの公開が停止し、採用していたLinuxディストリビューションに多大な影響を与える。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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