フォーミュラカー
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フォーミュラカー
フォーミュラ1カーレッドブル・RB19
分類車両
用途レクリエーション (Recreation) 、スポーツ
燃料ガソリン電気水素
動力あり
自己推進あり
車輪数4
車軸数2-4
発明者レイ・ハロウン(英語版)

フォーミュラカー (Formula car) は、「車輪とドライバーが剥き出しになっている」という規格(フォーミュラ)に沿ったレーシングカーである。フォーミュラカーで行われる自動車競技がフォーミュラレースである。この項ではフォーミュラレースについても記載する。

日本語の「フォーミュラカー」が指す対象を指す用語としては、米語でよく使われるのは「オープンホイールカー」 (open-wheel car) 、英国英語でよく使われるのは「シングルシーターカー」 (single-seater car) であるが、いずれも微妙にズレがある(#呼称)。
特徴

フォーミュラとは「規格」であり、直接には、国際自動車連盟 (FIA) によるF1を頂点とする自動車競技(レース)に参加するための車輛の規格、ないし同様のレースのためのレーシングカーである。レーシングカーの中でも特にレース専用の形態をしており、単純には比較できないがプロトタイプレーシングカーよりも「レース専用車」の側にある。(ドラッグレースのトップカテゴリである「Top Fuelドラッグスター」や自動車の速度記録専用車のような「曲がる」「止まる」を重視しない車両は別とする)1922年のフォーミュラレース。
形状

まず根本である「フォーミュラ」についてであるが、一例として学生フォーミュラ(w:Formula Student全日本学生フォーミュラ大会を参照、Tier外)のルールから引用すると「The vehicle must be open-wheeled and open-cockpit (a formula style body) (以下略) 」[1]とある。つまり「タイヤがカウルで覆われておらず、コックピットがオープン」[2]という車体が、フォーミュラスタイルである。

その他としては、まず第二次世界大戦以前の自動車競技からの特徴として、オープンホイールと対戦中の W196 "Monza"

オープンホイール(前述)。すなわち、タイヤがフェンダーなどで被われておらず、周囲に十分なクリアランスがある(ただし、1950年代中旬以前には明文化して規定されておらず、メルセデス・ベンツ・W196が流線型ボディで参戦しているF1グランプリがある)。2010年代には、フォーミュラE(前後輪)やインディカー(後輪)などで顕著だが、完全なフェンダーではないものの、カウルでホイールをほぼカバーするような形状としているレギュレーションのレースもある。

オープンコクピット(前述)。すなわち、座席の上方は開口となっており、ドライバーが露出しているためドアやウィンドウはない。

シングルシーター。すなわち、座席は1つ(これはカウルについてと共に、レギュレーションによって(形骸化してはいるが)2座を規定しているプロトタイプレーシングカーと対照的と言える。なお、同乗体験イベント用[3]など特殊目的で2座とした場合は、横に並べることが不可能なため、もっぱら前後のタンデム配置となる)。

後輪駆動(1960年代に四輪駆動 (4WD) 車が作られたこともある (en:Four-wheel drive in Formula One) )。前輪駆動車は、インディカーにおいて戦前のMiller車から末期は1960年代のMickey Thompson(en:Mickey Thompson)による何台かまで存在するが、全体から見ると極めて稀。

競技の安全性を保ちながらも、徹底した軽量化が図られている(レギュレーションで規定されている、最低重量は約600kg[4])。

公道での走行を想定していないため、方向指示器前照灯など、一部の保安部品がない。

車輪は4輪(1983年以降のF1レギュレーションで「4輪まで」と明文化される。それ以前は車輪の数が明文化されていなかったため、この不備を突く形でタイレルが六輪のP34を開発した)

といったものがある。

次いで、1960年代以降に付加されていった特徴としては、60年代に全盛だった典型的葉巻形車体を持つホンダ・RA2711982年ペンスキー・PC-101994年ペンスキー・PC-23。

リアミッドシップエンジン(以前はフロントエンジン[5]であった。ミッドシップ#レーシングカーも参照)。

車体前方と後方にウィングと呼ばれる巨大なエアロパーツが付く(一部のジュニア・フォーミュラではウイングの使用が禁止されていることもある。F1では1967年ごろに初のウィングが現れた)。

車体下側の負圧(ベンチュリ効果)をダウンフォース源に利用するため、最低地上高(車高)がわずか数cmしかなく、重心も低い(主として1970年代の変化。それ以前の、特に1960年代の軽量車体を通称「葉巻型」という)。

がある。

フォーミュラカーの外観において最も特徴的といえるのが、タイヤが剥き出しとなった構造である。空気抵抗(専門用語で抗力)が小さい形態である、とされることがあるが、あまり正しい理解ではない。空気抵抗を評価する値としてしばしば使われる抗力係数(いわゆるCd値)は、フォーミュラカーでは約1前後であり、係数だけを比較すればプリウスなど近年の低抗力係数のスタイリングのそれの約4倍にもなる。しかし、ここで注意が必要なのは、抗力係数が動圧と面積により無次元化した「係数」であるという点である。すなわち(前方投影)面積に比較して十分に小さければ、Cd値が大きくてもそのヴィークルが受ける空気抵抗自体は小さい。なお、単純に比較することはできないが、たとえばグループC車両のCd値はフォーミュラカーより小さく、最高速度は1990年改修前のサルト・サーキットにおけるバックストレート(ユノディエール)の終端部で400km/hを越えF1よりも速い。

以上のことから、なぜ抗力係数の大きい形態を変えないのかという疑問を持つ向きもあるが、そもそもタイヤが剥き出しの構造こそがフォーミュラカーの定義である。

フォーミュラカーに限らず、近年のハイパワー化したレーシングカーの一般に言えることであるが、十分に対抗できる推進力があれば、抗力が小さいことよりも、車体を浮き上がらせてしまう揚力を発生させず、逆に下に押さえつけるダウンフォースを得ることと、安定性と操縦性のバランスが良いことのほうが、むしろ重要である。車体に取り付けられた様々なエアロパーツは、車体を地面に押さえつけ車体の安定性を向上させるダウンフォースを発生させたり、気流を制御して走行を安定させるために付けられている。とりわけダウンフォースは大きく、F1カーの史上最大ダウンフォースは、2008年のレギュレーションにおいて約2,000kgfとされ、車重(約600kg)よりも大きい。トンネルの天井を走行することも可能、と考える向きもあるが、そのダウンフォースを得るために必要な速度と、その速度を維持するために必要なグリップ力が得られるか計算する必要がある。ダラーラ・SF14のコクピットシェル。

フォーミュラカーの運転、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}というより操縦[要出典][独自研究?]は、大トルクを発するエンジン・車両質量の小ささ・空力パーツに由来する対気速度の違いによる挙動変化、等々の多数の要因から挙動は極めて複雑で、必要とされる技術は乗用車の一般的な走行とは大きく異なり、非常に高い技能・技術が要求される。

ドライバーの座席周辺は「コックピット」と呼ばれる。必要最低限の狭い空間しかない。また安全確保のため、コックピット周辺だけは特殊材料で極めて頑丈に作られており、コクピットシェルと呼ばれる。大クラッシュなどでは他のパーツが破損四散する中でコクピットシェルだけが残りドライバーを保護する空間を確保している様子が見られる。いわゆるモノコックの理論上、開口部を広げるほど強度の確保は大変になるため狭くなるが、あまりに狭いと火災発生時などにドライバーの脱出を妨げるため、一定以上の大きさがレギュレーションで定められている場合もある。
性能

乗用車ラリーカーなどと違って、フォーミュラカーは停止?発進時よりも中間加速に優れている。トランスミッションのギアレシオにもよるが、ヨーロピアンサーキットを走行する場合、0-100km/hの加速には3秒強かかる。100km/h以上では大きなダウンフォースが掛かるために駆動輪が大きな摩擦力を発生し、許容駆動力が向上する。そのために加速力が向上し、100-200km/h加速は0-100加速よりも速く約2秒しかかからない。

同時にこのダウンフォースによってカーブ(コーナー)を通過する速度が向上する。F1の場合は最大で外側に約5Gの遠心加速度がかかっている。

快適装備や保安部品が搭載されていないのは、これらの部品で重量や空気抵抗が増加し、レースにおいてタイムや燃費を低下させる悪影響につながるためであり、エンジン位置や車高についてはレース中の車の運動性能や挙動を極限まで追求した結果によるものである。

フォーミュラカーは前記のとおり空気抵抗係数は大きいが、最高速性能も優れている。ヨーロピアンサーキットに特化したF1でも350km/h(モンツァ・サーキット)に達し、最高速性能が高いインディカーでは370km/h以上に達する。フォーミュラカーがサーキットで記録した最高速度は、2000年CARTミシガン・インターナショナル・スピードウェイで記録された413.518km/hである。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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