LGM-118A ピースキーパー(Peacekeeper)は、アメリカ空軍がかつて運用していた大陸間弾道ミサイル。
マーティン・マリエッタ社が主契約者となり生産された。STARTUやモスクワ条約の締結により2002年に退役が決定、2005年9月15日に退役・廃棄が完了している。なお、退役したピースキーパーは、使い捨て型ロケット「ミノタウロスW」として人工衛星打ち上げに使用されている。 ミニットマンの後継として、1966年よりBGM-75 AICBMが検討されていたが、これは1967年にキャンセルされた。あらためて1972年より、後継ミサイルの開発が開始されている[1]。開発時には、実験的ミサイル(Missile-eXperimental)の略称としてMXと呼ばれていた。生残性を高めるために競馬場方式(Racetrack)とよばれた地下坑道を常に移動する配備方式[1]や空中投下・発射方式[2]なども検討されたが、費用対効果の面から1976年に従来型のサイロ発射式と決まり、1982年にピースキーパー(平和維持者)と命名されている。1983年6月17日にミサイル発射、弾頭投下の実験に成功、1986年に配備が開始され、1988年に全50基の配備が完了した。 全ミサイルの配備場所はワイオミング州のフランシス E. ワーレン空軍基地
概要
MIRV方式のミサイルであり、核出力300 ktのW87核弾頭を格納しているMk.21再突入体を10個搭載した[1]。なお、ミサイルの能力的には11個の弾頭運搬能力があったが、第二次戦略兵器制限交渉による制限によりICBMには10個までしか弾頭を搭載できないために、弾頭10個での運用となった。
ピースキーパーミサイルは固体ロケットのロケットエンジン三段と液体燃料エンジンによるバス、またはPost Boost Vehicle(PBV)と呼ばれる最終段一段の計4段からなっており、固体ロケットによって宇宙空間まで打ち上げられ、液体ロケットによるバスによって各弾頭をそれぞれの目標位置まで運ぶようになっている。ミサイルサイロからの発射はコールドローンチ方式で、圧縮空気によってサイロからミサイルを排出したあとに上空でロケットエンジンに点火されることとなっていた。この方式の採用により、ミサイル発射後のサイロの再利用が可能となった。
第二次戦略兵器削減条約(STARTU)はMIRV方式のICBMを全廃することを目指していたために、ピースキーパーは削減対象と考えられた。STARTUは完全履行されなかったものの、モスクワ条約に則り、過大な核戦力とされ、2005年までに退役した。
退役したミサイルは、オービタル・サイエンシズ社が取得し、使い捨て型ロケットのミノタウロスIVとして人工衛星打ち上げ用に転用されている。