ファインマン物理学
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ファインマン物理学
The Definitive and Extended Edition
著者リチャード・P・ファインマン
ロバート・B・レイトン
マシュー・サンズ(en)
発行日1964
発行元 Addison-Wesley,Basic Books
岩波書店(日本語訳)
ジャンル教科書物理学
アメリカ合衆国
言語英語
公式サイトhttps://www.feynmanlectures.caltech.edu/
コードアメリカ議会図書館カタログカード No. 63-20717

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『ファインマン物理学』(ふぁいんまんぶつりがく、: The Feynman Lectures on Physics)は1963年、1964年、1965年に出版されたリチャード・P・ファインマンロバート・B・レイトン、マシュー・サンズ(en)による3巻構成の物理学の教科書である。ファインマンが1961年から1963年にかけてカリフォルニア工科大学(California Institute of Technology, 略称: Caltech, カルテック)で学部1、2年生を対象に行った講義が基になっている。2013年からはカルテックのサイトで ⇒オンライン版"The Feynman Lectures on Physics"が無料で閲覧可能[注 1]となっている。日本語版としては、1967年に岩波書店から刊行された訳書がある。
各巻の内容
Volume I: Mainly mechanics, radiation, and heat

物理学という学問の位置付けを解説した後、エネルギーの話からはじめて剛体まで力学全般を扱う。その中で微積分ベクトルの説明があり、特殊相対論も紹介される。続いて光学熱力学統計力学と進むが、途中で各分野を横断する概念として振動波動線形系などが説明される。また二重スリット実験を題材に量子力学を紹介している。I-5とI-6[注 2]はファインマンの不在中にサンズが代わって行った講義でファインマンの講義の流れを邪魔しないように補足的なトピックが選ばれている[1]
Volume II: Mainly electromagnetism and matter

静電気学から電磁波輻射[注 3]まで標準的な電磁気学のトピックがほぼ完全に含まれ、更に特殊相対論物理光学ローレンツの電子論による物性論が扱われる。途中でファインマンの口調を多く残した形で最小作用の原理の特別講義の章が入る。そのほかに連続体力学として弾性体流体力学を取り上げ、最後に一般相対論が簡単に紹介される[注 4]。この巻ではベクトル解析テンソルが導入される。また、境界値問題など高度な数学が必要なトピックでは計算過程を省略して結果だけが紹介される。
Volume III: Quantum mechanics

この巻はシュレディンガー方程式を解かなくても議論ができる量子力学的に単純な系の議論を中心にした量子力学入門である。Volume I の二重スリット実験の章(I-37, I-38)を再収録し、更に議論を進めて状態ベクトル確率振幅が導入される。それ以後は一貫してブラ-ケット記法が使われる。これに続きスピン二状態系結晶格子内の電子の伝播、角運動量を扱い、最後は水素原子のシュレディンガー方程式とその解の紹介である。更にそのあとに番外編として「古典的状況のもとでのシュレディンガー方程式」の章が置かれている。
出版データ

何度か装丁を変えて出版されているが、記述の訂正や誤植の訂正を除けば基本的に本文の構成や内容に変わりはない[注 4]。各版に対する正誤表[2]がオンラインで提供されている。

初版(1963年-1965年) ハードカバー ISBN運用前

ペーパーバック (1970年) ISBN 0201021153

Commemorative Issue ハードカバー(青表紙) (1989年) ISBN 0201500647

The Definitive and Extended Edition ハードカバー (2006年) ISBN 0805390456 (Feynman's Tips on Physicsを含む4冊組)

The New Millennium Edition ハードカバー (2011年) ISBN 0465023827 (LaTeXによる組版)

オンライン版"The Feynman Lectures on Physics" (2013年)

(上記リストのISBNは3冊セットまたは4冊セットに対して付けられたもので中のそれぞれの本にはまた別のコードが付けられている)
日本語訳

1967年に岩波書店より「ファインマン物理学」という書名、赤い表紙ハードカバー箱入り5冊構成で日本語訳が刊行された。偶数巻では章番号が1から始まるように付け直されている。1986年にペーパーバックの「新装版」になった。

I 力学 (原書I-1?25)
坪井忠二ISBN 4000077112

II 光 熱 波動 (原書I-26?52) 富山小太郎ISBN 4000077120

III 電磁気学 (原書II-1?21) 宮島龍興訳 ISBN 4000077139

IV 電磁波と物性[増補版][注 4] (原書II-22?42) 戸田盛和ISBN 4000068334

V 量子力学 (原書III) 砂川重信ISBN 4000077155

背景

サンズが研究者、教員として来た頃、カルテックの物理学のカリキュラムは非常に旧式なものであった。1、2年生が学ぶのは古典物理の一部分に過ぎず、量子力学に至ってはそれにはじめて接するのは大学院になってからという状況であった。サンズは、優秀な学生の学習意欲を失わせてしまいかねないそのようなカリキュラムの状態を危惧し、それを改善するための運動を始めた。物理学科はその提案を受け入れ、レイトン、サンズ、ビクター・ネーア(Victor Neher)の3人を改善担当に指名した。

そこで3人は具体案を検討しはじめたが、サンズがファインマンに講義を担当してもらうことを思いついた。これをファインマンに打診したところ、1回限りという条件でファインマンは同意した。改善担当のチームはそのまま講座の担当チームとなり、最初の年度は学部1年生に、次の年度には2年生になった同じクラスが対象になり、週に2回の講義と演習[注 5]、週に1回の実験が実施された。教員たちも講義を聴講し、ファインマンの話は録音されて黒板も写真に撮られた。講義が終わると、教員たちは録音を元に("ファインマン語”をふつうの言葉に翻訳して)テキストを作成し、印刷して講座を履修している学生に配布した。そのテキストの話が外部にも伝わり、手に入れたいという希望が多くなった。そのため、次年度の講座のテキストとしても使用することも考えて、本にして出版することが決まった。こうして生まれたのが「ファインマン物理学」である。

ファインマンは、この本の序文の中で「この新しい入門講座の結果に自信がない」と述べた。しかし、講座の担当者の一人だったサンズや受講した人の証言によれば、結果はそれほど悪くはなかったようである。この講義は履修した学生たちの多くが脱落してしまったが、その代わりに3、4年生や大学院生が聴講するようになったため、講堂は常に満員であった。そのため、ファインマンは何が起きているのかわからなかったという逸話がある[3]。しかし、サンズは、自分は当時の状況を正確に知る立場にいたと述べた上でこれを否定している[1][注 6]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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