ファン・ウソク
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黄禹錫
各種表記
ハングル:???
漢字:?禹錫
発音:ファン・ウソク
ローマ字:Hwang Useok
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黄禹錫(ファン・ウソク、???、1952年1月29日 - )は、韓国生物学者獣医師。元ソウル大学校教授[1]

クローン研究の第一人者として、自然科学分野における韓国初のノーベル賞候補と期待されたが、国際的な胚性幹細胞(ES細胞)研究に深刻な影響を及ぼしたES細胞論文不正事件により学界から追放される。その後、倫理的な批判を浴びながらも世界の富裕層のペットのクローンなどを手掛けるクローン作製の第一人者として成功。そのドキュメンタリー『キング・オブ・クローン』が2023年、Netflixで公開された[2]

2020年代前半においては、アラブ首長国連邦(UAE)を拠点としている[1]
人物

2004年および2005年に『ネイチャー』(Nature)誌に載った2本の論文から、ヒトクローンの世界的な研究者とされ、ヒトのES細胞の研究を世界に先駆け成功させたと報じられた。2005年に世界で初めてのクローン「スナッピー」を誕生させた。ノーベル賞受賞に対する韓国政府や韓国国民の期待を一身に集め、「韓国の誇り」 (pride of Korea) と称されたこともあった。

しかし、同年末に発覚したES細胞に関する不正事件(論文の捏造や研究費等の横領、卵子提供における倫理問題)により、学者としての信用は地に墜ちた。この影響により、正攻法でES細胞を作り出そうとしていた民間企業が研究継続の断念に至るなど、山中伸弥iPS細胞の生成に成功するまでの間、ES細胞や再生医療分野の研究の世界的な停滞を引き起こした元凶とされる。科学における不正行為をテーマとした書籍でたびたび言及される人物でもある。

検証の結果、不正が認められ、韓国の社会・学界や国際的な表舞台から追放された。一方、犬のクローンに関しては事実と認められたほか、黄禹錫が作製に成功したと主張していたES細胞のうち、NT-1細胞に関してだけは唯一実在が認められた。ただしクローンによるES細胞ではなく単為発生によるES細胞と結論付けられた[3]。つまり、2004年にES細胞の作製と世界初となるヒトの単為生殖に成功していたことになるが、論文が不正であり、論文に記された作成に至る経過とは関係なく偶然できた物と検証されたため世界初とはみなされない。また、他のES細胞はそもそも存在しておらず、一つ以外すべて捏造と結論付けられた。2014年に研究費流用や生命倫理法違反などの罪で、懲役1年6カ月、執行猶予2年の刑が確定した。ソウル大学校獣医科大学教授だったが、懲戒免職となった。

不正事件によって表舞台や学会から追放された後も韓国では熱烈な支持者がおり、2006年にはスアム生命工学研究院を設立。元々の専門分野である牛や犬などの動物のクローンの研究者として研究を続けている。論文不正事件の後は、世界中の愛犬家から依頼を受けて愛犬のクローンを製造するクローン犬ビジネスの第一人者となった[4]。内外の公的機関からも軍用犬警察犬などのクローン製造の依頼を受け、優秀な麻薬探知犬のクローン「Toppy」やコヨーテのクローンなどの業績を上げている。

2010年代に入り、NT-1細胞の特許カナダニュージーランドなど各国で認められたほか、2014年2月にはアメリカ合衆国で認可された。しかし、ヒトの研究者としては黄禹錫は韓国の学界からは同年時点でも追放されたままであり、当局より幹細胞研究の認可が下りない状態である。また、ソウル大学調査委員会、韓国幹細胞学会などはNT-1細胞を「黄禹錫の意図した製法ではなく偶然出来たもの」として認めておらず、特許の登録を巡って裁判で係争中である[5]

2013年5月にはナショナルジオグラフィックチャンネルにて、ロシアでのマンモス復元プロジェクトの特集[6]、2014年1月にはかつて論文不正の舞台となった『ネイチャー』誌でもクローン研究者として改めて特集が組まれる[7]など、国際的な復権の兆しが出てきた。2013年にはイギリスで愛犬のクローンを賞品とするコンテストを行い、またしても倫理的な議論を呼んだがキャンペーン自体は成功し、2014年4月にはイギリス初のクローン犬が誕生[8]。2014年までに500人が秀岩生命工学研究所に愛犬のクローンの申し込みを行っているという[8]。2015年には中国で世界最大のクローン工場の建設に協力していることが報じられた[9]

UAEでは、アブダビに所在するバイオテクノロジー研究センターに勤務し、王族のペットであるラクダのクローンなどを手掛けている。

不正事件で韓国の学界を追放された後、クローン犬ビジネスの第一人者として表舞台に再び現れた黄禹錫に対しても倫理的な批判が根強い。
生い立ちから事件以前

忠清南道扶余郡出身。幼い頃に父親と死別し、母子家庭農家で小さな頃からの世話をする境遇の中、牛の世界的な研究家になるという夢を持った。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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