ファントマ
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この項目では、フランスの小説について説明しています。その他の用法については「ファントマ (曖昧さ回避)」をご覧ください。

ファントマ(フランス語: Fantomas)は、フランスのピエール・スーヴェストル(英語版)とマルセル・アラン(英語版)共作による小説シリーズ。1911年から13年まで32作が書かれて圧倒的な人気を受け、1914年のスーヴェストルの死後は、1926年からアランが単独で執筆して10作が書かれた。1930年代まで映画、ラジオなどで広く取り上げられ、1960年代に映画化されたものも有名。ファントマ第1巻(1911)の表紙。匿名画家による(以降の巻ではGino Starace画)。
歴史
現代のアエネーイス(小説シリーズのヒット)

ファントマはフランスの大衆文学の中で最も印象的な作品の一つで、「ロカンボール」「ボッツォ・コロナ大佐」「ジゴマ」「オペラ座の怪人」「アルセーヌ・ルパン」といった犯罪の天才の系列だが、恐怖や暗さは無い。

マルセル・アラン(1885年9月15日-1969年8月25日)は、パリ大学法科卒業後に自動車のセールスマンなどをしていたが、1904年に『プチ・パリジャン』紙に小説が掲載されて、人気作家のピエール・スーヴェルトル(1874年6月1日-1914年2月26日)に知り合う。アランはスーヴェルトルの秘書となり、その後共作者として2作の小説を執筆し、次いで1910年にファントマの執筆を開始して、1911年2月からフェイヤード社から刊行した。

アランによると、この小説は彼とスーヴェストルによってディクタフォン(ボイスレコーダー)で口述された[1]。この方法により(シュルレアリスムの自動筆記を連想させる)、(アンチ)ヒーローによる複雑怪奇な陰謀というだけでなく、当時の最新テクノロジー(自動車、列車、船、1960年代にはロケット)によるカーチェイスといった奔放なスタイルを挿入し、詩的なファンタジーの雰囲気を生み出した。

そしてファントマは、ベル・エポックのパリの社会、19世紀の小説(ウージェーヌ・シューなど)、ヨーロッパの都市ジャングルでデュマのモヒカンを受け継ぐパリのアパッシュとともに現代の読者の前に復活した。その後には20数カ国に翻訳されている。
文学から映画の成功へ

覆面盗賊は発表されるや凱歌を上げ、大衆だけでなく文学者や芸術家にも愛好された。ブレーズ・サンドラールギヨーム・アポリネールの『レ・ソワレ・ドゥ・パリ』誌に「ファントマは現代のアエネーイスである」と書いた。アポリネール、マックス・ジャコブロベール・デスノスジャン・コクトーシドニー=ガブリエル・コレットや、ルイ・アラゴンなどシュルレアリスト達が競って、黒タイツ(夜の悪事の定番)と黒の狼マスク、燕尾服にシルクハットを纏い、血濡れのナイフをかざしてパリを股にかける犯罪者(第1巻の有名なカバーで、錠剤の広告に触発されて繰り返された)を讃えた。

ファントマは今日では、映画三部作のジャン・マレールイ・ド・フュネスによる冒険コメディーを通した一般的なイメージでよく知られている。しかし映画での、盗賊の蒼いマスクと技術装置(空飛ぶシトロエン・DSなど)、曖昧なファンドールとヒステリックで不器用なジューヴ(マスクをしたファントマとジャーナリストのファンドールの2役を同じ俳優ジャン・マレーが演じていた)は、スーヴェストルとアランの小説の設定である、変装した主役のただ一つの本当の性癖とは違っていた。ルイ・ド・フュネスの1964年を境とする大ヒットにより、映画第2作と第3作では明らかにルイ・ド・フュネスの演じるジューヴが主役となり、ジャン・マレー演ずるうちのファンドールは単なる脇役となっている。もちろん同じくマレーの演じるファントマが最大の敵役として描かれることには変わりない。なお、映画内では「ファントマス」と発音される。

ライバルのアルセーヌ・ルパンとは違い、発表以来様々に脚色されたプロジェクトである。原作及び1910年代の無声映画のトーンに忠実に作られた、1970年代のクロード・シャブロルとフアン・ブニュエルによる、ファントマ役のヘルムート・バーガー、ジャック・デュフィロ(Jacques Dufilho)、ゲイル・ハニカット(Gayle Hunnicutt)はテレビ・シリーズとして成功。しかしながら制作したフランスと西ドイツ以外の、東側の国々を含む欧米各国で放映されたにもかかわらず、定着した「ファントマ=1960年代のコメディー映画シリーズ」の印象を覆すまでには至らなかった。2000年代にリメイクが計画された際にも、内容は1960年代のコメディー路線を取る予定であった。
登場人物
ファントマ
犯罪の天才。作品によって「怪盗」「怪人」「魔人」など訳される。「あらゆる物と人のマスター」「拷問者」「理解不能」などとも呼ばれる。正体は不明。
ジューヴ
パリ警察の警部。
ジェローム・ファンドール
「キャピタル」紙の新聞記者。本名はシャルル・ランベール。
ヘレン
ファンドールの婚約者。
モード・ベルサム
殺されたベルサム卿の夫人。
小説シリーズ
ピエール・スーヴェストル、マルセル・アラン共作

※括弧内のタイトルは要約版のタイトル。

01. Fantomas (1911年) - 邦題『ファントマ』

02. Juve contre Fantomas (1911年) - 邦題『ファントマ対ジューヴ警部』

03. Le Mort qui tue (1911年、Fantomas se venge, 1932年) - 邦題『ファントマの逆襲』

04. L'Agent secret (1911年、Une Ruse de Fantomas, 1932年)

05. Un Roi prisonnier de Fantomas (1911年)

06. Le Policier apache (1911年、Le Policier… Fantomas, 1932年)

07. Le Pendu de Londres (1911年、Aux Mains de Fantomas, 1932年)

08. La Fille de Fantomas (1911年)

09. Le Fiacre de nuit (1911年、Le Fiacre de Fantomas, 1932年)

10. La Main coupee (1911年、Fantomas a Monaco, 1932年)


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