ファン・ホーム_(ミュージカル)
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ファン・ホーム
サークル・イン・ザ・スクエア劇場
作曲ジニーン・テソーリ
作詞リサ・クロン
脚本リサ・クロン
原作ファン・ホーム ある家族の悲喜劇
アリソン・ベクダル著
上演2013 オフ・ブロードウェイ
2015 ブロードウェイ
2016 全米ツアー
受賞トニー賞 ミュージカル作品賞
トニー賞 ミュージカル脚本賞
トニー賞 オリジナル楽曲賞
ルシル・ローテル賞 ミュージカル作品賞
オビー賞 ミュージカル作品賞
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『ファン・ホーム』(Fun Home)は、アリソン・ベクダルによる2006年の同名の自伝的グラフィックノベルを原作とするミュージカル。制作はリサ・クロンとジニーン・テソーリ。ベクダル自身のセクシュアリティの発見と、父親との関係、そして父親の人生を取り巻く謎をめぐる物語である。ブロードウェイ史上初めての、レズビアン女性を主人公とするミュージカル作品となった。[1]

本作は、2009年のオーハイ脚本家カンファレンス、2012年のサンデーン・シアター・ラボ、パブリック・シアター・ラボを含む複数のリーディング公演と上演を経て制作され、2013年9月にオフ・ブロードウェイのパブリック・シアターにて初演。これが好評を得て、上演は複数回延長、2014年1月に閉幕した。同プロダクションはルシル・ローテル賞9部門(ミュージカル作品賞を含む3部門を受賞)、オビー賞2部門、ドラマ・デスク・アワード8部門を含む、数々の賞にノミネートされた。

オリジナル・ブロードウェイ・プロダクションは、サークル・イン・ザ・スクエア劇場にて上演。2015年3月のプレビュー公演ののち、2015年4月に開幕した。[2]トニー賞12部門にノミネートされ、ミュージカル作品賞を含む5部門を受賞。オリジナル・ブロードウェイ・キャストによるサウンドトラックは2016年グラミー賞最優秀ミュージカルアルバム賞にノミネートされた。ブロードウェイ・プロダクションは2016年9月10日に閉幕、その後は全米ツアーのほか、海外でも上演されている。
製作の背景

作家・画家であるアリソン・ベクダルの『ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』は、漫画形式の自伝として2006年に出版され、高い評価を得た。アリソン・ベクダルの成長が、とりわけ彼女の父親であるブルース・ベクダルとの関係を中心に描かれる。アリソンは自身がレズビアンであることを両親にカミングアウトする。だが、ブルースもまたクローゼットの同性愛者であり、未成年の少年を含む複数の男性と不倫関係にあったことが判明し、事態はより複雑な問題へと発展していく。彼女のカミングアウトの4か月後、ブルースはトラックの事故で世を去る。確証は無かったが、アリソンはそれが自殺であったと結論付ける。[3]

ベクダルによる原作『ファン・ホーム』は、リサ・クロンによる脚本・作詞と、ジャニーン・テソーリによる作曲でミュージカル化された。ジューン・トーマスは、オンラインマガジン『Slate』誌上で、本作について「大きなミュージカル作品としては初めて、若いレズビアン女性を扱った作品」とコメントした。[4] 本作の完成までには、5年の歳月を要した。[5]2009年8月、オーハイ脚本家カンファレンスでのワークショップに続き、[6]2011年にはパブリック・シアターにてリーディング公演が行われた。[5] (この公演の出演者の中で、オフ・ブロードウェイでの正式な上演まで参加し続けたのはジュディ・クーンとベス・マローンだけであった。)[7] 2012年7月、サンデーン・インスティテュート・シアター・ラボに参加、ワークショップを開催。このワークショップには、ラウル・エスパルザを迎えた。[8] その後、パブリック・シアター・ラボの一環として2012年10月から11月にかけて3週間のワークショップが行われる。[9][10] 2013年4月8日、サンデーン・インスティテュートのイベントにて、楽曲を披露。同イベントには、マギー・ジレンホール、ジュディ・クーン、デイヴィッド・ハイド・ピアスらが出演した。[11][12] パブリック・シアターでの最後の公開ワークショップは、2013年5月であった。[5]

完成に到るまでは、何度も変更や書き直しが行われた。大人のアリソンを演じたベス・マローンによれば、初期のワークショップで使用された脚本は「現在とは全く違っていた」と言う。[7] 初期段階では、ベクダルのイラストを中心に構成されていたが、のちにこうした要素は削除され、ブルースと子どものアリソンを描いたイラストだけが物語の締めくくりとして残された。[5] オフ・ブロードウェイのプレビュー公演の最中にも修正は続き、出演者は毎日違う素材で演じなければならなかった。[5]
あらすじ

売れっ子漫画家のアリソン・ベクダルは、自伝的グラフィック・ノベルの執筆にあたり、過去の2つの時期の自分を思い返す。一人は、10歳の自分(子どものアリソン)、父親ブルースの厳しさと、芽生え始めた自身のセクシュアリティとに悩んでいた頃。もう一人は、大学1年生の自分(若いアリソン)。初めて恋人ができ、レズビアンであることをカミングアウトした時期である。

大人のアリソンは、「飛行機ごっこ」をブルースにねだっていた子どもの自分を思い出す。近所の火事で焼け残ったがらくたを譲ってもらったブルースは、価値のあるものが隠れていないか探している("It All Comes Back")。ベクダル一家はブルースが再建した、美しいビクトリア様式の家に住んでいた。地域歴史保存会から視察が来ると聞いたアリソンの母ヘレンは、夫の厳しい美意識に見合うよう家を整えようとする("Welcome to Our House on Maple Avenue")。

大学に入学したばかりの若いアリソンは、不安な気持ちを父親との電話で吐露し、日記をつづる("Not Too Bad")。

ベクダル家は葬儀社を営んでいた。ブルースが客と話している間、子どものアリソンと彼女の兄弟、ジョンとクリスチャンは、棺桶に隠れている。子ども達は、ベクダル葬儀社の架空のコマーシャルごっこをして遊ぶ("Come to the Fun Home")。

大学の同性愛者団体の部屋を前にためらう若いアリソン。そこへやってきた、若く、自信に満ちたレズビアン女性、ジョーンに声をかけられてまごつく。

ブルースは、庭の手入れのために雇ったロイという男性を家に招く。図書室で、ブルースはロイに近づき、誘いはじめる。ヘレンは気づかないふりをするよう努めながら、二階でピアノを弾く("Helen's Etude")。

若いアリソンは両親に手紙を書く。だが、ジョーンのこと、自身がレズビアンであると気付いたことには触れずにおく。

ブルースは子どものアリソンにドレスを着るよう言い聞かせるが、アリソンはデニムジャケットの方が良いと言う。ブルースに、女の子たちの中でたったひとりドレスを着ていなかったら、パーティーで笑いものになると諭されると、彼女は渋々ドレスを着る("Party Dress")。

自身がレズビアンであるとの手紙を両親に送ったことを、ジョーンに誇らしげに伝える若いアリソン。そのうちに本当はアセクシュアルなのではないかと疑い始めるが、ジョーンにキスされて確信を持つ。その夜、若いアリソンはジョーンと体を交わし、興奮と幸福に満たされる("Changing My Major")。

大人のアリソンは、父の死と彼女のカミングアウトとのつながりについて考える。

子どものアリソンは、自分の家族が住んだことのある場所の地図を描くという宿題をしている。しかし、ブルースはアリソンの手からスケッチブックを奪い、彼の正しいと考える描き方で描き直してしまう。大人のアリソンは、たとえブルースがヨーロッパを旅し、住んだことがあったにしろ、彼の生まれた場所、生活、仕事、死はすべて、ペンシルバニア州ビーチ・クリークの、小さな円の中で起きていたことに気付く("Maps")。

未成年の少年と一緒にいるブルースは、車で家に送ると少年に申し出る。彼は車内で少年にビールをすすめる。のちに、ここで二人が性的関係を持ったことが暗示される。

若いアリソンは自身のカミングアウトに対しての返事がほしいと両親に手紙を書く。子どものアリソンが『パートリッジ・ファミリー』を見ているところに、ブルースがやってきてテレビを消してしまう。ブルースと話すうち、アリソンは彼がこれから精神科の診察を受けに行くのだと知る。彼はそれを、自分は「悪く」、アリソンのように「良く」ないからだと言う。彼が嘘をついていたことに苛立つ大人のアリソン。彼が出かけた本当の理由は、未成年の少年と関係を持ったかどで逮捕されたためだった。ヘレンは、精神科に行けばブルースはよくなると言って、子どものアリソンに念を押す。

ブルースはヘレンと激しく言い争い、本と一緒に彼女の持ち物をいくつか壊してしまう。子どものアリソンはテレビで見た家族と同じように、楽しく歌っている自分たちを想像する("Raincoat of Love")。

大人のアリソンは、ブルースに連れられてニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジのアパートで兄弟たちと過ごした時のことを思い出す。


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