フェリチン
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フェリチン
マウスのフェリチン複合体の構造1lb3[1]
識別子
略号Ferritin
PfamPF00210
Pfam clan ⇒CL0044
InterProIPR008331
SCOP ⇒1fha
SUPERFAMILY ⇒1fha

利用可能な蛋白質構造:
Pfamstructures
PDBRCSB PDB; ⇒PDBe; PDBj
PDBsum ⇒structure summary

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フェリチンのL型サブユニット
識別子
略号FTL
Entrez(英語版)2512
HUGO3999
OMIM134790
RefSeqNM_000146
UniProtP02792
他のデータ
遺伝子座Chr. 19 q13.3?13.4
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フェリチンのH型サブユニット
識別子
略号FTH1
他の略号FTHL6
Entrez(英語版)2495
HUGO3976
OMIM134770
RefSeqNM_002032
UniProtP02794
他のデータ
遺伝子座Chr. 11 q13
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ミトコンドリアフェリチン
ミトコンドリアフェリチンの結晶構造[2]
識別子
略号FTMT
Entrez(英語版)94033
HUGO17345
OMIM608847
RefSeqNM_177478
UniProtQ8N4E7
他のデータ
遺伝子座Chr. 5 q23.1
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フェリチン(Ferritin)とは、鉄結合性タンパク質の一種である。生物の細胞内において、鉄と結合することにより鉄を保存し、必要なときに鉄を放出する。藻類、細菌、高等植物、ヒト、動物を含むほぼすべての生物がフェリチンを合成する。ヒトにおいては鉄不足と鉄過剰を抑える役割を持つ[3]。フェリチンはほとんどの組織の細胞質に存在するが、一部は鉄運搬体として血漿中に分泌されている。血漿フェリチンの量は、肉体に蓄積されている鉄の総量の推計指標であり、鉄欠乏性貧血の診断材料である[4]

フェリチンは、24個のタンパク質から成る球状タンパク質複合体であり、鉄を内部に取り込む籠の形状をしている[5]原核生物真核生物の両方において主要な細胞内の鉄貯蔵庫であり、鉄を水溶性かつ非毒性に保つ。鉄と結合していないフェリチンをアポフェリチン(apoferritin)と呼ぶ。
遺伝子

フェリチンの遺伝子は種間で高度に保存されている。全ての脊椎動物のフェリチン遺伝子は3つのイントロンと4つのエクソンを有する[6]。ヒトのフェリチン遺伝子においては14-15、34-35、82-83番目間のアミノ酸残基に当たる領域にイントロンが存在する。加えて、寄り合わされたエクソンの両端にも100-200塩基対の非翻訳領域がある[7]。27番目のチロシン残基は無機化に関与すると考えられている[8]
構造

フェリチンは、24個のサブユニットから構成された450kDaの球状タンパク質であり、あらゆる細胞型に存在する[7]。典型的な大きさは内径8nm、外径12nmである[9]。フェリチンの内部は中空となっており、この空間に鉄分子が保持される。フェリチンの全体構造はこの空間を覆うための殻である。この殻には、鉄が出入りするための、中空空間に続く出入り口の穴が存在する。また、内部の空間には、リン酸水酸化物イオン結晶子を形成した鉄イオンが存在する。この結晶子は鉱物のフェリハイドライトに似ている。フェリチン複合体は1個当たり4500個の鉄(III)イオン(Fe3+)を貯蔵可能である[7][10]

脊椎動物におけるフェリチンの多くは、2種類のサブユニットから成るヘテロオリゴマーである。サブユニットとはL型(Light 軽鎖)とH型(Heavy 重鎖)の2種類であり、それぞれ分子量は19kDaと21kDaである[7]。これらのサブユニットは、高度に関連した異なる遺伝子に由来し、生理学的性質はわずかに違う。

ウシガエルといった両生類には脊椎動物のサブユニットに加えてM型フェリチンを有する[10]。植物と微生物は一種類だけフェリチンを有し、それは脊椎動物のH型サブユニットに最もよく類似している[10]。一つのフェリチンにおける各サブユニットの個数割合は各遺伝子の発現量の比に依存する。この割合によって等電点や局在場所が異なる[11]。ヒトの場合、L型とH型の割合が異なる臓器特異的なイソフェリチンが20数種類以上知られている[11]

腹足類モノアラガイ属(Lymnaea)では体細胞性フェリチンが2種類発見されている[10]。この体細胞性フェリチンと類似のサブユニットは真珠貝において貝殻の形成に関与している[12]住血吸虫属(Schistosoma )は、雌雄で種類の異なるフェリチンを持つ[10]。上記の無脊椎動物のフェリチンは、特に一次構造は脊椎動物のH型に類似している[10]大腸菌Escherichia coliにおいてはヒトH型フェリチンと20%の相同性が認められている[10]

ミトコンドリアフェリチンはミトコンドリアに存在するタンパク質前駆体である[13]。ミトコンドリアフェリチンは細胞質リボソームで合成された後にミトコンドリアに取り込まれると、ミトコンドリア内でプロセシングを受けフェリチンとなる。
機能
鉄分の貯蔵

フェリチンはあらゆる細胞に存在し、鉄を無害な状態で貯蔵し必要な場所へと運搬する[14]。この機能は全てのフェリチンタンパク質に共通しているが、同じ遺伝子に由来するフェリチンタンパク質でもその機能や構造は細胞によって異なる。その調節は主にmRNAの量と安定性によってなされている。さらに、mRNA濃度は、その保存の過程や転写の効率が変更されることによって調製されている[7]。一般的にフェリチンの産生量は鉄の濃度によって管理されている[7] が、腹足類のLymnaeaの卵黄フェリチンは鉄反応部位を欠いており、鉄の濃度に依存しない[10]

遊離の鉄イオンはフェントン反応により有害な活性酸素種を生成するため、細胞に対して有毒である[15]。脊椎動物は鉄の毒性を回避するために、フェリチンやヘモジデリンといったタンパク質複合体に鉄を結合させて無害化させる。具体的にはアポフェリチンは鉄(II)イオンと結合し、鉄(III)イオンの状態で鉄を保存する。細網内皮系の細胞内でフェリチンが蓄積すると、タンパク質凝集体となりヘモジデリンが形成される。

フェリチンは、軟体動物などの殻を有する生物において生体内鉱質形成にも関与する。殻における鉄の濃度と分布を制御し、殻の形状や色を決定する[16][17]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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