フェライト系ステンレス鋼
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大阪ドームのステンレス製の屋根外板にはフェライト系ステンレス鋼(SUS445J2ダル仕上げ)が用いられている[1]

フェライト系ステンレス鋼(フェライトけいステンレスこう)とは、常温でフェライトを組織とする組成を持つ、ステンレス鋼の一種である。ステンレス鋼における金属組織別分類の1つで、他には「マルテンサイト系ステンレス鋼」「オーステナイト系ステンレス鋼」「オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼」「析出硬化系ステンレス鋼」の4つがある[2]。フェライト系はステンレス鋼の耐食性[注 1]を生み出すクロムを主成分として含み、「クロム系ステンレス鋼」に分類される[4]

フェライト系の中にも様々なバリエーションの鋼種があり、クロム以外では、モリブデンニオブチタンなどの合金元素が性能向上のために添加される。クロム含有量は、フェライト系の代表的鋼種の場合で 18 %(質量パーセント濃度)程度である。日本工業規格(JIS)で制定されているものとしては、SUS430が代表例である。特に、炭素および窒素の含有量を 0.03 % 以下のような極低量まで低減してチタンニオブなどの炭化物安定化元素を添加し、耐食性や加工性を従来のフェライト系ステンレス鋼よりも高めた鋼種を高純度フェライト系ステンレス鋼と呼ぶ。

フェライト系は高い強度を持つほうではないが、ステンレス鋼の中では廉価な鋼種である。一般的な鋼と同じく、磁性を持つ。代表的・標準的な鋼種で比較すると、フェライト系の耐食性はステンレス鋼の中では高いほうではない。一方で、高純度化や合金元素の添加により、高い耐食性を持つフェライト系の鋼種もある。
基本組織と組成AISI430の顕微鏡組織写真。950℃昇温後空冷の焼なまし材。

フェライト系ステンレス鋼は、その名称のとおり、常温での主な金属組織が体心立方格子構造フェライト相である鋼である[5]。900 ℃ から 1200 ℃ の高温の状態では、フェライト単一相またはフェライトと少量のオーステナイト相の2相から成る[6]。フェライト系に分類されるものであれば、高温でオーステナイトが現れるものでも焼なましを適切に施すことによってフェライト単相にすることができる[7]。クロム炭化物や窒化物が析出する[8]。組成や熱処理によっては、フェライト系に分類されるものの中でもオーステナイト相やマルテンサイト相を常温でいくらか含むものもある[9]

ステンレス鋼の耐食性はクロムの含有によって現れる[10]。フェライト系ステンレス鋼の場合、含有されるクロムの量はおよそ 11 % から 32 % 程度まで亘る[11]。クロム含有量 18 %(質量パーセント濃度)がフェライト系の代表的鋼種の含有量である[12]。規格に制定されているものとしてはAISI・ASTMの430やJISのSUS430が代表的鋼種で、18クロムステンレス、18-0ステンレス鋼、18Cr鋼、17Cr系などとも呼ばれる[13][14][15][16]。フェライト系標準鋼種SUS430とそれに等価な鋼種について、各規格で定められた組成を以下の表に示す。

フェライト系標準鋼種の組成例[17]規格材料記号CMnPSSiCrNi
ISOX6Cr170.08以下1.0以下0.040以下0.030以下1.0以下16.0–18.0-


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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