フィルム
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この項目では、合成樹脂などから製造された薄膜材料全般について説明しています。

映画を指して呼称するフィルムについては「映画」をご覧ください。

写真撮影に使われるフィルムについては「写真フィルム」をご覧ください。

星野源のシングルについては「フィルム (曲)」をご覧ください。

「FILM」はこの項目へ転送されています。中丸雄一 (KAT-TUN) の楽曲については「NO MORE PAIИ」をご覧ください。
フィルム

フィルム(英語: film、plastic film)は、一般に合成樹脂などの高分子成分などを薄い状に成型したものを指す。
定義違いは形だけ

薄い膜状のものを指す用語として、「フィルム」(および「フイルム」)の他に「シート」「膜(メンブレン)」「箔」などがある。これらの区分は明確には定義されておらず、慣用的に使い分けられている。現実には、発明者や製造者または使用者が便宜的に名づけた呼称がそのまま広まるケースが多い。
素材による区分
基本的に「フィルム」「シート」は人工物のうち高分子原料を主に使用したものを対象とした呼称に当たる。ただし、などファイバー状の原料を積層して製造されるものを指して「シート」と呼称することはあるが「フィルム」と呼ぶことは非常に稀である。「メンブレン」は自然物から概念的なものまでをも含む広い範囲を対象とした包括的な用語であり、逆に「箔」は金属原料を主に使用したものに限定する傾向がある。一方、ケイ酸成分を原料とした薄膜成型材料について「無機フィルム」[1]、微生物が形成する薄膜について「バイオフィルム」、オブラートなどの薄膜状の食べ物について「フィルム食品」または「可食性フィルム」という語句が使用されているように、「フィルム」の呼称は必ずしも合成樹脂など有機系の工業材料に限定される用語ではなくなりつつある。その他の用例では、化粧品成分が肌の表面で形成する膜成分を「フィルム」と呼称することから転じて、一部の液体状化粧品を「アイフィルム」などと名づけている。
厚みによる区分
日本国内では一般に200µm以下の厚さを「フィルム」と称す[2] 事が多い。それに対しJISの包装用語や欧米では10ミル=250µm以下を指す。ただし、ロール状に巻けるなどの柔軟性を保持するものはより厚いものでも「フィルム」と呼称することもしばしばあり、いずれにしろ明確に定義されてはいない。100?200µmの範囲を境界とし、薄いものを「フィルム」、厚いものを「シート」と慣例的に区別するケースが多い。
形状による区分
「フィルム」は一般に、製造時に支持基盤を必要とするか否かに関わらず、成型後にそれ単体で薄膜状の構造を成り立たせているものを指す。成型した基板から単独では事実上分離できないものは「膜」や「層」などの用語を使用する場合が多い。また、「フィルム」は長い製造品を巻き取ったロール状で供出される場合が多く、同一の製造品ながらロール状のものを「フィルム」、適当な大きさに切り出したものを「シート」とそれぞれ呼称される場合もある。また、産業分野では通常「テープ」とは幅の狭い「フィルム」を指す。ただし、セロテープなどの粘着テープやビデオテープなど一般に流通するものと区別するためにあえて「スリットしたフィルム」と称されることもある。
用語「フイルム」
日本語において「フイルム」とは写真フィルムを限定して指し、これにはロール状でないものも含まれる。
用語「ビニール
日本語独特の言い回しとして、包装用や農業資材用分野でのフィルムを指して俗に「ビニール」と呼称する場合がある。これは、本来はビニル樹脂(ポリ塩化ビニルなど)のことを意味するが、他の素材から製造されたフィルムをも混同する形で使われるケースが多い。
主な製造方法
溶融押出成型法(extrusion molding)

熱可塑性樹脂をフィルム化する一般的な方法。合成樹脂の射出成型法と同じくシリンダー内で加熱しスクリューで加圧した溶融状態の樹脂を、押出金型の吐出口(リップ)から押し出し、冷却工程を経て成型する。金型の形状や冷却方法などにより細分類される。
インフレーション法(inflation)インフレーション法の概略押出機の先端にリングダイス(またはクロスヘッドダイ)と呼ばれる環状のリップを持つ金型を設置し、チューブ状に材料を押し出して連続的に成型する。リングダイス中央には空気孔が設置されており、ここから圧搾空気を吹き込んでチューブを2~3倍程度に膨張させ、ピンチロールと呼ばれるローラーで引っ張りながら冷却してフィルムを巻き取る。ダイスの径および送り込む空気の圧力を調整することでフィルムの幅を、材料の吐出量とピンチロールの引っ張り速度を調整することでフィルムの厚みを変更する。空冷法では吐出速度が遅くフィルムの透明性も劣ってしまうので、樹脂の種類によっては水冷法が選択される。通常の製法では下からフィルムを上向きに押し出すが、ポリプロピレン樹脂を押し出す場合は、設備の上部にリングダイスを設置し下向きに押し出してフィルム化する。設備そのものが簡易なため操作が容易であり、小さな金型から幅の広いフィルムを製造できる。通常は巻き取る前に一端を切り開いて平らなフィルムとするが、この工程を省略するとチューブ状のフィルムを得られるため包装用フィルムの製造に多く採用される。しかし、一般に厚みの制御が難しく、精度が劣る。
Tダイ法(T-die、フラットダイ法)Tダイ法の概略押出機の先端にTダイと呼ばれる直線状のリップを持つ金型を設置し、平たく材料を押し出して連続的に成型する。Tダイの基本構造は片面に刻まれたT字型の溝を向かい合わせ二枚重ねたもので、T字の縦棒にあたる部分の先端部から溶融した樹脂を投入し、横棒にあたるマニホールドを介して樹脂がダイ両端まで広がり、リップの空隙からフィルム状に吐出される。フィルムは鏡面処理された冷却ローラー(チルドロール)を通して冷却し、最終的に巻き取られるまでの過程で端部の切り落としなどを行いフィルムの幅を調整する。冷却にはチルドロールの代わりに水槽を用いる製造法もある。フィルムの厚みをリップの開口幅やチョークと呼ばれる弁の調整でコントロールすることが容易であり、生産性が高い。ただし、延伸などの別工程を経なければ、フィルムの最大幅はダイのリップ長までに限定される。また、押し出し方向と垂直方向との物性差が生じやすい。
溶液流延法(solution casting)

材料を溶媒に溶融させ流動性を持たせた溶液(ドープ)を、表面を平滑にしたドラム(キャスティングドラム)やステンレス製の平滑ベルト上に流し込んで付着させ、これを加熱する工程に通して溶媒を蒸発させ、フィルムを成型する。

フィルムに物理的な圧力を加えないため高分子の配向が起こらず、強度や光学特性などに方向性が生じない。厚み精度が極めて高い。溶融押出成型法に比べ樹脂にかける熱量が低く、熱安定剤などの添加量を低減できる。また、溶液をろ過する工程を設置できるため樹脂の塊(フィッシュアイ)が発生せず、キズもつきにくいため透明性の高いフィルムを成型できる。しかしながら脱溶媒が必要なため特に厚いフィルムの生産性には劣り、また溶剤回収工程などが必要なため設備が大きくなってしまう傾向にある。
カレンダー法(calendaring)カレンダー法(L型)の概略

主に塩化ビニル樹脂をフィルム化する際に用いられる手法。複数のローラー(カレンダーロール)を使い、あらかじめ溶融状態に加熱した熱可塑性樹脂を挟んでフィルム状に圧延し成型する。通常は4?5本のローラーをL型やZ型など様々に設置し、加熱した最初の2本挟み込みながら圧延する。途中何本かのローラーを配して更なる加熱または冷却を行い、最後に冷却されたローラーの表面を沿わせて成型を終え巻き取られる。各カレンダーロールの径や温度、回転数などを調整することによってフィルムの厚さ精度を高めたり物性に特色を持たせたりするなどの工夫が施されている。

生産設備は大型化するが製造能力は極めて高い。ただし加工技術は複雑かつ熟練を要求され、条件設定が難しく精度の調整は難しい。
延伸

合成樹脂の、ある程度の加熱をしながら一定方向に引き揃えると分子が変形方向に並び強度が増す性質を利用して、フィルムを一軸方向または二軸方向に引っ張る加工。更に耐薬品性や透明性の向上も図れる。ポリエステル・ポリプロピレン・ナイロンなどで特にその性質が顕著にあらわれる。この延伸加工を施すフィルムは、引き伸ばし後に薄くなることを計算して一次製造時に厚く成型する。

延伸する際にかけた温度を超える熱量がかかると、延伸フィルムは収縮する。この特性を利用し、緩やかに巻きつけたフィルムに熱を加えて縮ませ、梱包物を固定させるものは「シュリンクフィルム」と呼ばれる。一方、高熱下で延伸したものは熱寸法安定性に優れる性質を帯びる。これを熱固定と言う。
多層加工法

近年、求められる機能が高度化するに伴い、フィルムは複数の層を重ねた形状に加工される場合が多くなっている。それらを接合・積層させる方法は多様にあり、素材それぞれの溶融温度や相溶性または厚みの構成や製造費用など、様々な要素が考慮されつつ選択される。
共押出法(co-extrusion)

溶融押出成型法において、複数の素材を一度に押し出して重ねる手法。基本的に、積層させる材料の種類と同じ数の押出機を使用する。異なる素材同士を合わせる位置関係によって、その製造法はさらに区分される。
インフレーション法による共押出
異なる樹脂を合わせる位置により3種類に分類される。各溶融樹脂を金型手前のフィードブロック内で接触させるダイ前積層法、金型内部の経路で接触させるダイ内積層法、同心円状の複数リップから吐出し接触させるダイ外積層法がある。比較的簡便な設備で共押出しが可能だが、樹脂の種類が限定されてしまい、層間接着性に劣る組み合わせには使用できない。
Tダイ法による共押出
異なる樹脂を合わせる位置により2種類に分類される。シングルマニホールド法は、ダイの直前にフィードブロックを設置し、そこにアダプターを介して複数の押出機を接続する。フィードブロック内で樹脂接触させてからダイを通してフィルムを成型する。層の数はアダプターを交換することで設定でき、比較的簡単に多層のフィルムを得られる。しかしながら、溶融温度や粘度が大きく異なる材料を同時に使用できない欠点がある。マルチマニホールド法は、内部に複数のマニホールドを持つTダイを使用し、複数の押出機から供給された樹脂をリップ部の直前で接触させ積層する。粘度差などの物性差が大きな材料を共押し出しできる上、各層の厚みを調整することも容易。しかしながら、Tダイの構造が複雑かつ大型となり、費用も高価となってしまう。
ラミネート法(lamination)

2種類以上のフィルムを重ね合わせる手法は、前出の共押出法の他に、ラミネート法がある。
押出しラミネート法
Tダイ法溶融押出成型法の設備を使用し、材料を他のフィルム上に直接押し出してから圧着・冷却する。Tダイ共押出法と併用し多層フィルムを成型することも可能。また、
剥離ライナーがついたフィルムは、この手法をもってライナーの上に樹脂を押し出して製造する。[3]
接着剤を使用したラミネート法
複数のフィルムを接着剤を使用して貼り合わせる手法。また、フィルムと紙や布または金属箔などとの貼り合わせにも用いられる。接着剤の種類により「ウエットラミネート」(水系接着剤または水分散系接着剤を使用)、「ドライラミネート」(溶剤系接着剤または反応系接着剤)、「ホットメルトラミネート」(ホットメルト接着剤)に大別される。コストに優れ、セロファンが多用されていた頃は主流だったウエットラミネートは、貼り合わせる少なくとも片方の素材が蒸発水分を透過させる性質を持たなければならないためフィルム同士の重ね合わせには不向きで、現在では紙とのラミネートにおいて用いられる程度となった。ドライラミネートはフィルムの種類に幅広く適応し、貼り合わせ速度も早い。溶剤系接着剤を使用する場合は、片方のフィルムに塗布しある程度溶媒を蒸発させてからもう一方のフィルムと重ねる。反応系接着剤で主に用いられるのは適応範囲が広いウレタン系二液型であり、二液を混合させてから塗布し、硬化するまでの可使時間内にフィルムを貼り合わせる。ホットメルトラミネートの手法は、加熱して流動性を持たせたホットメルト接着剤を塗布し、硬化するまでの時間内にフィルムを貼り合わせる。粉体やフィルム形状の接着剤をあらかじめフィルム間に挟みこんでから加熱する手法は、基本的に後述するヒートシールに準ずる。
ヒートシール(heat sealing)

フィルムに熱をかけて貼り合わせる手法。原理は同じだが、フィルム全面を均一に接合させるラミネートの一手段とする場合と、部分的に接着させる二次加工として活用する場合とがある。材料である合成樹脂の性質によって作業性が大きく左右され、高融点すなわち耐熱性が高い樹脂はかける熱量が高くなってしまう。同様に、非晶性樹脂は軟化する温度=ガラス転移点における流動性が低いため、同様に高温での溶融が求められる。ヒートシールには、外側から熱を加えて接合する外部加熱法と、エネルギー波を照射して接合する内部発熱法とがある。
外部加熱法
一般に
アイロンのような加熱した金属体をフィルム外部から押し当て、伝導した熱がフィルムを溶融させて接着する。金属体の形状は、全面を接着するケースでは板状や広幅のローラー、部分接着をする場合は円盤状のローラーや刃型のホットナイフなどがある。板状のうち、片面に円柱状の凹を規則的に並べフィルムを溶融させる際に意図的に空気を封入させる機能を持たせたものは、エアキャップ緩衝材の製造に使用される。加熱した刃型や針金などでフィルムを圧着しつつ、同時に強い圧力をかけて溶断する手法を溶断シール法という。
内部発熱法
高周波の電波超音波によってフィルムに熱を発生させ接合する手法。熱伝導性が悪い比較的厚めのフィルムに対して有効である。
表面処理

極性の小さなポリエチレンやポリプロピレンなどはコーティングやラミネートまたは印刷などの接着力が弱い。そのため、フィルム表面を改質してこれらの欠点を改良する。手法は、物理的な処理と化学的な処理がある。
物理的処理
コロナ処理は、フィルム表面に放電処理を行い、極性を持つカルボキシル基水酸基を生成させ、かつ荒面化する。プラズマ処理は、フィルム表面でガスを電離させて生じた粒子の電荷を利用して、極性を持つ塩基を生成させる。フレーム処理(火炎処理)は、プロパンガスなどの可燃性ガスに酸素を吹き込みながらフィルム表面上で燃焼させ、酸化反応を起こして極性を持つ塩基を精製させる。
化学的処理
フィルム表面をアルカリなどで改質する。手法はJIS K 6843-3:1999で規定されている。
マット加工
フィルム表面に微細な凸凹をつけ、いわゆるシボ状態にする加工。一般的には表面積を増してコーティングやラミネートの強度向上を狙い、転写フィルム用途では転写層表面につや消し効果を与える。を吹き付けて物理的に加工する手法(サンドブラストまたはサンドマット)と、薬品で腐食させる化学的手法(エンボスまたはケミカルマット)がある。
コーティング(coating)

フィルムに特定の機能を持つ層を付着させる手法。
ウエット・コーティング

液体に溶融または分散する材料をコーティングする手法。フィルムの上に液状の材料を塗布し、蒸発・硬化させて皮膜を形成する。ほぼ流延成型法と同様の手法である。目的に応じたコーティングを行うためには溶液の種類や粘度の調整および塗布量のコントロールと、幾種もあるコーティング技法からの適切な選択が求められる。
コーティング剤の種類
コーティングにおいて、積層させたい材料は本来の固体から流動性を持つ液体状に変質させなければならない。その手法は、有機溶剤などの溶媒に溶かす溶液法、エマルジョン化させる方法、加熱して流動状態にするホットメルト法などがある。溶融しない材料を液体内で攪拌しコーティングする場合は、材料を均一に分散させるための高度な制御が必要となる。
塗布量調整の手法
フィルムに塗布されたコーティング剤の厚みを一定にする主な手法は、塗布後のフィルムにエアナイフから圧搾空気を吹き付けて均す方法、ドクターナイフと呼ばれるヘラを当てる方法、複数のローラーを組み合わせて塗布時の量を一定に保つ方法がある。その他には、ブラシを使用する例やスプレーで吹き付けるなどの方法もある。
ドライ・コーティング

主に金属類を膜状に付着させる手法。
蒸着
フィルム表面に金属層を付着させる加工法としては主に
真空蒸着が用いられる。包装用途において湿度やガスのバリア性を向上させるために施すアルミ蒸着の他にも、シリカアルミナ,ジルコニア主成分剤やフッ化マグネシウム(MgF2)蒸着がある。一般に、密着性を向上させるためのアンダーコーティングと、蒸着面保護のためのトップコーティングが併用される。
イオンめっき(イオンプレーティング)
真空中で蒸発させたチタンクロムなどの金属をイオン化し、負の荷電をさせたフィルムに覆膜させる手法。蒸着の一種に含まれるが、通常の蒸着よりも早くかつ強度が高い金属膜を形成できる。
スパッタリング
蒸着よりも高い精度で金属などを付着させる手法。真空中で付着させようとする物質に高エネルギーを照射し、飛び出した粒子をフィルムに付着させる。導電性付与加工では、インジウム?酸化物などをスパッタリングでフィルム表面に付着させる。厚みの均一成型が容易だが、蒸着と比較してコストが高いのが難点。
コンパウンド


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