ピッチクロック(pitch clock)は、メジャーリーグベースボール(以下:MLB)、マイナーリーグベースボール(以下:MiLB)、大学野球(英語版)等で採用されている野球のルールで、投手が打者に投球するまでに使える時間を制限する仕組みである。試合時間の短縮(ペース・オブ・プレイ(英語版)の改善)を目的としている。
MLBでは2023年のオープン戦より採用[1]。それまでのピッチクロックは、採用されている場合でも、塁上に走者がいない場合に限定されていたが、MLBで採用されたものは走者がいる場合でも適用される。 野球は北米4大プロスポーツリーグのなかで時間制ではない唯一の競技だが、ファン離れを防ぐために試合時間の短縮(とテンポアップ)を目指し様々なルール改正が検討、導入されてきた。しかし2014年にはMLBの平均試合時間が初めて3時間を超えている[2]。 2018年の平均試合時間は3時間44秒で、マウンドビジット・リミッツ導入などのルール改正の効果もあって前年度から約5分の短縮を達成した[3]。一方でFanGraphsによると、MLBで一回の投球にかかっている時間は2008年の21.7秒から2018年の24.1秒と増加傾向にある[4]。 ピッチクロックはMLBでは2015年から採用提案が始まっていた[3]。 アメリカ合衆国の大学野球 プロリーグで採用されたのは、2014年のアリゾナ・フォールリーグ(オフシーズンの教育リーグ)が最初である。2015年1月15日にMLBは、2015年のシーズンでMiLBのダブルA、トリプルAに20秒のピッチクロック制度を導入することを発表した[8]。これにより投手はセットボジションから20秒以内に投球しない場合は、打者にボールが1つ与えられる[9]。そのほかにも試合時間の短縮を目的にしたルール変更が加えられてはいるが、主としてピッチクロックの導入によって、2015年シーズンのダブルA、トリプルAでは平均試合時間が12分短縮された(2時間42分)[10]。 導入から2か月後のレポートでは、選手やクラブチームからは特に反発もなく、実際にペナルティでボールカウントを付与された選手からもそれほど不満は出なかったことが報告されている[11]。 MLBとMLB選手会は2016年に2018年度にMLBでもピッチクロックを採用可能かについて協議を行った[12]。MLB選手会は反対の姿勢で、MLBも一方的に導入を決めることは可能なものの慎重な立場である[13]。採用後の2024年には、有力選手が次々と肘の故障を訴えたことに関して、ピッチクロックに原因があるのではないかとする声明を発表している[14]。また、独立リーグであるアトランティックリーグは12秒のピッチクロックを採用している[15]。 MLBは2022年9月に2023年シーズンからのピッチクロックの導入を発表した[16]。 国際大会においては、2019年のパンアメリカン競技大会において初めてピッチクロックが採用された[18]。世界野球ソフトボール連盟(WBSC)主催大会においては、同年の第2回プレミア12で初めて採用され、以降は2021年の東京五輪や[19]、U-12を除く各世代のワールドカップでも採用された[20][21]。
背景
採用
北米
学生
プロリーグ
MLB
投手は、ボールを受け取ってから、走者がいない場合は15秒、走者がいる場合は18秒以内[注 1]に投球動作に入らなければならない。これに違反(Pitch Clock Violation)した場合、自動的に1ボールが追加される[注 2]。
打者は、制限時間の8秒前までに打席に入り、打つ準備を完了していなければならない。これに違反した場合、自動的に1ストライクが追加される[注 3]。
走者がいるときに、投手が牽制や投手板を外した場合、制限時間はリセットされる[注 4]。
国際大会
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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