ピュートーン(古希: Π?θων, P?th?n, ラテン語: Python)とは、ギリシア神話に登場する巨大な蛇の怪物である。長母音を省略してピュトンとも表記される。雄蛇とされるが、『ホメーロス風讃歌』の「アポローン讃歌」によると雌蛇だとされる[1]。絵画などでは脚のないドラゴンのような姿で表される事もある[2]。 ピュートーンはガイアの子で[2][3]、その神託所デルポイを守る番人でもあった[2][4][5](ウーラノスとガイアの娘のテミスが神託を授けていたが[2]、元々はピュートーン自身が神託を授けていたとする説もある[2][3][6])。デウカリオーンの大洪水後に残った泥から生まれたと言われる[7][8]。デルポイの神託所をすっぽり巻ける巨体を持つとも言われている[7]。のちにアポローンによって倒され、以後デルポイはアポローンの神託所となり[2][8]、アポローンがテミスに代わって神託を下すようになった[2][9]。 ピュートーンはまた、テューポーンの乳母を務めていたともいわれている[10][11][12]。 ピュートーンは自分がレートーの子によって死ぬという予言を受けた[3]。そこでアポローンとアルテミスを身籠もっていたレートーを追い回し、彼女を殺そうとした[3]。一説には大地の端から端までレートーを追い回したピュートーンは、レートーに嫉妬したヘーラーがレートー抹殺のために送り込んだ[13][14]。しかしレートーはゼウスやポセイドーンらの助けによって無事出産した[8]。アポローンは生まれた当日、または4日目で弓矢を執り、母の恨みを晴らしたのだという[6]。パウサニアースによれば、ピュートーン退治はアポローンとアルテミスによって行なわれ、ともに穢れを祓うためにアイギアレイアへ向かったとしている[15]。 アポローンはピュートーンの亡骸を手厚く扱い、デルポイのアポローン神殿の聖石オムパロスの下の地面の裂け目に葬った[6]。オムパロスとは「へそ」の意で、同地が世界の中心たることを示すという[6]。また、ピュートーンのために葬礼競技大会ピューティア大祭の開催を定め[8][16]、新たに開いた自分の神託所の巫女にもピューティアー(Πυθ?α)を名乗らせた[8]。デルポイで巫女たちがトランス状態に陥るのは、地底からピュートーンが吐き出す霊気によるもの[17]、またはその死体から発生したガスによるもの[2]だとされる。 異説として、ピュートーンとは、テューポーンがゼウスと戦って勝利し、ゼウスの腱を切ってコリユコスの洞窟に隠した後に洞窟の番人をしたデルピュネーの事を指しているとも言われている[18]。 『新約聖書』の「使徒行伝」16章16 - 18節にもピュートーンが登場している(『新共同訳』では「占いの霊」)。
ギリシア神話
アポローンによる退治
使徒行伝
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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