ビタミンK
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ビタミンK
識別情報
CAS登録番号12001-79-5, 84-80-0 (K1,PK), 863-61-6 (K2, MK-4), 2124-57-4 (K2, MK-7)
危険性
無毒性量 NOAEL参考値: MK-7 ラット 経口 90日 10mg以上/kg bw/日[1]
半数致死量 LD50参考値: MK-7 ラット 経胃管 2,000mg以上/kg bw[2]
薬理学
投与経路経口、経皮、経静脈(I.V.)
関連する物質
関連する酵素ビタミンKエポキシドレダクターゼ
NQO1(英語版)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ビタミンK (Vitamin K) は、脂溶性ビタミンの一種である。ビタミンK依存性タンパク質の活性化に必須であり、動物体内で血液の凝固組織石灰化に関わっている。したがって欠乏すると出血傾向となり、また骨粗鬆症動脈硬化に関連していると考えられている。化学構造上は2-メチル-1,4-ナフトキノンの3位誘導体で、天然にはK1とK2の2種類があり、このうちK2にはイソプレノイド側鎖の長さや修飾が異なる多数の化合物が含まれる。
種類代表的なビタミンKの構造式。MK-4とMK-7はともにビタミンK2の一種。

ビタミンKにはK1からK5の5種類が知られている。天然のビタミンKは2-メチル-1,4-ナフトキノンを基本骨格とし、3位に結合した側鎖の構造に違いがある。

本項では主に動物体内におけるビタミンとしての解説を扱うので、化合物としての性質や動物以外の生物における機能については各項目を参照のこと。
ビタミンK1
フィロキノン」も参照フィロキノン、ファイトメナジオンなどとも呼ばれ、植物が光合成に使うために合成している。摂取源としては葉菜類植物油豆類、海藻類、魚介類などが挙げられる。
ビタミンK2
メナキノン」も参照メナキノンとも呼ばれ、その側鎖の長さによってメナキノン-4、メナキノン-7の様に区別されている。この数字は側鎖を構成するイソプレン単位の数を表しており、それぞれMK-4、MK-7のように略記する。MK-4は動物体内に多く存在するもので、食餌から得たビタミンK1を動脈壁や膵臓、精巣などで変換している[3][4]。原核生物はMK-6からMK-14という側鎖の長いメナキノンを合成し呼吸に利用している。摂取源としては食肉鶏卵乳製品などが挙げられるが、納豆には非常に多く含まれている。
ビタミンK3
メナジオン」も参照メナジオンとも呼ばれ、動物体内で代謝されてビタミンK2となる。代表的な合成ビタミンKであるが、動物体内にも反応中間体としてわずかに存在する[5]。大量摂取により毒性を示すためサプリメントとしては使用されないが[6]、安価なビタミンK源として動物用飼料に添加されている[7]
ビタミンK4
メナジオール」も参照メナジオールとも呼ばれ、ビタミンK3の還元型である。
ビタミンK5
4-アミノ-2-メチル-1-ナフトール[8]。ビタミンK4の4位の水酸基をアミノ基に置換したもの。

これら一群の化合物は動物体内でビタミンKとして作用するが、全く等価という訳ではない。
変換
K1 → K2 変換

ビタミンK1のフィロキノンは、いくつかの組織(精巣膵臓血管壁)においてビタミンK2のMK-4に変換される[9][10]。いくつかの医薬品がこの変換過程に関わる一部の酵素を阻害することが判明しつつある。
状態

ビタミンKは以下の3つの状態がある。

名称略称構造説明
ビタミンKK
キノン骨格。
ビタミンKヒドロキノンKH2還元型のビタミンK。
ビタミンKエポキシドKOエポキシ化されたビタミンK。

機能γ-カルボキシグルタミン酸

ビタミンKはガンマグルタミルカルボキシラーゼ(別名ビタミンK依存的カルボキシラーゼ)の補因子である。この酵素はGlaタンパク質と総称される一連のビタミンK依存性タンパク質の翻訳後修飾(カルボキシル化)に関わっており、その働きでGlaタンパク質の特定の位置にγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)残基が生じ機能性が獲得される。Glaはグルタミン酸の4位の炭素がカルボキシル化され、1つの炭素原子に2つのカルボキシル基が結合した構造をしている。これによりカルシウムイオンをキレートすることができ、実際Glaタンパク質はカルシウムイオンの結合により活性化するものが多い[11]

それ以外に、食事から摂取したビタミンKは生体内でMK-4に転換し[12][13]核内受容体(SXR/PXR)と結合しコラーゲン産生に関与していることが知られる[14]
Glaタンパク質

ビタミンKがGlaタンパク質の成熟に関わるメカニズムは以下の通りである。
ビタミンKは、
ビタミンKエポキシド還元酵素(VKOR)により還元されビタミンKヒドロキノンになる[15]

ガンマグルタミルカルボキシラーゼがビタミンKヒドロキノンをビタミンKエポキシドに酸化して、同時にタンパク質中の特定のグルタミン酸残基をカルボキシグルタミン酸に修飾する。[16][17]

生じたビタミンKエポキシドはVKORによってビタミンKに戻される。

これをビタミンKサイクルと呼び[18]、このサイクルが常にビタミンKを再生するのでビタミンKは欠乏しにくい。

Glaタンパク質はヒトの場合16個見付かっており、機能別に挙げると次の通りである。
血液凝固
凝固因子のプロトロンビン(prothrombin, factor II)、第VII因子(factor VII)、第IX因子(factor IX)、第X因子(factor X)、および凝固抑制因子のprotein C、protein S、protein Z。これらは肝臓で合成される[19]
組織の石灰化
骨芽細胞が作るオステオカルシン(osteocalcin, bone Gla protein)とマトリックスGlaタンパク質(英語版)(matrix Gla protein)[20]ペリオスチン(periostin)[21]、およびGla-rich protein[22][23]
細胞増殖因子
Growth arrest-specific protein 6 (Gas6)[24]
機能不明
Proline-rich g-carboxy glutamyl proteins (PRGPs) 1 and 2, and transmembrane g-carboxy glutamyl proteins (TMGs) 3 and 4.[25]

ガンマグルタミルカルボキシラーゼによりカルボキシル化されるグルタミン酸残基は、Glaドメインと呼ばれる構造中に存在することが多い。
血液凝固とビタミンK

血液凝固に関わる多くの因子がビタミンK依存性タンパク質であり、ビタミンKは正常な血液凝固に必須である。成人では、通常の食事で血液凝固に関してビタミンK不足になることは無いが、新生児、乳児、肝疾患により、出血症が知られる。新生児用の粉ミルクには、ビタミンKを食品添加物として入れてある。


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