フェーマルン・ベルトトンネルデンマークとドイツの高速道路網において、計画中のフェーマルン・ベルト連絡の位置を示す地図
概要
位置フェーマルン・ベルト海峡
現況建設中
運用
建設開始2015年[1]
完成2024年予定[2]
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デンマークとドイツの高速道路網におけるフェーマルン・ベルトトンネル(緑線)とロストック-ゲッサー間のフェリー(橙線)
フェーマルン・ベルトトンネル(デンマーク語: Femern Balt-forbindelsen、ドイツ語: Fehmarnbelt-Querung)は、デンマークのロラン島とドイツのフェーマルン島の間を結ぶことが提案されている、計画中の沈埋トンネルである。バルト海にある、幅18キロメートルのフェーマルン・ベルト海峡を横断するもので、これにより北部ドイツとロラン島、そしてそこからデンマークのシェラン島およびコペンハーゲンへと、鉄道と高速道路の直接連絡を実現する。この経路はドイツやデンマークでは、鳥の主な渡りの経路であることから渡り鳥コースと呼ばれている。
フェーマルン島は既にドイツ本土と橋で連絡されており、ロラン島もシェラン島とファルスター島経由でトンネルおよび橋で既に連絡されている。さらに、シェラン島はスウェーデンとオーレスン・リンクで連絡されている。シェラン島とドイツの間は、大ベルト海峡、フュン島、ユトランド半島を経由すれば陸路で連絡されているが、フェーマルン・ベルトトンネルによりドイツからシェラン島、そしてスウェーデンやノルウェーへより容易に速く移動できるようになる。
フェーマルン・ベルトトンネルは、当初の見込みでは2018年に完成することになっていたが[3]、2012年に完成見込みは2021年に延期され[4]、2015年には2024年まで延期された。当初は橋として計画されていたが、この連絡の設計と計画を担当しているデンマーク国有企業であるフェーマルンA/Sでは、2010年12月にトンネルの方が望ましいと発表し[5]、2011年1月にデンマークの議会でトンネル案が大多数の支持を受けた[6][7]。2015年2月にデンマーク議会に建設に関する草案が提出され、デンマーク政府はドイツとスウェーデンの支持を受けて、EUの資金130億デンマーク・クローネ(17億ユーロ)を申請した[8][9][10]。2015年6月に、5億8900万ユーロのEU資金が欧州委員会からデンマークに対して、「コネクティング・ヨーロッパ・ファシリティ」の枠組みの一環として提供されることが決定され、トンネルプロジェクトが推進されることになった[11]。 ドイツとデンマークの交通網計画部門では、少なくとも2000年頃には、橋またはトンネルによってフェーマルン・ベルトを横断する陸路連絡の構想を推進するようになった。長年にわたり、橋がもっとも可能性の高い計画だとされていたが、2010年末にデンマーク側の計画部門では、沈埋トンネルが橋に比べて建設上のリスクが少なく、費用も同程度であると宣言した[5]。 デンマークの議会(フォルケティング)は2009年3月にプロジェクトを承認し、420億デンマーク・クローネ(約50億ユーロ)を要するものと見込んだ[12]。この費用には、電化やデンマーク側の160キロメートルの路線を単線から複線に改良するなどのための15億ユーロを含んでいる。2011年に、2008年の物価に換算して総額は55億ユーロに増額されたが、欧州連合の資金供給は6億ユーロから12億ユーロを見込むことができる[13]。建設費の見込みは1998年4月1日の計画開始から2021年の開通までの区間を推計している。 新しいフェーマルン海峡橋
プロジェクト
フェーマルン・ベルトトンネルとそれに付随する複線化により、ハンブルクからコペンハーゲンまでの鉄道の所要時間は、4時間45分から3時間15分に短縮される。現行の計画によれば、1時間に片道1本の旅客列車と2本の貨物列車が運行される[14]。このため、もしドイツ側での複線化が遅れれば、この運行本数のためにドイツ側の橋で遅延が生じる見込みである。
コペンハーゲンとハンブルクを結ぶ幹線道路は、ドイツ国内の25キロメートルを除いて既に高速道路となっている(2008年以前は35キロメートルであった)。残りの区間は2車線の道路である。この区間は高速道路規格に拡張される予定であるが、フェーマルン海峡橋の区間を除く。
このプロジェクトは規模の点で、オーレスン・リンクやグレートベルト・リンクに匹敵する。2010年11月30日にフェーマルンA/Sが発行した報告書によれば、会社はデンマークとドイツを結ぶ連絡の設計と計画を任務としており、連絡経路は決定され、プットガルテン(ドイツ語版)とレズビュハウン(デンマーク語版)のフェリーの港の東側を通るものとなるとした[16]。
フェーマルン・ベルトトンネルの建設費は政府が保証する融資で賄われ、道路と鉄道の通行料で償還される。デンマークがプロジェクトへの融資の総額350億デンマーク・クローネ(47億ユーロ)に責任を負い[17]、ドイツの参加はドイツ側の陸上設備の整備に限定される[18]。デンマーク政府はフェーマルン・ベルトトンネルを完全に所有し、建設費が償還された後も通行料を課すことができ、料金所での雇用もデンマーク側のものとなる。この通行料金収入は、デンマーク国鉄の改良にも用いることが計画されている。
ドイツ側では、道路が4車線に改良され、鉄道は複線化され、条約によればこうした費用は通行料金ではなく税金で負担されることになっている。
欧州連合はこの計画を、汎ヨーロッパ交通網(英語版)として優先される30のプロジェクトの1つに指定しており、このプロジェクトの費用の5 - 10パーセント程度、およそ6億ユーロから12億ユーロ程度を支援する。このプロジェクトはヨーロッパにとって、5パーセント程度の資本利益率が見込まれている[8]。 水底トンネルには、水平に掘削する方法と沈埋トンネルがある。全長が4 - 5キロメートルを超える深いところを通るトンネルでは水平に掘削する方法が普通で、沈埋トンネルは比較的浅い川や港を横断する時に用いられる。沈埋トンネルでは、海底に溝を掘り、砂または砂利の基礎を築き、プレキャストコンクリートで造られたトンネル構体を溝に沈めて、保護層として数メートルの深さに被覆を行う。 フェーマルン・ベルト海峡は沈埋トンネルで横断する計画で、計画時点で全長17.6キロメートルあり、これまで建設された最長の沈埋トンネルとなる。2010年11月30日に、デンマークのフェーマルンASのプロジェクトマネージャーが、ランボル、アラップ、TECのコンソーシアムが提案した沈埋トンネルの設計が採用されると発表した[19]。プロジェクトマネージャーによれば、このトンネルは世界最長の沈埋トンネルであるだけでなく、世界最長の鉄道道路併用トンネルであり、世界最長の水底道路トンネルであり、鉄道道路併用トンネルとしてもっとも深い沈埋トンネルであり、コンクリート製沈埋トンネルとしては世界で2番目に深いものとなる[20]。
トンネルの特徴