フォール技
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フォール技(フォールわざ)、ピンフォール技、抑え込み技/押さえ込み技(おさえこみわざ)[1] 、カバー技 (cover) とは、プロレスの試合で相手選手からピンフォールを奪うために使用されている技のこと。
概要

フォール技はプロレスにおける試合の決着方法の一つであるピンフォールを相手から奪う目的で相手に仕掛ける技の総称である。大まかに分けて以下の2つのパターンに分けることが出来る。
何かしらの
プロレス技を相手にかけることにより相手にダメージを与えた上で、ピンフォールを奪うためにフォール技を仕掛ける。この場合、事前に掛ける技が事実上のフィニッシュ・ホールドであり、フォール技はあくまでピンフォールを奪う手段として掛けたもので、ダメージ等を重視しないシンプルなフォール技が使用される。体固め片エビ固めエビ固めなどがそうである。

相手の一瞬の隙をついたり、相手が掛けてきた技を切り返してフォール技を掛け、意表を突くことによって相手からピンフォールを奪う。少しでも相手に返されにくくするため、相手を腕や脚を掴んだり、体を「く」の字に丸めたりするなど複雑な形が多い。また、素早く相手にかける技も多い。一般的に丸め込み技やクラッチ技と呼ばれ、これにより勝利を奪う、あるいは奪おうとする行為を丸め込む、クイックと呼ぶ。#丸め込み技を参照。

この他にジャーマン・スープレックスパワーボムダイビング・ボディ・プレスなど、技自体でピンフォールを奪うことが出来る投げ技や飛び技などがあるが、これらは原則フォール技に含めないが、広義のフォール技では含む場合がある。
クイック

クイック(Quick)は、一瞬の隙を突いて相手を押さえ込み、ピンフォールを奪って勝利する行為である。

格下の者が格上の相手に勝つ場合に使われることが多い用法であり、格上の者がフォールを奪いに来た際に、隙をついて丸め込んで逆転勝利するといったものである。大技で格上の相手に大きなダメージを与えたうえでのスリーカウント勝ちや、ギブアップによる勝ちではないため、実力的に相手より上回ったことを証明するような勝ち方ではないが、勝ちは勝ちである、という意味がある。主に一瞬の逆転技であるため、対戦相手の名前にもそれほど傷を付けることがない。クイックを使用し勝敗を決することで両者間での抗争アングルをより本格化出来る利点がある。また、若手の格上げの第一段階に使われる。

その他にも、試合終了時間が迫ってきた時に丸め込みの応酬を行ったり、タッグマッチなどで仲間割れから丸め込んで決着するなどのポピュラーな用例がある。また、若手が明らかに格上の相手に挑戦するときなど、はじめから丸め込みを狙う場合や、どんな相手にも丸め込みを仕掛ける(丸め込みを自分の持ち味とする)レスラーもいる。

かつては、NWAが健在だった時代は、パット・オコーナーリック・フレアーらのNWA世界ヘビー級王者によって、クイック技での決着はよく行われていた。これは、挑戦者がその地区ではベビーフェイスであり、NWAがそれら各地区の連合体であるため、クイック技や王者反則負け防衛という「挑戦者に傷を付けない防衛手段」が必要とされていたためである。
クイック技で決着した主な試合

ジャイアント馬場&アントニオ猪木 vs. アブドーラ・ザ・ブッチャー&タイガー・ジェット・シン(1979年8月26日のプロレス夢のオールスター戦
オールスター戦のメインイベントとして当時のライバル団体であった全日本プロレス新日本プロレスの日本人エースコンビとヒールの外国人エースコンビが対戦したタッグマッチ。馬場と猪木としては自分たちがフォールを取られることはもとより、自団体のトップヒールに傷を付ける(ブッチャーが猪木に、またはシンが馬場にフォールされるなどの)事態も避けねばならず、かといって両者リングアウトなどの曖昧な決着も避けたいという局面であった。結局、猪木が自団体の外国人エースであるシンを逆さ押さえ込みでフォールして両団体の面目を保った。

スタン・ハンセン vs. ジャイアント馬場(1984年7月31日のPWFヘビー級選手権試合)
当時、絶頂期にあったハンセンに対して46歳とすでに全盛期を過ぎていた馬場が「この試合でタイトル奪還が出来なければPWFのタイトル戦線から降りる」と宣言して臨んだ試合。リングアウト勝ちや反則勝ちでは観客の納得を得られず、かといって大技の連続で勝つ力は明らかになくなっていた馬場が、ボディ・スラムにきたハンセンをスモール・パッケージ・ホールドで丸め込んで勝利。全日本復帰後のハンセンから初のフォール勝ちを収めると共にPWFヘビー級王者に返り咲いた。

ジャンボ鶴田 vs. 三沢光晴(1990年6月8日)
天龍源一郎の離脱で大ピンチに追い込まれた全日本を救うべく、2代目タイガーマスクだった三沢がマスクを脱いで鶴田への挑戦を宣言して組まれたシングル戦。「怪物」「完全無欠のエース」といわれた鶴田の実力は圧倒的で鶴田が有利の試合展開となったが三沢も随所で奮戦、最後には三沢のバックドロップを鶴田が反転して押しつぶしたところで三沢がさらに反転して一瞬のフォール勝ちを奪った。三沢の次期エースの座を決定的にした試合で「格下の者が格上の相手に勝つ場合」としてのクイック技の代表例。

秋山準 vs 小川良成(2002年4月7日GHCヘビー級選手権試合)
ノア旗揚げ後から三沢、小橋ら旧四天王を次々と撃破、他団体へも積極的に進出し新時代のエースとして頭角を表していた秋山に対し、ジュニアヘビー級のウェイトながら主に三沢のパートナーとしてヘビー級戦線で活躍していた小川が初めてヘビー級のシングル王座に挑戦。秋山は小川を格下扱いし「5分以内に片付ける」と宣言し挑発。試合も秋山が一方的に攻め続けるが、リストクラッチ・エクスプロイダーでとどめを刺そうとしたところを小川が変型首固めで丸め込み、逆に5分以内で秋山を下し王座を奪取した。IWGP、三冠、GHCの三大メジャー王座を通して、体重100kg未満の選手がヘビー級のフラッグシップ・タイトルを獲得したのは小川が初である。
フォール技一覧

以下の記述で「エビに固める」とは、仰向けになった相手の脚を前屈状態で「く」の字に折り曲げ固める体勢のこと。海老を上下にひっくり返した状態からこう呼ばれる。
体固め体固めでフォールに入るアメリカ海兵隊員のレスラー。フォールを狙う選手(上)とブリッジでフォールを防ぐ選手(下)。

体固め(たいがため)、またはボディ・プレス・ホールド(Body Press Hold)[2]は最も基本的で、多用されるフォール技である。通常は技を受けて仰向けに倒れている相手の上半身に覆いかぶさる様に自分の上半身を重ねて体重を乗せ、両肩が上がらないように固めてレフェリーにカウントを取らせる。横四方固袈裟固、または縦四方固でがっちりと固めない限り相手に返されることも多いが、エンタテイメント性を重視するプロレスにおいては体固めを返す攻防も見せ場の一つとなっているため、あえて覆いかぶさるだけの体固めが使用される場合もある(ピンフォール#観客の反応を参照)。この技を受けた選手はフォール負けを避けるためブリッジや体を回転させることによって切り返す。

全日本女子プロレスの新人同士の試合は、この技で決着が付くことが多かったので、『全女式体固め』とも呼ばれていた。

これ以外にも、特殊な体勢でフォール勝ちを奪った場合(例・足で踏みつけただけ、人差し指一本だけ相手に乗せる、相手の上に座り込む)に、総じて「?式体固め」と記録される。
片エビ固め

体固めの体勢で片脚を取り、エビに固める技。より返し難く、容易に繰り出せるため多用される。
エビ固め変形エビ固めで相手をフォールするケン・アンダーソン。

プロレスで相手レスラーの両脚が上に上がった状態で、エビに固める技。現在はパワーボムで相手を叩きつけた後、そのままピンフォールの体勢に持ち込む場合に多く用いられる。ジャンボ鶴田は片手で相手の片脚を、両脚で相手のもう一方の脚を抱え込む形でのエビ固めをフィニッシュに用いていた。重心が相手の両肩から首付近へ移動し、より強くマット上に固めることができるため返し難い。レスリングで「エビ固め」というとクレイドルのことである。
がぶり返しレスリングにおける逆回転のがぶり返し[3]。この後、赤がフォールを狙う。

レスリングで用いられるフォール技。がぶりの体勢から相手の片腕と頭部を両腕で抱え込む柔道で言うところの「肩三角グリップ」の体勢から相手の頸部を絞めながら抱え込んだ相手の腕側に相手もろとも横転し両者仰向けになって相手をフォールに追い込む。レスリングでは絞技は禁止だが相手の腕を両腕の中に入れた場合は絞技とみなされずサブミッションの制度もないので絞めで苦しい相手はフォール負けを強いられる。フォール前に絞めで気絶した場合は負けとはならないで試合が再開されることがあり、1990年レスリング世界選手権東京大会でこのケースがあった。のちにアナコンダチョークと呼ばれた絞技と同じ形態である。逆回転に回る場合もある[3]。柔道で言うところの俵返であるレスリングの投げ技「がぶり返し」とは異なる技である。


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