フィールズ賞
フィールズ・メダルの表面。アルキメデスの肖像と銘文 ラテン語: TRANSIRE SUUM PECTUS MUNDOQUE POTIRI(己を高め、世界を捉えよ[1])が刻まれている。カナダの彫刻家ロバート・テイト・マッケンジーによるデザインで[2]、カナダ王室造幣局で鋳造されている[3]。受賞者の名前は縁に刻まれる[4]。
受賞対象傑出した業績をあげた40歳以下の数学者
主催国際数学者会議 (ICM)
初回1936年
公式サイトInternational Mathematical Union (IMU) Details
フィールズ賞(フィールズしょう)は、若い数学者のすぐれた業績を顕彰し、その後の研究を励ますことを目的に、カナダ人数学者ジョン・チャールズ・フィールズ (John Charles Fields, 1863年 - 1932年) の提唱によって1936年に作られた賞のことである[5][6][7]。 4年に一度開催される国際数学者会議 (ICM) において、顕著な業績を上げた40歳以下[注釈 1]の数学者(2名以上4名以下)に授与される[5]。ICMで同時に授与される賞としては、ネヴァンリンナ賞、ガウス賞、チャーン賞などがある。 数学に関する賞では最高の権威を有する[10][11]。しかし、若い数学者の優れた業績を顕彰し、その後の研究を奨励することが目的であり、「4年に一度」「40歳以下」「2名以上4名以下」という制限がある。ただし、唯一の例外として、「フェルマーの最終定理」の証明に成功したアンドリュー・ワイルズは証明当時すでに42歳になっていたが、その業績の重要性から1998年に45歳で「特別賞」を与えられた。 受賞者は西ヨーロッパとアメリカの数学者が通例で[12]、ダランベールかライプニッツの系譜に連なる場合が多い[12]。冷戦時には、共産圏の数学者との交流は困難であった。1970年、初めてソ連の数学者が受賞したが、海外渡航が許されず授賞式には出席できなかった[13]。受賞者の出身国は多様化してきており、ベトナム、イラン、ブラジルなども受賞者を出している。2014年には初めての女性受賞者が誕生した[14]。なお、メダルは国際数学者会議の開幕式において名誉議長から手渡される[15]。 フィールズ賞は、フィールズ賞選考委員会で決められる[5]。グリゴリー・ペレルマンは、2024年時点では受賞を辞退したただ一人の人物である。 「数学のノーベル賞」と呼ばれることもあるが[14][16]、賞としての性格は大きく異なる[注釈 2]。ノーベル賞は(存命であれば)受賞者の年齢に関係なく贈られるのに対し、フィールズ賞はその時点でまさに活躍中の40歳以下の若手数学者に贈賞されている[7]。また、ノーベル賞は業績ごとに選考されるため、一つの業績に対して複数の共同受賞者が出ることが多くなっているがフィールズ賞は個人に贈られるものであり、共同受賞の例はない。 近年では、「年齢制限なし」「毎年授与」「高額賞金」などノーベル賞に近い性格を持つ国際的数学賞が次々と現れている。1980年に創設されたクラフォード賞は、毎年ではないものの数学上の業績に対して比較的高額な賞金を年齢制限なく与える国際学術賞である。ウルフ賞数学部門も、賞金規模はやや小さいものの、1978年以降ほぼ毎年、年齢制限なく与えられている。2000年には、特定の業績に対してのみノーベル賞級の高額賞金を年齢制限なく与える「ミレニアム懸賞問題」が発表され、世界中の関心を集めた。 2002年には、ノーベル賞により性格の近いアーベル賞が設立された。フィールズ賞とアーベル賞の両方を受賞した人物も存在する。 さらに2014年には、ノーベル賞をも超越する莫大な賞金額を誇る数学ブレイクスルー賞が創設された。 比較項目数学ブレイクスルー賞ミレニアム懸賞問題ノーベル賞アーベル賞フィールズ賞 日本人の受賞者は、2024年現在、小平邦彦(1954年)、広中平祐(1970年)、森重文(1990年)の3人(国籍別では5番目に多い)であり、1990年以降受賞者は出ていない。 東洋系の受賞者は上記の3名以外に、丘成桐(中国系米国人)(1982年)、陶哲軒(中国系オーストラリア人)(2006年)、ゴ・バオ・チャウ(ベトナム系フランス人)(2010年)、マリアム・ミルザハニ(イラン人)(2014年)、マンジュル・バルガヴァ(インド系カナダ・米国人)(2014年)、許吭(韓国系米国人)(2022年)の6人がいる。 名前の読み(名前の綴り、生年 - 没年)、国籍、受賞理由(英語)の順。国籍は受賞時の国名で記す。 「Awarded medal for research on covering surfaces related to Riemann surfaces of inverse functions of entire and meromorphic functions. Opened up new fields of analysis.」 「Did important work of the Plateau problem which is concerned with finding minimal surfaces connecting and determined by some fixed boundary.」 「Developed the theory of distributions, a new notion of generalized function motivated by the Dirac delta-function of theoretical physics.」
概要
他の贈賞との比較
第1回2015年(創設は2000年)1901年2003年1936年
実施間隔1年不定1年1年4年
年齢制限なしなしなしなし40歳以下
賞金額約3億円約1億円約1億円約1億円約200万円
授賞分野の制限特になし特定業績のみ数学を対象としない特になし特になし
東洋人の受賞者
受賞者の一覧
1936年(オスロ)
ラース・ヴァレリアン・アールフォルス(Lars Valerian Ahlfors, 1907年 - 1996年) フィンランド
ジェス・ダグラス(Jesse Douglas, 1897年 - 1965年) アメリカ合衆国
1950年(ケンブリッジ)
ローラン・シュヴァルツ(Laurent Schwartz, 1915年 - 2002年) フランス
アトル・セルバーク(Atle Selberg, 1917年 - 2007年) ノルウェー
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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