フェアユース
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ウィキペディア日本語版でフェアユースできる画像は、

日本国著作権法第46条の「屋外に恒常的に設置されている美術著作物」または、

Wikipedia:日本で著作権が消滅し、米国で著作権が消滅していない画像の利用方針」の対象となるものです。
Wikipedia:FAQ 画像などのファイル#フェアユースによるファイルのアップロードはできますか」を参照下さい。

フェアユース(英語:fair use、公正利用とも訳される)とは、アメリカ合衆国の著作権法などが認める著作権侵害主張に対する抗弁事由の一つである。同国の著作権法107条(合衆国法典第17編第107条 17 U.S.C. § 107、107条の参考日本語訳)によれば、著作権者の許諾なく著作物を利用しても、その利用が4つの判断基準のもとで公正な利用(フェアユース)に該当するものと評価されれば、その利用行為は著作権の侵害にあたらない。このことを「フェアユースの法理」とよぶことがある。

米国におけるフェアユースの大きな特徴の一つは、著作権者の許諾なしに著作物を利用できる場合(言い換えれば著作権が制限される場合)について、欧州連合や日本の著作権法のように具体的な類型を列挙する(限定的使用のための複製や引用、裁判手続等における複製など。後述参照)のではなく、抽象的な判断指針として示していることである。
歴史

フェアユースの法理は、米国において1841年の Folsom v. Marsh 判決(マサチューセッツ州連邦巡回裁判所)において最初に確立されたものとされる(例えば Campbell v. Acuff-Rose Music, Inc. の最高裁判決)[1]

Folsom v. Marsh判決では、ジョージ・ワシントンの書簡に伝記を付した著作物を編纂した原告が、そこに掲載されたワシントンの文章の抜粋をふんだんに盛り込んだ伝記を記した被告を訴えたもので、ストーリー裁判官はイギリスの判例を参照しつつ被告の利用が正当化可能な利用であるかどうかを検討した。その中で、この種の問題については往々にして以下の3つの要素を考慮することが必要になるという見解を述べた。これらは後の裁判で参照され、現在の4つの要素を考慮する考え方となっていった。
「抜粋の性質と目的」(the nature and objects of the selections made.)

「利用された部分の量と価値」(the quantity and value of the materials used.)

「原作品の売り上げの阻害、利益の減少、または目的の無意味化の度合い」(the degree in which the use may prejudice the sale, or diminish the profits, or supersede the objects, of the original work.)

判例を通じて形成されたフェアユースの法理は、1976年制定の著作権改正法(英語版)で初めて条文として盛り込まれた (§107) [2]。この条文化は判例の確立した考え方を立法によって変更するものではなく、単に条文に盛り込んだものだとされる[3]。なお、これ以前にも1960年代にはフェアユースの4要素を法の条文に盛り込もうという試みは存在している。Patry (1995) によれば1964年のH.R. 11947、H.R. 12354、S. 3008の3法案はいずれもそのような改正案を含んでいる。
1976年著作権法における内容と判断

1976年制定の著作権改正法 (1978年1月1日より施行) では「批評、解説、ニュース報道、教授(教室での利用のための複数のコピー作成行為を含む)、研究、調査等を目的とする」[注釈 1]場合のフェアユースを認めているが、著作物の利用がフェアユースになるか否かについては少なくとも以下のような4要素を判断指針とする。なお、下で示された4要素はあくまで例示に過ぎず、5つ目以降の要素を検討することも認められている[注釈 2][6]
利用の目的と性格(利用が営利性を有するか、非営利の教育目的かという点も含む)利用が営利性を有すると認められたならば、フェアユースの成立を否定的に、非営利であれば肯定的に見積もり、他の要素の判断を行う[7]。非営利と認定されれば原告が、営利と認定されれば被告がそれぞれ「著作物の潜在的利用又は価値に対する利用の及ぼす影響」を立証する必要がある[8]。また、トランスフォーマティブな利用(transformative use、「変形的利用」などと訳され、元の著作物の市場との衝突が少なく、元の著作物には存在しない付加価値をつけた利用をさす[9]。パロディーが代表例として挙げられる[10]。)については商業的であっても非営利である場合と同じく、原告が「著作物の潜在的利用又は価値に対する利用の及ぼす影響」を立証する必要がある[11]。なお、全ての会員がアクティベーション解除やアップロードなど、いずれかの作業を分担することで、著作権が存続しているソフトウェアを共有する会員制のウェブサイトを運営していた被告が「大学教授が、利用者から対価を受け取らず、大学構内にサーバーを設置して運営していたため、教育目的の非営利だ」と主張した裁判において、分担しなくてはいけない「いずれかの作業」を実行する労力の提供を「営利」と認め、フェアユースの成立を否定した判例が存在する[12]。また、正規に著作物の複製を入手する費用を節約するための私的な複製も「営利」と認められている[8]。ただし、単に営利的・非営利的というのみで決定されるものではない。名誉毀損を目的とする広告に対抗するべく、支持者から寄付を募るために同広告を100万部に渡り複写し送付した事例では、利用の目的が資金を集めるという営利的なものではあったが、それ以上に「広告への対抗」である点を重視しフェアユースを認めた[13]

著作権のある著作物の性質著作物の内容が事実を伝えたり(例えば、書式が限られる学術論文[11])、単にある機能を果すだけの著作物(例えば、地図)であれば、その著作物の使用にフェアユースが認められる公算は高くなる[14]。反対に著作物の内容が芸術性を多分に帯びたもの(例えば、小説[11])であれば、フェアユース成立の蓋然性は低くなる[14]。利用が極めて困難な絶版などの理由があれば、それもフェアユース成立に有利に働く[15]公表権を侵害した場合はフェアユースの成立に悪影響を及ぼすが、決定的な要因たりえず[注釈 3]、この事実のみでもってフェアユース成立が否定されることはない(#1992年の改正も参照)[14]

著作物全体との関係における利用された部分の量及び重要性一般に、著作物の使用量が少なく、また、使用箇所が著作物の核心的部分に触れていない場合、フェアユースが認められやすくなる[14]。ただし、単に量のみが斟酌されるのみならず、目的の達成に必要な量を超えて使用したかが焦点となるため、状況によっては完全な複製であってもフェアユースが認められることはある[14]。使用箇所が著作物の核心的部分に触れると量によらず、フェアユース適用に対して負に働きうる[16]

著作物の潜在的利用又は価値に対する利用の及ぼす影響複製物の使用が市場(潜在的な市場を含む)に悪影響を与える場合、フェアユースの成立を不利にする[17]

1976年の著作権改正法は著作物の無断利用がフェアユースとされる場合の要件を大まかに規定しており、判断指針として条文化されているに過ぎない(これに対し、§108以下の規定に基づく著作権の制限は準則として示されている)。このため、フェアユースになるか否かは個々のケースについて裁判所が判断する。またこれらの判断要素についてはある要素が他の要素より重きを置くことを要求されておらず、フェアユースになるか否かはこれらの要素を総合的に判断することによって決めることになる。ただし、実際上は4番目の「市場への影響」が最も重視されることを多く、裁判所もその事実を認めている[18]

このようにフェアユースの法理は抽象的な判断指針として示されているに過ぎず非常に曖昧な点があるため、個々のケースについて著作物の無断利用が著作権侵害になるのか否かに関して訴訟で深刻な争いが起きやすい。例えば日本の著作権法には私的使用のための著作物の複製に関する規定が存在するが(著作権法30条)、米国著作権法には同旨の規定が存在しない。そのため、テレビ放送の私的使用のための家庭内録画が著作権侵害になるか否かにつき深刻に争われたことがある(Sony Corp. of America v. Universal City Studios Inc., 464 U.S. 417、いわゆるベータマックス事件)。


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